いまだに「子育ての体罰」を正当化してしまう親への「2つの決定的な問いかけ」

人生相談本コレクター・石原壮一郎のパパママお悩み相談室【18】「子どもを叩いてしまう」

コラムニスト&人生相談本コレクター:石原 壮一郎

体罰を正当化する親が問うべき2つ

〈石原ジイジの結論〉
一度だけ娘に平手打ちをしたことがある。今から20年近く前、娘が中学年のときだった。

今思い出すと恥ずかしい限りである。とくに反抗期も屈託もなく育っていたが、たぶん父親から見てハラハラすることもあったのだろう。

どんな理由で叩いたのかは忘れてしまった。娘が叩かれるようなことはしていなかったのは確かだ。

自分の中に「一度ぐらいはそういうことをしておかなければ」という気負いというか、憧れがあったのかもしれん。

娘にとってはいい迷惑である。しばらくは口を利いてもらえなかったが、のちのちにしこりが残らなくて(たぶん)本当によかった。

この流れで言うと自己弁護にしか聞こえないが、子育てに失敗や間違いはつきものである。毎日が暗中模索で、何が正解かわからないまま、𠮟ったりホメたり見て見ぬフリをしたりしなければならない。

「100点の子育て」なんてできるわけないし、そんなものを目指したら親も子どもも疲れ果ててしまう。60点ぐらいで御の字じゃ。

とくに子どもが幼いころは、とにかくやることが多いし言うことは聞かないしで、イライラするのは当然である。

ただ、それを子どもにぶつけていいことにはならない。

「体罰」が怖いのは、人は誰しも自分より弱い相手を力でねじ伏せたいという誘惑とは無縁でいられないことと、そんな残念な欲求を正当化する言い訳がたくさんあることじゃ。

現在は「体罰は教育的効果がないどころか、マイナスばかりである」というのが定説になっている。しかし「やっぱり必要だ」「プラスの効果もある」という声はなくなりそうにない。

感情的になって叩いてしまったとき、それを強引に正当化する落とし穴にはまらないためには、どうすればいいのか。次のふたつの質問を自分に投げかけてみよう。

その1「会社でミスをしたときに上司が同じことをしたら、はたして自分は反省するか」

その2「子どもが精神年齢は今のままで体は自分より大きかったら、同じことをするか」

親は、ちょっと気を抜くと「親であること」に甘えてしまいがちじゃ。本文の最後に出てきた「悪い癖」の話も、その一例である。

「子どものためを思って子どもを叩いている」なんて言い種(ぐさ)は、親であることに甘えていないと出てこない。

今回取り上げたのはママからの相談ばかりだった。もちろん、接している時間の長さの違いは大きいだろう。

もしかしたらパパが子どもを叩いても、ママよりはるかに簡単に自分を正当化できて、悩むまでには至らないのかもしれん。だとしたら厄介なことである。

【石原ジイジ日記】
最近のF菜は、右耳に右手を当てて「ズテー」と言いながら横に倒れる“ネタ”がお気に入りだ。間違えたときや失敗したときに言う言葉で、保育園でIちゃんに教わったらしい。「ジイジもやってみな」と指南を受けた。今後の人生でも、間違いや失敗は「ズテー」で乗り切ってほしい。たいていのケースは、それで大丈夫である。

石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
コラムニスト&人生相談本コレクター。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。現在(2022年)、3歳女児の現役ジイジ。

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いしはら そういちろう

石原 壮一郎

コラムニスト

コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか

コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか