「男女共用セパレーツ水着」はジェンダーレス&ふんわりシルエットで体型カバー 【スクール水着】効果で水泳授業参加数も増えた

シン・スクール水着#2 ~2024リニューアルデザイン~

ライター:遠藤 るりこ

水泳・学用品メーカーのフットマークが発売した「男女共用セパレーツ水着」。全国400校以上が指定の水着として導入する、そのデザインとは?  写真:遠藤るりこ

2022年の発売直後から大きな話題になり、注目されたフットマークの「男女共用セパレーツ水着」。今年(2024)はさらに機能性がアップしたリニューアル商品が登場しました。

開発当初は、水着で体の性差があらわになることに抵抗を感じる性的マイノリティの子どもへ配慮した水着として企画・販売したものの、いざ市場に出回ってみると多くの子どもたちに受け入れられる「スクール水着の新しい選択肢」となって人気に。

「とある学校では、一学年分の女子で1名を除いてみんな『男女共用セパレーツ水着』を購入したと聞きました。子どもたちの水泳授業で水着になる悩みや不安を解消するのが、この水着だったんです」(学校教育事業部・佐野玲子《さの・れいこ》さん)

「男女共用セパレーツ水着」には、体型を隠すためのふんわりシルエットだけでなく、泳ぎを妨げない、さまざまな工夫があります。

今回は、水泳・学用品を発売して今年で56年目になるフットマークの知見が詰まった、最新デザインの詳細をご紹介します。

※2回目/全2回(#1を読む

スクール水着の歴史上大きな転換期に

近年、学校教育においてもLGBTQへの理解が深まり、学校制服のジェンダーレス化が大きな潮流となるなか、2022年に「男女共用セパレーツ水着」が登場します。

「スクール水着は、昭和~平成~令和と時代によって少しずつ変化してきたものの、基本的には男女別の仕様で、性差が明らかになるデザインが主流でした。

2010年くらいから、紫外線対策としてラッシュガードの着用が認められるようになり、男女ともに上着を着ることが少しずつ定着してきます。しかし、いずれも体型にフィットするデザインで、どうしても男女の体格の差が目立ってしまうものでした」(佐野さん)

スクール水着は少しずつ変化を遂げてはいるものの、基本的には男女別のデザイン。体にフィットして、体型が目立つものだった。  写真提供:フットマーク

性別の差なく、快適に着られるデザインを目指すというのは、難しいものだったと言います。体型差のある男女を統一した水着のサイズ規格はこれまで存在しなかったので、フットマークは独自に算出しました。

また、体のラインを見せないためにはふんわり感を出さなければいけませんが、これは、スクール水着のデザインを根底からくつがえす大きな挑戦でした。

「トップス(ラッシュガード)は、男女どちらも1枚で着る仕様です。適度なフィット感を保ちながらふんわりと体型をカバーできます。水に濡れても体に貼り付きにくいよう生地に撥水加工をつけているので、例えば入水前にシャワーを浴びた際は生地をつまんで水滴を落とせば、体型があらわになることがありません」(佐野さん)

また、水中でも脱げないロック式のファスナーを採用。サイズ140センチ以上のトップスには、胸部分にパッドを差し込める収納ポケットをつけて、胸のふくらみが気になってきた子にも安心できる設計にしました。

「水着の生地は、水を含むと重くなってしまうという特性があります。男女共用セパレーツ水着の生地は上下全て強撥水(きょうはっすい)加工をしてあるので、濡れても重くなりにくく、泳ぎやすい。水泳授業で子どもたちの泳ぎを妨げるものであったら本末転倒ですから、この点には特にこだわりました」(佐野さん)

実際に水をたらしてみると、この撥水。「シャワーの水もポロポロ弾くのでおもしろいと、子どもたちの間で盛り上がると聞きました」(佐野さん)  写真:遠藤るりこ

強撥水加工を施したことによって、泳ぎやすいという点以外でも思わぬ反響がありました。

「東北地方などの寒い地域の子は、濡れたラッシュガードを着て体が冷えることがあったそうですが『この水着なら濡れても水を弾くので、体を冷やさない』と好評でした。また、水を吸い込んで生地が重くなることがないので、帰宅時の荷物も軽いと喜ばれています」(佐野さん)

単純に余裕を持ったデザインというだけでない、さまざまな工夫が詰まったフットマークの「男女共用セパレーツ水着」。泳ぎを妨げることなく快適に着られる。  写真提供:フットマーク

より安心して着たいという声を反映

ハーフパンツも、成長によっておしりの形が変わってくる男女どちらの体型もカバーするデザインです。

「ふわりとした水着だと、どうしても水の中で空気を含んで動きにくくなってしまうので、空気の抜け穴をつけました。中には伸縮性のあるインナーパンツもついているので、着用時には適度なフィット感もあり安心です」(佐野さん)

また、上下分かれているとどうしても「水中で上着がめくれてしまわないか心配」との声も。

「発売当初のモデルでは、めくれ防止のループをつけ、パンツのヒモを上着に結びつけることで上下を固定していました。しかし、テスト販売後に『これだけだと、少し心もとない』という子どもたちの声が聞こえてきたので、2024年のリニューアルモデルでは、新たに左右裾にスナップボタンを追加しています」(佐野さん)

また、「どうしても上着を1枚で着るのは不安」という子のために、2024年からはトップスインナーも発売。

「インナーは、上着の下にもう1枚着ておきたいという子におすすめ。胸がふくらんできて気になる女子はもちろん、インナーにパッドを入れたりできるので、より自分らしい体型を表現することもできるのかなと思います」(佐野さん)

カラーも追加 サイズも上下で選べるように

リニューアルでは、スナップボタンの追加と、トップスインナーの発売のほか、新色「ブラック」が加わりました。

「スクール水着と言ったら紺のイメージがあると思いますが、地方によっては指定水着がブラックという学校もあります。また、ブラックを追加することで、学校の水泳授業以外でも使いやすくなるのではと思いました。親御さんからは、『自分用の水着としてほしい』という声をいただいています」(佐野さん)

これまでの上下セット売りのみだったのもやめて、今年から上下の別売りも開始しました。

「子どもによっても体型はさまざまですから、トップスは140、パンツは150、というようにそれぞれ合ったサイズを選んで購入いただけるようにしました。トップスだけ買い替える、なんてこともできます。また、『サーフパンツみたいでかっこいい』と、パンツだけ購入する男子も多いんですよ」(佐野さん)

正確なデータはとっていないものの、「これまで水着になるのが嫌で水泳授業を見学していた子どもたちが、この水着を着て参加するようになったとも聞いています」と佐野さん。

子どもたちにとっても、選択肢が増えるのはうれしいこと。友達が着ていたら、きっと「それいいね!」と話題になるでしょう。

より使いやすく、手に取りやすくなった「男女共用セパレーツ水着」。この夏も、多くの子どもたちの水泳授業で見かけることになりそうです。

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性的マイノリティの子どもに対しては、文部科学省が2016年、全国の小中高校に対して「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について(教職員向け)」を発表し、子どもの心情に十分に配慮した対応の要請を求めています。

近年では、全国の学校における対応状況の調査も実施され、さまざまな配慮の実例を発表、学校間で共有しています。

しかし、報告された全国の実例によると、水泳授業ではこれまで「上半身が隠れる水着の着用を認める」、もしくは「補習」として別日に実施、またはレポートの提出で代替、という対応が多くなされていることがわかりました。

みんなと同じ水泳授業を、楽しく受けられる、それを叶えるインクルーシブなデザインの水着の登場は、喜ばしいことです。

すべての子どもたちがお互いを認め合い、受け入れる土壌がこれからの教育現場で広がっていくことを願います。

取材・文/遠藤るりこ


●取材協力
フットマーク株式会社

【男女共用セパレーツ水着】
◆トップス(コン、ブラック)
サイズ/120、130、140、150:3,630円(税込)
S、M、L、LL:3,740円(税込)
3L、4L:3,850円(税込)
5L:3,960円(税込)

◆パンツ(コン、ブラック)
サイズ/120、130、140、150:3,080円(税込)
S、M、L、LL:3,190円(税込)
3L、4L:3,300円(税込)
5L:3,410円(税込)

◆トップスインナー(コン)
サイズ/150、S、M、L:2,200円(税込)
LL、3L:2,310円(税込)
4L、5L:2,420円(税込)

●関連リンク
フットマーク株式会社 公式HP
フットマーク株式会社 ウェブマガジン
・X(旧Twitter) @footmark_japan
・Facebook フットマーク

※シン・スクール水着は全2回です
#1を読む(公開日までリンク無効)

えんどう るりこ

遠藤 るりこ

ライター

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe