【急増する発達障害、特別な支援が必要な児童1クラスに3人の割合】
近年よく耳にする「発達障害」。ひと昔前では単に「変わった子」「困った子」とされていた子どもが、「発達障害」として認知されることで、より適切なサポートを受けられるように変化してきました。
文部科学省による最新の調査結果では、小・中・高校で特別な支援を受けている児童生徒が、平成5年(1993年)から令和2年(2020年)の27年間で10倍以上に(※1)。発達障害の可能性があり、特別な支援を必要とする児童生徒は、小中学校の通常学級に8.8%いると推計されます(※2)。
しかし、以前よりは身近な存在となった「発達障害」ですが、その実態や、どのような支援の枠組みがあるのかは、一般的にあまり知られていません。そこでこの記事では、小学校の特別支援教育支援員もつとめるジャーナリストの小山朝子氏が、発達障害と特別支援学級について解説します。
(※1「特別支援教育に関する調査の結果(令和2〜3年度)」)(※2「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について(令和4年12月13日)」)
【小山朝子(こやまあさこ)】介護ジャーナリスト。高齢者・障害者・児童のケアを行う全国の宅老所なども精力的に取材。著書に『世の中の扉 介護というお仕事』(2017年度厚生労働省社会保障審議会推薦児童福祉文化財に選出)など。ボランティアとして地域の小学校の特別支援教育支援員も担っている。
発達障害の種類、知的障害との関係
そもそも「発達障害」とは生まれつき脳の働き方に違いがあり、幼児のうちから行動面や情緒面に特徴がある状態のことです。
具体的には下記のような障害を総称して発達障害と呼んでいます。
●自閉スペクトラム(ASD)
周りの人や状況に合わせる行動が苦手であったり、パターン化した行動や特定のものにこだわる傾向が見られます。知的障害がない場合は高機能自閉症と呼ばれ、言葉の遅れが目立たない場合はアスペルガー症候群と呼ばれることもあります。
●注意欠陥多動性障害(ADHD)
物をなくしやすい、じっとしていられないなど、注意力や衝動性、多動性などが年齢や発達に不釣り合いで、社会的な活動や学業に支障をきたすことがあります。
●学習障害(LD)
聞く・話す・読む・書く・計算する、推論する能力のうち、特定の分野が極端に苦手な側面があります。知的発達に遅れはありません。
一方、発達障害との違いについて疑問に持つ方が多いのが「知的障害」です。知的障害の認定基準は都道府県により若干異なりますが、おおよそ「IQ(知能指数)70未満」で、日常生活で援助の必要性がある場合に該当します。
日本の行政では「発達障害」「知的障害」「精神障害」は各々が独立して捉えられていますが、医学上の分類では発達障害も知的障害も広い意味で精神障害(脳機能の障害)に含まれます。発達障害かつ知的障害でもある人や複数のタイプの発達障害がある人もいます。
(※編集部注:発達障害者支援法(平成16 年)が制定されるまで、発達障害は、身体、知的及び精神の各障害者制度の谷間に置かれ、必要な支援が届きにくい状態となっていた)
発達障害の子どもの就学先を選ぶポイント
発達障害の子どもの就学先としては、①特別支援学校、②特別支援学級、③通常の学級+通級 による指導があります。
①特別支援学校の入学基準は、以下のような点になります。
※特別支援学校は知的障害、自閉症・情緒障害、言語障害、難聴、肢体不自由、病弱・身体虚弱、弱視の児童が対象です。
知的発達の遅れがあり、他人との意思疎通が難しい/日常生活に頻繁に援助を必要とする/社会生活への適応が著しく困難を伴う
②特別支援学級の入級基準は、以下のような点になります。
知的発達の遅れがあり、他人との意思疎通がやや難しい/日常生活の一部に援助を必要とする/社会生活への適応は困難を伴う
※特別支援学級は知的障害、自閉症・情緒障害、言語障害、難聴、肢体不自由、病弱・身体虚弱、弱視の児童が対象です。
③通常の学級+通級による指導は、基本的に知的障害がない児童が対象です。通常の学級に通いながら、障害の状態に応じて通級による指導を受けます。
通級による指導は障害によるさまざまな困難を改善・克服することを目的とした「自立活動」を中心に指導を受けます。