【発達障害・発達特性のある子】「こだわり行動」とは? 種類・原因・対応を「療育の専門家」が解説

#5 こだわりが強く延々とミニカーを並べています〔言語聴覚士/社会福祉士:原哲也先生からの回答〕

一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表・言語聴覚士・社会福祉士:原 哲也

写真:アフロ(イメージ写真)
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発達障害や発達特性のあるお子さんの保護者の方からのご相談に、言語聴覚士・社会福祉士であり、発達障害のお子さんの療育とご家族の支援に長く携わってきた原哲也先生がお答えします。

お子さんとの生活が楽しくなり、保護者の方の負担が軽くなるような実践的なアドバイスをお伝えしていきます。第5回は、こちらのご相談です。

【これまでの回を読む】
第1回 発達障害かどうか気になります【発達障害・発達特性のある子のお悩みに専門家が答えます】

第2回 2歳ですが言葉が遅く心配【発達障害・発達特性のある子】の育児の悩みに専門家が回答
第3回 偏食がひどくて困っています【発達障害・発達特性のある子】の育児の悩みに専門家が回答
第4回 子どもが真夜中まで起きている【発達障害・発達特性のある子】の生活リズムや睡眠の悩みに専門家が回答

こだわりが強く、延々とミニカーを並べて遊んでいます。どうしたらいいでしょうか?

「こだわり」は定型発達の子どもにも見られますが、自閉症スペクトラム障害の子どもは、特に強い「こだわり」を持っていることが多いです。

「こだわり」の種類

「こだわり」には次のようなものがあります。

①常同行動:手指を奇妙に動かしたり、くるくる回るなどの全身運動を繰り返す
②自傷行為:自分の身体を傷つける  例:怒ると拳で鼻を強く叩く
③強迫行動・儀式的行動:決まったやり方や順序でものごとをしないと気がすまない  例:特定のキャラクターのスプーンでないと食事を食べない
④同一性保持:持ち物の位置や家の様子、人の髪形など、環境の細かい部分が変わることに抵抗を示す
⑤興味の限局:興味が非常に限定的、かつ固執する  例:くるくる回るミニカーのタイヤに固執する
⑥手順・順番:手順や順番に固執する  例:カーテンを開けるのは自分でないとだめ
⑦ペースに対するこだわり:自分の心地よい行動のスピードへの固執  例:自分のペースでやりたがる。途中で中断されると怒る

複数の種類の「こだわり」が組み合わさる場合もあります。  
・夜中に長時間のドライブをしたがる=強迫行動・儀式的行動+同一性保持
・特定の子どもと遊びたがり、相手が嫌がって泣いても、その子の手を引っ張って遊ぼうとする=強迫行動・儀式的行動+同一性保持+興味の限局
・保育園のドアの開閉ばかりを気にして、室内にいることができない=強迫行動・儀式的行動+同一性保持+興味の限局

なぜ「こだわり行動」が生じるのか?

「こだわり行動」の原因はいくつかあります。

① 単にその「もの」や行動が好き
特定のものや行動が好きでたまらない場合です。

② 安心を求める
発達障害のある子どもは、感覚過敏、先が予測できない不安、言われることや起きていることが「わからない」ことによるストレスなど、日々強いストレスの中にいます。そんな中で「こだわり行動」は、彼らにも「こうすればこうなる」が「わかる」ことです。彼らは「必ずボクの思ったとおりになる」「こだわり行動」をして、「この世界の中に自分にわかることがある」ことを確認して安心しようとします。彼らにとって「こだわり行動」は、不安の嵐の中の救命ブイのようなものであり、心の拠り所なのです。

③ 同じ状況では常に同じ行為をすることが定着する
ある状況とある行為がセットで強く記憶され、その状況になると常に同じ行為をせずにはいられなくなることがあります。例えば、赤ちゃんの泣き声が嫌で、赤ちゃんを叩いてしまう経験をした、聴覚過敏のある自閉症スペクトラム障害の子どもは、「赤ちゃんが泣いていると叩」かないと気がすまなくなるといったことです。自己制御が難しかったり、知的障害がある場合に起きやすいとされます。

④ 自分を満たす刺激を求める
やることがない、楽しめる遊びや自分を満たす刺激がないとき、自分に「わかる」、感じることができる刺激を求めて「こだわり行動」をすることがあります。

変えなくてもいい「こだわり行動」と変える必要がある「こだわり行動」

自閉症スペクトラム障害の子どもの「こだわり行動」は、「なぜそれがしたいの?」と言いたくなるくらい奇妙で強烈であることが多く、周囲の大人はつい、これをやめさせようとします。

しかし上記のように、「こだわり行動」の根底には、自閉症スペクトラム障害の子どもの特性による「つらさ」があり、「こだわり行動」が子どもの心の拠り所になっているという側面があります。だとすれば、すべての「こだわり行動」をやめさせようとするのは、適切ではありません。「こだわり行動」が子どもの心の拠り所であるならば、慎重に、そして大切に対応してあげたいのです。

とはいえ、変えてもらわねばならない「こだわり行動」もあります。それは、本人や周囲の人達の生活を脅かし、生活しづらくさせる行動です。

①本人や家族の安全や健康を害するもの
②破壊行動
③周囲の人に多くの時間や費用をかけさせるもの
④「こだわり行動」があるために、本人の社会参加や経験の獲得が困難になるもの
⑤周囲の人の活動等が妨害されるもの


がそれにあたると私は考えます。

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