「子育ての考えが合わない!」夫婦喧嘩の前にやるべき耳の傾け方

人生相談本コレクター・石原壮一郎のパパママお悩み相談室〔12〕「夫と子育ての考え方が合わない」

コラムニスト&人生相談本コレクター:石原 壮一郎

〈しかし、あなたは「躾」と言いながら、「こうしなければならない」と厳しさだけを与えていませんか? それがご主人にとっても締め付けられる思いがするのかもしれません。あくまでも支えであって、強制ではないということを知ってほしいのです。自ら動くのは子どもさんなのですから。くげぐれも「押しつけ」にならないよう気をつけたいものです〉
(引用:川村妙慶著『女の覚悟――ひとり悩むあなたへ贈る言葉』2011年、講談社)

「正しい」と信じる行動をするとき、人はけっこう暴力的になる。この相談は躾に関してだが、お受験に対する意見の違いが、離婚の原因になってしまうケースは多いと聞く。

どの親も「子どものためを思って」がスタートであることに違いはないが、いつの間にか夫婦間での「勝ち負け」の問題になってまう。本末転倒とは、まさにこのことじゃ。

パパとママがいつもケンカばかりしていたら、どんな方針の躾も苦労して取り組んだお受験も、長い目で見て子どもの糧(かて)になるのは難しそうである。

夫婦は違ってOK! 我が子を信じて譲りあおう

<石原ジイジの結論>
そう言えば娘が幼いころは、いろんな場面で激しく迷っていた。宿題をどこまで手伝うか、ウソをついたことをどう叱るか、友だちとケンカした話を聞いてどんなアドバイスをするか……。

あとで妻に「さっきの叱り方はどうかな」とたしなめられることもあれば、逆に妻に対して「あれは違うと思うよ」と意見したこともあった。

今思えば、どの迷いも結局は「どっちでもいいこと」だった気がする。時は流れ、娘も母になった。私にとっては孫のF菜を育てていくにあたって、夫と意見が合わないこともあるだろう。譲ったり譲られたりしながら、いい塩梅(あんばい)にやってもらいたいものだ。

どうあがいても、パパとママが持ち合わせている以上のものを子に伝えることはできない。あとは本人が頑張ればいいことである。

子育て真っただ中の当事者は、こんなノンキなこと言ってはいられない。配偶者との関係において、うっかりはまると抜け出せなくなる泥沼を避けるには、どこに気をつければいいのか。

多くの人生相談から浮かび上がってきた「危険なサイン」は次のふたつ。

その1「夫(妻)は考えを変えるべきだが、自分は変える必要ないと本気で思っている」

その2「半端に口出ししてくるより、子育てはこっちに任せてほしいと願っている」

もし自分の中にこんな思いがあるなら、決定的な亀裂が入る日も近い。あらためて

「子育ての『正解』はひとつではない」
「意見はすり合わせるものであり片方を叩き潰すものではない」

と胸に刻みつつ、相手の考えや子どもの意見に耳を傾けよう。

そもそも、夫婦の意見は一致していないといけないのか。パパとママが違う意見だと子どもは混乱するかもしれない。しかし、パパとママが常に同じ意見を押しつけてきたら、子どもはさぞ息が詰まるだろう。

どちらかが「逃げ場」になれたり、世の中にはいろんな考え方があることを知れたりするメリットは、多少の混乱というデメリットを補って余りある。

「まあ、夫婦の意見が違っててもいいか」と思っていれば、相手の意見を冷静に聞けるし、譲れるところは譲ろうという余裕も生まれそうじゃ。打ち負かしてやろうとケンカ腰になるのではなく、いっしょにいい落としどころを見つけようという気持ちにもなれる。

こういうことを言うと怒られそうだが、現役のパパやママが今、配偶者に怒りや憎しみを抱くほどムキになって握りしめている自分の意見は、あとで振り返ると「どっちでもいいこと」のひとつに過ぎない。強がりでもやせ我慢でもいいから、もっと我が子を信じよう。

【石原ジイジ日記】
F菜は3歳になった。誕生日の数日前から「あと3つ寝れば3歳」と、まさに指折り数えて待ち構えていた。「3歳になったら立ってブランコ乗る」など、たくさんの抱負を胸に抱きつつ。そうだね、いくつになっても、誕生日はワクワクしながら迎えたほうがいいよね。F菜はしばしば、大事なことを思い出させてくれる。
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いしはら そういちろう

石原 壮一郎

コラムニスト

コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか

コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか