絶対NGなのに一人っ子を叱るときについ親がやってしまいがちなこと

一人っ子のしつけ「ウワサの真相」#4

明治大学文学部教授:諸富 祥彦

この叱り方はNG!

「一人っ子の子育て、その中でも叱り方で一番やってはいけないのが、他の子と比較して叱ることです。

親としては激励のつもりで他の子どもを引き合いに出したり、きょうだい間にあるような競争心を持って欲しくてそんな叱り方をする方がいるのですが、これは間違っています」(諸富先生)

比較して叱られると子どもは劣等感を抱きます。​  写真:アフロ

「他人と比較して叱ることは、一人っ子の利点を活かせない最も良くない叱り方です。一人っ子は他人と比べることがない環境だからこそ自分に集中できて、自らの物差しで物事を見て取り組んでいける状況です。

せっかく伸び伸び育つことができる土壌があるのですから、他人と比べてそのベースを壊さないように心がけましょう」(諸富先生)

他者と比較した叱り方は、一人っ子家庭ではとてももったいない叱り方だと諸富先生は話します。比較は劣等感や自己否定にもつながる可能性があるので、控えることが大切です。

子育てを趣味にしない

ほめ方にしても叱り方にしても、やりすぎには注意が必要ですが、厳しくしすぎるのと甘くしすぎるのでは、厳しくしすぎるほうがダメージが大きいと諸富先生はいいます。

「一人っ子は両親の気持ちを一身に受けて育ちます。子どもは良くも悪くもプレッシャーを受ける立場です。従って、親が張り切ってしつけをするとその分だけ、子どもは大きな影響を受けるので、厳しすぎないほうがベターです。

より長いスパンで見れば、子どももいつかルールをわかるようになります。厳しくしすぎて生きるモチベーションが下がる“心の栄養不足”にならないためにも、押すよりは一歩引くことのほうことが大切です」(諸富先生)

親自身が人生を楽しむ

厳しすぎることのデメリットはわかったものの、甘やかすことの影響も親としては心配です。

「甘やかしや、この言葉と同じように扱われる過保護・過干渉は、親が子どもに振り回されている、あるいは子どもを追い込んでいる状態と考えてください。

過保護・過干渉が行き過ぎると親子でストレスフルな状態に陥ることもありますから、親は子ども中心にならない生活を送ることが大切です。

子育てを趣味にせず、親がしっかり自分の人生を楽しんでいけば、そういったこともなくなるでしょう」(諸富先生)

親はつい口出し手出しをしてしまいますが、大切なことは、子どもが子ども自身の人生を歩めるように導いてあげることだと諸富先生はいいます。

子育ての最終的なゴールがわかると、一人っ子育児での子どもとのいい距離感がつかめます。危険なことやトラブルに関しては親が教えたり、導いたりする必要がありますが、普段のしつけでは親が一歩引いて子どもの自主性に任せることも大切です。

一人っ子はどうしても親子が近しい環境にありますが、子ども自身が持つ力を育む子育てをしていきたいものです。


取材・文/梶原知恵

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もろとみ よしひこ

諸富 祥彦

明治大学文学部教授

明治大学文学部教授。教育学博士。1986年筑波大学人間学類、1992年同大学院博士課程修了。英国イーストアングリア大学、米国トランスパーソナル心理学研究所客員研究員、千葉大学教育学部講師、助教授を経て、現職。40年近いカウンセラーキャリアを持つ。臨床心理士、公認心理師、上級教育カウンセラーでもある。 【主な著書と監修書】 『ひとりっ子の育て方』(WAVE出版) 『イラストでわかる自己肯定感をのばす育て方』(池田書店) 『思春期の子の育て方』(WAVE出版)など

明治大学文学部教授。教育学博士。1986年筑波大学人間学類、1992年同大学院博士課程修了。英国イーストアングリア大学、米国トランスパーソナル心理学研究所客員研究員、千葉大学教育学部講師、助教授を経て、現職。40年近いカウンセラーキャリアを持つ。臨床心理士、公認心理師、上級教育カウンセラーでもある。 【主な著書と監修書】 『ひとりっ子の育て方』(WAVE出版) 『イラストでわかる自己肯定感をのばす育て方』(池田書店) 『思春期の子の育て方』(WAVE出版)など

かじわら ちえ

梶原 知恵

KAJIWARA CHIE
企画・編集・ライター

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。