韓流・K-POPアーティストから指名殺到! MC・古家正亨さんの“好き”を伸ばす子育て術

韓流ファンから絶大な支持を得る古家さんのお仕事のこと、子育てのことを聞いてみました

小和野 薫子

古家正亨(ふるや まさゆき)さん
1974年北海道出身。上智大学大学院文学研究科新聞学専攻博士前期課程修了。2000年以降、ラジオ、テレビなどのマスメディアを通じて日本における韓国大衆文化の普及に努め、韓国政府より文化体育観光部長官褒章を受章。年200回以上の韓流・K-POPイベントのMCを務める。
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年に200回以上、韓国の俳優やアーティストの来日イベントで司会を務めている、古家正亨さん。来日した多くの人気スター達に「ふるやさ〜ん!」と親しまれ、その結果、K-POPや韓国ドラマにハマる日本人ファンたちからの認知度も抜群。スターとファンの双方から絶大な信頼を誇り、「司会は古家さんがいい!」と指名される唯一無二の存在だ。

ご本人はラジオDJを志していたが、韓国のエンタメを“好き”になったことをきっかけに、その魅力を広く伝えたいと活動してきたところ『韓流MC』という独自のキャリアを築きあげた。韓国語は理解できるが通訳ではなく、台本に沿って進行する司会者とも違う。多忙ななか来日したスターたちと、たとえリハーサルを行う時間がなく舞台上で初対面となったとしても、会話をしながら彼らの緊張を解き、ライブならではの彼らの素顔を引き出す。そのMC術は、日常でも人と接することや子育てに生かせるのではないかと話を伺った。

アリーナクラスの大きなステージでMCを務めることも

プライベートでは1児の父

大学3年生の時にラジオDJデビューをし、その後カナダ、韓国への留学を経て、2000年から韓国のエンタメに関わる仕事をしている。2003年に行われたぺ・ヨンジュンのファンミーティングで司会を担当して以降、韓流・K-POPイベントのMCとして活躍してきた。プライベートではシンガーソングライターの韓国人女性と結婚して、現在小学2年生の息子さんがいる。

取材日は、4月に発売した著作『BEATS of KOREA いま伝えたいヒットメイカーの言葉たち』のリリースイベントを夜に控え多忙なスケジュールの中、朝から息子さんにお弁当を作ってきたそうだ。

「お弁当は、幼稚園時代は僕が良く作っていましたが、小学校に入学してからは完全に妻の担当です。今日は、たまたまですね。息子も小学2年生になり、舌が肥えてきたみたいです。やっぱりママの作るお弁当が美味しいですよね。

息子が通う小学校は給食ではなく、お弁当を持参しなくてはならないのですが、宅配弁当も注文できるんです。でも『オンマ(韓国語でお母さん)のお弁当を食べたい』っていう本人の希望もあって。ただ、お弁当作りって大変ですよ。自分も作った経験があるから、なおさら、そんな当たり前の作業に対しても、妻には感謝の気持ちでいっぱいです。

ただ僕も、お弁当を作ることはほとんどなくなってしまいましたが、仕事柄、日中も動きやすいので、学校行事には積極的に参加しています。父母会に参加すると、男親はひとりだけという場面も結構ありましたね」

育児に参加している姿はこれまであまり語る機会がなかった。自身のSNSでもプライベートについて発信することはなく、まばゆいほどに今をときめくスターたちとのツーショットが並ぶ。数年前にはXで「なりたい職業ランキング1位:古家さん」という投稿がK-POPファンの間で共感を呼び、バズったほどだ。

「育児に積極的に参加しているというよりは、家が好きなのかもしれません。とにかく仕事以外では外出せず、家で、家族で過ごすのが好きなんです。なので、時間があればとにかく息子と一緒に公園に行きます。昨日も朝からふたりで3時間、ずっとボールで遊んできました」

ふたりきりで息子さんが大好きな虫探しと、得意なドッヂボールをしたそう。

「うちの息子は虫が大好きなので、とにかく探して捕まえて、見たことがない虫を見つけたら、僕のスマホのGoogleレンズで撮って調べるんです。今は、それができるのが素晴らしいですよね。

ただ、息子は本が好きなので、うちに戻ってきたら、図鑑などで改めて調べなおしたり、そこからさらに深掘って、関連の虫の情報を得たりと、飽くなき虫探しの旅は続きます(笑)。もちろん「MOVE」もたくさん活用していますよ!

そんなことをしていたら、あっという間に時間は過ぎていきます。残りの時間は、ひたすら息子が得意なキャッチボールやドッジボール。『もっと強く』とか『もっと高く』って言われて。球を投げるだけでも、要求が多く、帰り道はいつもへとへとですよ(笑)」

子どもの才能は、本人が興味を持ったことでしか伸びない

育児にも積極的に取り組む

お子さんの好奇心を伸ばしたり、子どもの“好き”を見つけて、付き合って、満点の父親ですね!

「いや、正直言うと、息子がドッジボールが得意だっていうことは、最近ママ友から聞いて初めて知ったんです。うちは、僕も音楽が大好きで、妻がミュージシャンでもあるので、息子にも『音楽的才能があったらいいね』と、幼い頃からバイオリンを習わせてきました。だから、いつかどこかで『特技はバイオリン』って言えたらいいなと思っていたんです。

ところが、親が望むように、そう簡単には上達しない。2人とも、心のどこかで焦っていたと思います。『自分が小学生のころには、あんなこともこんなこともできたのに、なぜ息子の才能の芽は開かないのだろう』って」

そんな折に小学校の運動会があり、会う人会う人に、おたくの息子さんはドッジボールが上手よね〜と声をかけられた。

「正直、驚きました。キャッチボールは2年生の割には肩もよく、上手いとは思っていたんですが、息子からドッジボールの話なんて、あまり聞いたことがなかったんです。それなのに、クラスメイトの保護者から、そんな話を聞いて。でも正直言うと、そんなに嬉しくなかったんです(笑)。ドッジボールが上手くても、将来、一体何の役に立つんだろうって」

たとえドッジボールの才能があったとしても、親としてはそれよりも小さな頃から続けてきたバイオリンがうまくなって欲しいのにと夫婦で戸惑った。

「何かひとつでも子どもの才能を見つけてあげたいと毎日違う習い事をさせたとして、7種類のうちのひとつでも“ヒット”すればいいんですが、例えば、野球をさせたとして、大谷選手のような特別な才能を発揮できる人って、何万人に1人ぐらいの確率じゃないですか。

それなのに、親は自然と、習い事をさせれば“そんな”結果を求めてしまうと思うんです。『大谷選手ほどは有り得ない』と言いつつ、自分の子にも『何か光るものがあるはず』と期待してしまうし、せめて、習っていることは人並みには成長を見せてほしいと、少なくとも僕は考えてしまっていました」

でも、そうではないと気付き始めた。親は親、子は子であり、子供には、親にはない時間の流れがあるはずである、と。

「いわゆる何かに秀でたお子さんをお持ちの親御さんのお話を見たり聞いたりしていると、もちろん親の努力もあるんだけど、多くの子供たちが、それについて、自分から興味関心を持って、そして何より、それを好きで楽しんでいることが前提としてあるんですよね。

つまり、本人が興味を持たない限り、子どもの才能は伸びないのではないか。きっかけを作ったり、サポートしてあげるのは親の役目ですが、本人が興味を持っていることであれば、親が強引にさせなくても、放っておいても積極的に取り組みますよね。息子におけるドッジボールのように。

それなのに、うちでは、親が音楽関係の仕事についているからという理由だけで楽器を習わせて『もっと練習しなさい!』なんて言っていた。『それって、おかしかったのかもね』と。なので最近は、親の押し付けで、何かをさせることは控えようという結論に至りました。そうしたら、つい最近、自ら鍵盤の蓋をあけることなどなかった息子が、自分の好きなポップソングを、耳コピしながらピアノで夢中になって弾き始めたんです(笑)」

子ども時代にさまざまな経験をすることが大切なのではないか

ラジオDJの原点は小学生時代にさかのぼる

その結果、取材前日も飽きるまでボール遊びに付き合った。古家さんが息子さんの“好き”にとことん付き合うのは、自身がこれまで人生で経験してきたことが全部、今につながっているという実感があるからだ。

「ラジオも父親が好きだったので、家でも車でも常に流れていて、日常的に聴いていたんです。だから僕は今でも、圧倒的にテレビよりラジオの方が好きです。K-POPアーティストからも、よくそう言ったエピソードを聞きますね。『父がマイケル・ジャクソン好きで、その映像を観ているうちに踊れるようになっていた』とか」

デビュー年齢が低年齢化するK-POP界を目指して、小学校入学前からダンスや歌を習う子どもが日本でも増えている。

「でも、別にうちの父親は僕に歌手になってほしかったわけでも、DJになってほしかったわけでもなく、むしろ父親は、僕に趣味の家電を触られたくなかったと思います(笑)」

しかし、十数年後に古家さんはラジオDJとして社会人デビューをし、“好きなこと”が仕事になっていた。

「そういえば、『小学生のころからラジオDJになることが夢だったなぁ』と、最近改めて思うことがあって。仕事をしていると、自分自身に、本当にこの仕事で良かったのかと、その選択に対して、自分自身に問う瞬間って、誰でも一生のうちに何度かあると思うんです。

ただ、夢を追っているうちに、現実を知れば知るほど、それで食べていくのは難しいという現実にも気づくわけです。なので、僕の場合は、学問として当時一番興味を持っていた音楽療法を学ぼうと、音楽療法を学べる大学の臨床心理学科に進学しました。ただ、そのときに心理カウンセリングの授業で学んだことも、今の職業に活きているんです。

意外に思う方もいるかもしれませんが、心理カウンセラーって悩みに対してアドバイスをするのではなく、とにかく相手の話を聞く仕事だと教わりました。その答えを本人に気づかせるのが心理カウンセラーの役割であって、何かをアドバイスするのは占い師の仕事だと。その心理カウンセリングの授業での教えは今でも強烈に印象に残っています。

というのも、ちょうど大学3年生のころに縁があってラジオDJの仕事をはじめて、その現場で先輩たちから『本当の喋り上手とは、最高の聞き上手でなければならない』と言われたんです。これって、同じことですよね。いかに相手の言葉を聞き出すかというスキルの大切さは、心理カウンセラーにおいても、ラジオDJ、イベントMCにおいても、同じだと思うんです」

台本を基にイベントを進行する司会者ではなくよりスターに近づく韓流MCという独自のスタイルも、相手の言葉を聞き出すことに失敗した経験から導かれた。

「CNBLUEという韓国のロックバンドのファンミーティングでMCを務めたときに、ボーカルのジョン・ヨンファさんから、当時ハマっていた日本のドラマ『のだめカンタービレ』に出てくる千秋先輩の話が出たんです。でも僕は『のだめカンタービレ』を観たことがなく、一体誰の話をしているのか分からなくて、さらっと聞き流してしまいました。

するとその帰り道に、JR中央線のホームでファンの方たちに取り囲まれ『千秋先輩のことも知らないんですか!MCならアーティストの好きなものとか知っていて当然じゃないですか?』と𠮟咤激励されました。ただ、その瞬間は、もう悔しいし、悲しいし。僕はK-POPや韓流の仕事をしているのだから、なぜ『のだめ』に関する知識が必要なのか、と。

一方でそれが、『アーティストがハマっていることなら調べておくべきだったのかもしれない。もし僕が千秋先輩を知っていたら、どれだけ話を楽しく膨らませられただろうか』と考えたら、それはそれで悔しくなって。これをきっかけに、MCの仕事をする際、事前準備に力を入れるようになりました」

その事前準備の深掘りの結果、アーティストひとりひとりのキャラクターをしっかりと掴み、ファンと同じ温度感で会話を盛り上げてくれるところが、MC・古家さんの魅力のひとつだ。

ラジオDJとして現在も3つのレギュラー番組を抱える

「日本におけるK-POPというと、アイドルグループのイメージが強いですよね。なので、お仕事もグループとすることが圧倒的に多いのですが、その分、メンバーそれぞれの強みを事前準備で見つけておくことが大切だなと感じています。

いくら日韓の距離が近くて、互いに理解が深まっても、ここは外国であることには違いないので、どんなスターであっても、日本での公演の際には、やはり緊張しているんです。それをなるべく本国にいるときのように、パフォーマンスをしてもらったり、魅力を見せてもらうためには、いかにステージ上でリラックスしてもらえるかどうかが重要だと思うんです。なので、その雰囲気づくりに一番気を配っています」

2024年4月に発売した著作『BEATS of KOREA いま伝えたいヒットメイカーの言葉たち』では、韓流ブーム前から見つめ続けてきた韓国エンタメの20年をK-POPアーティストたちとの貴重なエピソードを織り交ぜながら語り、途中、韓国の著名クリエーターとの対談もたっぷりと収録されている。そのボリュームから、古家さんの韓国エンタメ“好き”が十分に伝わってくる。

こんなにも語れる“好き“を子どもにも見つけてあげられたら、どんなにか良いだろうか。

「親のエゴは捨てて(笑)、まずはいっぱい話を聞いて、本当にその子が興味のあることを自然と導き出し、それに向かって陰ながらサポートしてあげるのがいちばんの理想形だと思います。

わが家では息子が学校から帰ってきたら3人で、今日は何をやったとか、腹が立ったこと、嬉しかったことを話す時間を設けるようにしています。さらに息子なりに、母親に聞いてほしいことと父親に話せることは違うようなので、例えば、好きな女の子の話は、僕は聞いたことがないのですが(笑)、先生に怒られたとか、友達と喧嘩したなんていう話は僕には積極的に話してくれています。

そういった話は妻に話すと過剰に心配されると気づいているみたいで。僕たちは夫婦で一緒に仕事をしているので、常にコミュニケーションを取っていて、そんな話も今のところは夫婦間で共有していますが、男同士、これからは父親の僕だけが理解してあげられることも増えてくるのかもしれませんね。

僕らも子育てに関しては、回答のない、試行錯誤の日々を過ごしていますが、コミュニケーションを大切に、そこから息子の“本当の好き”を伸ばしていけたらなぁと考えています」

取材・文/小和野薫子、写真/古家正亨さん提供(一部のぞく)

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ふるや まさゆき

古家 正亨

Furuya Masayuki(후루야 마사유키)
ラジオDJ、テレビVJ、MC

1974年北海道出身。上智大学大学院文学研究科新聞学専攻博士前期課程修了。2000年以降、ラジオ、テレビなどのマスメディアを通じて日本における韓国大衆文化の普及に努め、韓国政府より文化体育観光部長官褒章を受章。 年200回以上の韓流・K-POPイベントのMCを務めるほか、NHK R1「古家正亨のPOP★A」、ニッポン放送「古家正亨 K TRACKS」、テレビ愛知「古家正亨の韓流クラス」などのレギュラー番組を通じて、韓国大衆文化の魅力を紹介している。 2009年には韓国出身のアーティスト、Hermin(ホミン)さんと結婚。日韓カップルとしてYouTubeチャンネル『ふるやのへや』を開設。様々な情報を発信するほか、韓国絵本「パパのかえりがおそいわけ」(岩崎書店刊)、「小学生が知っておきたい からだの話(男の子・女の子編)」(アルク刊)などを共同で翻訳。運営するアトリエ「by mina furuya」では、Herminさんが韓国料理や韓国語教室なども主宰し、日韓の文化的な橋渡しも。都内私立小学校に通う男児の父。韓国から移民ならぬ移犬してきた愛犬と共に3人(+1匹)で暮らす。

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1974年北海道出身。上智大学大学院文学研究科新聞学専攻博士前期課程修了。2000年以降、ラジオ、テレビなどのマスメディアを通じて日本における韓国大衆文化の普及に努め、韓国政府より文化体育観光部長官褒章を受章。 年200回以上の韓流・K-POPイベントのMCを務めるほか、NHK R1「古家正亨のPOP★A」、ニッポン放送「古家正亨 K TRACKS」、テレビ愛知「古家正亨の韓流クラス」などのレギュラー番組を通じて、韓国大衆文化の魅力を紹介している。 2009年には韓国出身のアーティスト、Hermin(ホミン)さんと結婚。日韓カップルとしてYouTubeチャンネル『ふるやのへや』を開設。様々な情報を発信するほか、韓国絵本「パパのかえりがおそいわけ」(岩崎書店刊)、「小学生が知っておきたい からだの話(男の子・女の子編)」(アルク刊)などを共同で翻訳。運営するアトリエ「by mina furuya」では、Herminさんが韓国料理や韓国語教室なども主宰し、日韓の文化的な橋渡しも。都内私立小学校に通う男児の父。韓国から移民ならぬ移犬してきた愛犬と共に3人(+1匹)で暮らす。