「子どもの発達障害」必ず覚えてほしい「これだけは」 専門家が声を大にして伝えたいこと

[セミナーレポート]榊原洋一先生【もっと知りたい! 「子どもの発達障害」】#1

小児科医/お茶の水女子大学名誉教授:榊原 洋一

1人に複数の障害が重なることがある

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自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)という3つの障害が、1人のお子さんの中に1つだけでなく、2つ、時には3つ当てはまることも珍しくありません。

注意欠陥多動性障害(ADHD)と診断されたお子さんの大体5人に1人くらいには自閉症スペクトラム障害(ASD)の症状も見られます。逆に自閉症スペクトラム障害(ASD)の3人に1人くらいには注意欠陥多動性障害(ADHD)の症状が見られます。

子ども全体のうちの約5%が注意欠陥多動性障害(ADHD)、約1.5%が自閉症スペクトラム障害(ASD)、約1〜3%が学習障害(LD)とされ、それらが緩やかに重なっています。そのために、「発達障害」と一括りにされて語られがち、という事情があるのです。

発達障害の3つの主要な障害のうち、2つの障害、または3つの障害が1人の中に併存することがあります。  資料:榊原洋一先生作成

高血圧、高血糖、脂質異常のうち2つ以上に該当する場合をメタボと呼びますよね。それと同じように扱われてしまっているわけです。

発達障害には、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)のそれぞれに、国際的なルールとなっているきっちりとした診断基準があります。

この診断基準に従って判断すれば、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)に該当するかしないかがはっきりします。

診断のための情報は先生からも集める

この診断の際に大切なのは、お子さんの行動を見ている複数の人から情報を集めることです。親御さんだけでなく、保育士、幼稚園や小学校の先生、学童保育の先生などのうち最低2人に診断基準に照らし合わせてもらうことです。

私の場合は、親御さんの他に2人の先生からの情報を得るようにしています。同じ行動を見ても人によって受け取り方には差があるもの。

ですから、ひとりの意見に頼らず、最低2人、できれば3人の意見から総合的に判断します。

子どもと話したり、様子を観察したりする以外にも、普段から子どもと関わっている複数の人たちから情報を集めることが、発達障害の診断には大切なことだと榊原先生は言います。(イメージ写真)  写真:アフロ

なお、発達障害は遺伝子が関係している、生まれつきの障害です。育て方やしつけ、成育の環境によって後天的に発生するものではありません。親御さんが親としての個人的な感情にとらわれずに冷静に判断することも大切です。

「グレーゾーン」という厄介な言葉

発達障害にはよく「グレーゾーン」という厄介な言葉がまとわりついてしまいます。

発達障害っぽいけれどなんとも言えない。そんな状態を指す言葉ですね。これには本当に注意しなければいけません。

発達障害は、血液検査などの物理的な検査を行って一発でわかるものではありません。

それに対し、例えば糖尿病はすぐに有無がはっきりします。てんかんも脳波を検査すれば有無がわかります。軽い糖尿病、または糖尿病になる前段階の症状はあっても、糖尿病にグレーゾーンは存在しません。てんかんにもグレーゾーンはありません。

発達障害は1つの検査を根拠としてスパッと診断するものではなく、いろんな症状を集めて総合的に判断します。

とはいえ、すでにお話ししたとおり、明確な診断基準が存在しますから、発達障害も有無をはっきり診断することができるのです。

にもかかわらず、「グレーゾーン」といったあいまいな表現が使われてしまうのは、診断をする医師のほうに問題があるからだと私は考えます。

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