【発達障害】保護者に取材…特別支援学級の現状・現場の問題点は

「支援を受けることで見られた良い変化」発達障害と特別支援学級#2

ジャーナリスト、特別支援教育支援員:小山 朝子

特別支援学級に通う児童と保護者を取材。特別な支援を受けることで児童に良い変化が見られる一方、現場が抱える問題も見えてきた(写真・アフロ)

文部科学省による最新の調査結果では、小・中・高校で特別な支援を受けている児童生徒が、平成5年(1993年)から令和2年(2020年)の27年間で10倍以上に(※1)。発達障害の可能性があり、特別な支援を必要とする児童生徒は、小中学校の通常学級に8.8%いると推計されます(※2)。

この記事では、小学校の特別支援教育支援員もつとめるジャーナリストの小山朝子氏が、発達障害と特別支援学級をテーマに解説(全3回)。

連載の2回目となる本稿では、特別支援学級に通う児童と保護者を取材。特別な支援を受けることで児童に良い変化が見られる一方、現場が抱える問題も見えてきました。「特別支援学級をめぐる現状」についてレポートします。


(※1特別支援教育に関する調査の結果)(※2通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について

【小山朝子(こやまあさこ)】介護ジャーナリスト。高齢者・障害者・児童のケアを行う全国の宅老所なども精力的に取材。著書に『世の中の扉 介護というお仕事』(2017年度厚生労働省社会保障審議会推薦児童福祉文化財に選出)など。ボランティアとして地域の小学校の特別支援教育支援員も担っている。

特別支援学級の「自立活動」とは

特別支援学級は「集団行動が苦手な児童に向いている」というメリットがあることを、「発達障害と特別支援学級の基礎知識」の記事で紹介しました。

実際に、特別支援学級に通っている児童にはどのような支援がされているのでしょうか。ここでは「自立活動」のケースを紹介します。

「集団のなかで行動するのが得意ではない」という柏倉光李(ひかり)くんは、特別支援学級の1年生。「自閉症スペクトラム」と「軽度知的障害」の診断を受けています。

光李くんの母親のみどりさんは、先日の授業参観で「自立活動」を見学しました。

自立活動とは、障害をもつ児童が、自分にとっての様々な「困難さ」に対し、自分自身で改善・克服するための力をつけられるように知識や技能、態度などを指導・支援をしていくことです。

自立活動は「これをする」という決まった内容や方法はありませんが、図表に挙げた項目が指導内容の要素となるものとして示されています。

図表:自立活動の指導内容の要素

特別支援学級に通う児童にとっての「困り感」は図表のいずれかの項目に当てはまります。その困り感に多方面からアプローチするのが自立活動だといえるでしょう。

「授業参観のときは給食の時間に使う白衣をたたむ練習をしていました。白衣を脱ぐ際は給食が配膳されている、という前提で、立ったまま畳む練習をしていました。そのときは大変そうでしたが、今では上達しているようです」とみどりさんは話します。


トミカ(ミニカー)やYouTubeを見ることが好きな光李くんは、「視覚優位」という特性があります。

視覚優位とは、耳から入る情報よりも、目から入る情報のほうが処理をしやすい「脳の特性」のことをいいます。一方、目から入る情報よりも、耳から入る情報のほうが処理をしやすい特性は「聴覚優位」と呼ばれます。

光李くんはミニカーの図鑑の内容をよく覚えていて、大人がわからないような車種でも判別できるそうです。このような光李くんの<特性>を理解しているみどりさんは、今日の予定を伝えるために、幼児期までは絵カードを使って今日の予定を伝えていました。現在は文字による予定表を使って事前提示することで、より理解を促せるようになっています。

筆者が関わっている特別支援学級では、体育の時間の前後は各自着替えを行いますが、なかなか着替えを行わない生徒や、着替えに時間がかかる生徒などさまざまです。彼らの「困難さ」を受け入れながら、無理強いすることなくサポートするよう努めています。

教員の力量の差を指摘する声も

集団行動が苦手な児童にとって、コロナ禍の環境によりオンラインの授業などが増えたことで、落ち着いて過ごせているというケースが少なくないようです。

特別支援学級の5年生、平山文啓くんもそんな一人です。文啓くんは「注意欠陥多動性障害(ADHD)」の診断を受けています。

「理科と人生ゲームが好き」という文啓くんは、学校の授業以外でも習い事をしています。得意なのがドラムで、文啓くんの母親の展重さんは「暇さえあればドラムを叩いているんですよ」と話していました。そのほか、水泳と、発達が気になる児童を対象とした教室にも通っています。

文啓くんは人とのコミュニケーションで、冗談を言い合うことが難しい、という側面があります。

「例えば水泳をしているときに、先生が文啓に水をかけると、それを<自分が攻撃された>と思ってしまうようなことがあります」と展重さん。前述の教室では、「人とのコミュニケーション」についても学んでいるそうです。


一方、文啓くんの母親の展重さんは、息子を通して特別支援学級の教員と関わるなかで、問題も感じています。それは、「教師の力量に差がある」ということです。

「私がたくさんの本を読んで学んだ知識でさえ、習得していない先生もいるのです」と本音を漏らしていました。

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