2歳ですが言葉が遅く心配【発達障害・発達特性のある子】の育児の悩みに専門家が回答

#2 2歳ですが言葉が遅く心配〔言語聴覚士/社会福祉士:原哲也先生からの回答〕

一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表・言語聴覚士・社会福祉士:原 哲也

ことばの獲得のプロセスについて

ことばの発達をうながす関わりの話をする前に、子どもがことばを獲得するプロセスを、「ワンワン」ということばを例にとって見てみましょう。

STEP1 母親の視線を追って、視線の先にある犬を見る ➔ 母親が「ワンワンね」と言い、子どもは「ワンワン」ということばを聞く
STEP2 犬という具体物と「ワンワン」ということばを結びつける
STEP3 犬を見て「ワンワン」ということばを思い出す
STEP4 母親が発する「ワンワン」ということばを真似する
STEP5 犬を見つけたとき、それを母親に伝えたくて、「ワンワン」と言う

このように、子どもは、母親の視線を追う、母親のことばを聞く、母親の真似をする、母親に「ワンワン(がいた)」と伝えるといった「周りの人とのコミュニケーション」「やりとり」の中でことばを覚えていきます。

そしてその際に非常に重要なのが、人に興味を持ち、その人と関わりたい、やりとりをしたい、と思う気持ちです。

上の例でいえば、子どもは母親が好きだから母親の視線を追って犬を見て、母親が発する「ワンワン」ということばを注意深く聞きます(STEP1)。だからこそ「ワンワン」と真似ができるのです(STEP4)。そして、母親が好きだから犬を見たときに「ワンワン(がいた)」と母親に「伝えたい」と思い、「ワンワン」と発語する(STEP5)。こうして子どもはことばを使えるようになっていきます。

ことばの発達をうながす関わりとは?

心地よいコミュニケーションを

ことばの獲得のプロセスを考えると、子どものことばの発達の上で、「子どもにとって、好きで、関心があり、やりとりをしたい人がいること」がとても重要だということになります。

では「子どもにとって、好きで、関心があり、やりとりをしたい人」はどのような人かといえば、大好きな人、安心させてくれる人、楽しいやりとりをしてくれる人、喜びに共感してくれる人です。子どもはそのような人のことばはよく聞き、そのような人にはことばで何かを伝えたいと思います。その気持ちがことばを獲得するうえで最大の原動力なのです。

子どもにとって「そういう人」になるには、子どもとの間に心地よいコミュニケーションが必要です。子どもに向き合い子どもの気持ちを汲み取る、一緒に遊び、子どもの喜びを一緒に喜ぶ、そういった気持ちのよいコミュニケーションを通じて子どもにとってやりとりをしたい人になりましょう。

子どもが「わかる」ことばを増やす関わり

ことばを「話す」にはその前にそのことばが「わかる」ことが必要です。では、子どもが「わかる」ことばを増やすにはどう関わればいいでしょうか。

キーワードは、「能動的」「待つ」「少しだけ」です。人は自ら能動的に学ぶときに最もよく学びます。ことばも同じです。ですから、大人が「言わせたいことば」を教えるのではなく、子どもが「言いたいことば」が言えるように援助します。

そのためには、まず、子どもの興味関心を知ることです。子どもの様子をじっと見て、子どものやっていること、伝えてくることからその子の興味関心を探してください。興味関心がわかったら、子どもが自分から何を言うかを「待ち」ます。まだことばが出ない子どもの場合は、子どもの視線、表情や指差し、身振り、発声によって子どもから発信されるものを待ちます。そして、それらが何を伝えようとしているかを察しながら関わります。

その上で、子どもがまだ知らないことばを増やして、表現をしてみます。ポイントは「1つだけ」です。車の絵を見て「くるま」と言った子どもに「赤いね、ほら消防車だよ。ウーウーっていうね」は多すぎます。「あか」や「しょうぼうしゃ」など「1つだけ」足しましょう。

例をあげましょう。子どもといっしょに電車を見に来たとしたら、
①その子どもが何か言うのを「じっと待つ」。
②電車が通った時とき、子どもが「でんしゃ」と言ったら、
③「でんしゃ、とっきゅうだね」
④「でんしゃ、いっちゃったね」

こんな感じです。

子どもの発語を待つことで子どもは「言いたいことが自分で言えた。伝わった」という喜びを感じます。そして、自分の大好きな電車は「とっきゅう」と言うのだなと理解します。さらに、電車が走り去った状況は「でんしゃ、いっちゃった」と言うのだと学ぶのです。

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