通常学級に入学した児童が発達障害の症状や状況、本人や保護者の希望、または事故による肢体不自由などで年度の途中や進級のタイミングで特別支援学級に移ることもできます。ただし、支援学級がない学校もあります。
就学については、本人の状態や学校・地域の体制、保護者・本人・専門家の意見などをもとに総合的に判断し、最終的には市区町村の教育委員会が決定しますが、本人や保護者の意見が尊重されます。
通常学級に就学した場合は、授業についていけるか、教師や友人とのコミュニケーションが築けるかといったことを考慮し、子どもがよりいきいきと生活できる就学先を選ぶのが理想的です。
学校によって支援体制も異なるので実際に見学し、就学後に学級の変更などを希望する場合には柔軟な対応ができるかなどを確認し、積極的に情報を集めて検討するとよいでしょう。不安がある場合は、教育委員会や学校(校長先生)に相談をすることもできます。
特別支援学級のメリットと今後の課題
冒頭で触れたように特別支援学級の児童生徒数は増えており、今後も増加傾向にあることが予想されています。
この背景には2007年4月に学校教育法の一部が改正されたことが挙げられます。
従来行われてきた「特殊教育」では、障害の種類や程度に応じ、特別な場で手厚い教育を行うことに重きが置かれていましたが、改正後の「特別支援教育」では、障害がある子ども一人ひとりの教育的ニーズに応じた支援を行うことに重きが置かれました。
小・中学校の通常学級に在籍する、発達障害がある子どもも含め、より多くの子どもたちへ支援が行われることになったのです。
特別支援学級では小学校・中学校の学習指導要領(※1)に沿って指導内容が編成され、それを踏まえた上で児童の障害の程度や特性に応じた指導を行うことが認められています。
具体的には児童一人ひとりについて「個別の教育支援計画」と「個別の指導計画」が作成されます。個別の教育支援計画は、学校外の専門機関や家族と話し合いながら、卒業後までを見越して長期的に立てられる計画です。一方の「個別の指導計画」は、指導の内容や目標が盛り込まれ、学期や学年に合わせて作られます。
特別支援学級では、このようなきめ細かな対応を受けられることから、特別支援学級を選択する保護者が増えていると考えられます。
(※1)学習指導要領:学校教育法等に基づき、文部科学省が定めた基準のこと。全国のどの地域で教育を受けても、一定の水準の教育を受けられるようにするため、各学校で教育課程(カリキュラム)を編成する際の基準を定めている。
特別支援学級のメリットとしては、以下のような点があります。
集団行動が苦手な児童に向いている/少人数のクラスのため、通常学級のカリキュラムの速さについていけない児童でも対応できる/教師や同じクラスの保護者などから専門的な情報を収集しやすい
一方、デメリットとしては、以下のような点があります。
人間関係が閉鎖的になる傾向がある/近くに特別支援学級がない場合は遠方まで通学しなければならない/学習の内容が通常学級に比べると物足りなくなる児童もいる
特性にあった学級で成長を実感
特別支援学級を選んだ保護者にその理由をたずねたところ、「本人の特性を踏まえて支援が必要だと思ったから」、「学校からすすめられたから」、「通常の学級だけでの学習や生活が難しいと思ったから」といった意見が目立ちました。
特別支援学級を選んだ保護者の多くは「特性にあった学級に通い、成長している」と感じているようです。一方、「学校、生徒、保護者との情報共有の充実」を課題として挙げる保護者もいました。(参考:日野市「特別支援学級等に関するアンケート調査」2019年、2022年)
切れ目のない支援をするための関係機関の連携や、相談支援体制の強化なども、これからの特別支援教育の推進に向けた課題だといえるでしょう。
【小山朝子氏による「特別支援学級」についての連載は全3回。1回目では「発達障害と特別支援学級の基礎知識」として、特別な支援を必要とする児童の就学先について解説。2回目では、特別支援学級に通う児童と保護者を取材、「特別支援学級をめぐる現状」について解説します。最後の3回目では、インクルーシブ教育と特別支援学級について解説します。(2・3回目は3月上・中旬に公開予定)】
小山 朝子
20代から始めた洋画家の祖母の介護をきっかけに介護ジャーナリストとして活動を展開。その間、高齢者・障害者・児童のケアを行う全国の宅老所なども精力的に取材。2013年より東京都福祉サービス第三者評価認証評価者として、障害者を対象とした「生活介護」、「就労継続支援A型・B型事業所」などで調査・評価活動を多数行ってきた。 著書『世の中の扉 介護というお仕事』(講談社)が2017年度厚生労働省社会保障審議会推薦児童福祉文化財に選ばれる。現在は執筆、講演、コメンテーターの傍ら、ボランティアとして地域の小学校の特別支援教育支援員も担っている。
20代から始めた洋画家の祖母の介護をきっかけに介護ジャーナリストとして活動を展開。その間、高齢者・障害者・児童のケアを行う全国の宅老所なども精力的に取材。2013年より東京都福祉サービス第三者評価認証評価者として、障害者を対象とした「生活介護」、「就労継続支援A型・B型事業所」などで調査・評価活動を多数行ってきた。 著書『世の中の扉 介護というお仕事』(講談社)が2017年度厚生労働省社会保障審議会推薦児童福祉文化財に選ばれる。現在は執筆、講演、コメンテーターの傍ら、ボランティアとして地域の小学校の特別支援教育支援員も担っている。