一人っ子は親の愛情をひとり占めできる一方で、親のしつけも一身に受けることになります。
だからこそ、とくに一人っ子の叱り方には注意が必要だと明治大学文学部教授で教育学博士の諸富祥彦先生はいいます。
全4回の最終回は前回(#3)に引き続き、一人っ子を「叱るコツ」をお届けします。
(全4回の4回目。#1、#2、#3を読む)
何度叱っても、約束を破るのはナゼ?
ちゃんと叱ったつもりなのに、子どもがルールを何度も破るケースはあります。約束が守れないことに何か理由があるのでしょうか。
「子どもが何度もルールを破ってしまうのは、いわれたことを自分ごとに捉えていないからです。
一人っ子で、親は丁寧に言い聞かせているつもりでも、子どもからしてみると親の言い分を言い聞かせられているだけの状態なんです。
ですから、幼い子ならダメなことだけをいうのではなく、『約束が守れないと遊ぶ時間がなくなるよね』など、なにができなくなるのか、子ども側のデメリットを言葉でちゃんと伝えてあげましょう」(諸富先生)
親と子どもは公平に
子どもが大きくなったら、もう少し違うやり方で自分ごとに捉える方法があります。その場合は、公平性が大切だと諸富先生は話します。
「小学生以上なら約束=契約として親も考えてみてもいいでしょう。例えばスマホやゲームの時間が守れない場合、ルールを合意のもとで作って守るように導くのです。
子どもが時間をオーバーして遊んだら、次の日は機器を没収されてしまう代わりに、親は子どもがルールを守れるようになったら没収システムをやめるとか、新しいスマホへの買い替えを検討するという感じです」(諸富先生)
それでも約束破りを繰り返す場合は、いったん親が引くことも大切です。
「子どもにも調子の悪いときはあります。長い目で育児を見ると、子どもはいつかできるようになるので、いったん叱るのをやめてみるのもコツです。
一人っ子の環境は、会社で表すならそれは上司と部下の一対一の企業です。上司(親)が部下(子ども)にその都度、小言を言った場合を考えるとお互いに心が疲れてきますよね。ですから、お互いのためにも休憩を挟んでみるといいでしょう」(諸富先生)
注意ばかりしていると、子どもの生きるモチベーションが下がる“心の栄養不足”になってしまいます。ときには親が子どもの立場になってイメージしてみることで、子どもとのいい距離感が保てるでしょう。