養子縁組で「育てられてよかった」子と「育ててよかった」親が90%以上! “血がつながらない親子”の幸せとは

日本の養子縁組の現在地 第2回~養子・養父母の幸福度~

日本財団 公益事業部 子ども事業本部長:高橋 恵里子

もはや養子である事実を「秘密にするべき」という考えは、“昭和の旧常識”といえるようです。

隠す理由の大きな理由には「かわいそう」という思いがありますが、それらは戦中から戦後と続いた日本が貧しかった時期に「養子になったけど食べ物を与えられなかった」「親戚をたらい回しにされた」などと祖父母や親たちから聞いた話や、昔の物語で継母・継父が意地悪役だったことが頭に残っているのからかもしれません。

でも現代は大きく様変わりしています。日本財団の15歳以上の養子縁組家庭を対象とした調査では、養子となった子どもの90%は「養父母に育てられてよかったと感じている」と答え、さらに74%が「養子であることで嫌な思いをした経験はない」。養親側も95.6%が「子どもを育ててよかったと感じている」という結果が出ました。

さらに、子どもの幸福度を問う質問「わたしは幸せだと思う」の問いに対し、一般家庭は平均6.41点だったのに対し、養子縁組家庭はそれを上回り平均7.6点だったという興味深い結果もあります。

子どもも養親も幸せである以上、〈養子はかわいそう〉などの古い先入観から私たちもアップデートする必要がありそうです。

養子縁組をした家庭で、養子の「育てられてよかった」は90.4%、養親の「育ててよかった」は95.6%と、子ども・親ともに高い幸福度だ。  出典:はじまりの連絡帳/日本財団
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子どもの幸福度は、一般家庭より養子縁組家庭のほうが高い点数となった。  出典:はじまりの連絡帳/日本財団

はじまりの連絡帳/日本財団(P5~6)
「子が15歳以上の養子縁組家庭の生活実態調査」結果発表/日本財団

子どもたちが幸せな家庭で暮らすために

アメリカやカナダ、オーストラリアでは、社会的養護が必要な子どもの80%以上が里親制度で保護されているのに比べ、日本では約25%程度。韓国、台湾といった東アジアの中でも最下位です。

2018年前後の10ヵ国を対象とした里親委託率の割合では日本が最下位となった。  出典:社会的養育の推進に向けて/こども家庭庁支援局家庭福祉課

社会的養育の推進に向けて/こども家庭庁支援局家庭福祉課(P71)令和7年1月

では、これから多くの子どもたちを守っていくためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。

「まず、養子縁組や里親制度について社会的な認知度や理解度が進むことが大切なのではと思います。

例えば、身近に養子縁組をした親子がいたら、それを聞いたママ友や友だちが素直に『おめでとう!』と言えるような社会になっていけたらいいですよね。大切な子どもたちを社会全体で育んでいくという意識がさらに強くなり、それが当たり前の世の中になれば素晴らしいです。

また、妊娠・出産や、里親や養子縁組制度などに関する子どものころからの包括的な教育もまだまだ足りていないと思います。長年、日本では性教育がタブー視されてきたこともありますが、これこそすぐに改善していかなければいけないことですよね」

─・─・─・─・

今回取材してわかったのは、養子縁組・里親制度において日本は試行錯誤しながら、よりよい道を模索中だということです。しかし、法改正などのハード面は急ピッチで整いつつあるのだということもわかりました。

そんな中で、私たちにできることは、理解を深めながら一人でも多くの子どもが幸せな家庭環境で育つことができるように願い、考え、行動していくことなのかもしれません。

日本財団では、2014年に養子縁組・里親制度の認知度アップのために4月4日を「よ~し(養子)の日」として普及イベントや報告書の公開などをしてきました。

2025年度は現時点で未定とのことですが、養子や養親などの生の声や、それらが集まったサイトなどをみることで、多角的に情報を得ることができます。

●高橋恵里子PROFILE
2013年、日本財団にて「ハッピーゆりかごプロジェクト」(現:日本財団子どもたちに家庭をプロジェクト)を立ち上げる。生みの親と生活することが難しい子どもが、あたたかい家庭で暮らすことのできる特別養子縁組や里親制度を啓発するべく活動を行っている。


取材・文/関口千鶴


【関連リンク】
子どもたちに家庭をプロジェクト/日本財団
養子縁組について 子どもたちに家庭をプロジェクト/日本財団
里親制度について 子どもたちに家庭をプロジェクト/日本財団

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たかはし りえこ

高橋 恵里子

Rieko Takahashi
日本財団 公益事業部 子ども事業本部長

上智大学卒、ニューヨーク州立大学修士課程修了。1997年より日本財団で海外の障害者支援や国内助成事業に携わる。 2013年、日本財団にて「ハッピーゆりかごプロジェクト」(現:日本財団子どもたちに家庭をプロジェクト)を立ち上げる。生みの親と生活することが難しい子どもが、あたたかい家庭で暮らすことのできる特別養子縁組や里親制度を啓発するべく活動を行っている。 ●子どもたちに家庭をプロジェクト/日本財団 ●養子縁組について 子どもたちに家庭をプロジェクト/日本財団 ●里親制度について 子どもたちに家庭をプロジェクト/日本財団

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上智大学卒、ニューヨーク州立大学修士課程修了。1997年より日本財団で海外の障害者支援や国内助成事業に携わる。 2013年、日本財団にて「ハッピーゆりかごプロジェクト」(現:日本財団子どもたちに家庭をプロジェクト)を立ち上げる。生みの親と生活することが難しい子どもが、あたたかい家庭で暮らすことのできる特別養子縁組や里親制度を啓発するべく活動を行っている。 ●子どもたちに家庭をプロジェクト/日本財団 ●養子縁組について 子どもたちに家庭をプロジェクト/日本財団 ●里親制度について 子どもたちに家庭をプロジェクト/日本財団

せきぐち ちづる

関口 千鶴

Sekiguchi Chizuru
編集者・ライター

大学卒業後、出版社にて編集者として数多くの雑誌・書籍を手掛ける。その後、親子カフェ経営を経て、独学で保育士免許を取得。現在は、幼児教育・子育て支援・絵本などを中心としたフリーランスの編集者・ライターとして活動中。 ●Instagram chise_kanon

大学卒業後、出版社にて編集者として数多くの雑誌・書籍を手掛ける。その後、親子カフェ経営を経て、独学で保育士免許を取得。現在は、幼児教育・子育て支援・絵本などを中心としたフリーランスの編集者・ライターとして活動中。 ●Instagram chise_kanon