子どもに大切な「クリティカル・シンキング」 中学受験〜就職活動でも活きる「考える力と伝える力の総合的能力」を育む方法を専門家が伝授

子どもの考える力と伝える力を育む「クリティカル・シンキング」 #1

クリティカル・シンキングっていったい何?

クリティカル・シンキングは、日本では主にビジネスの場で役立つ能力として知られてきたスキルです。

「批判的思考」と訳されているので、「何事もネガティブ(否定的、批判的)に考えること」「他人に意見すること」だと思っている方は多いようですが、実際の意味はまったく違うと狩野先生はいいます。

「クリティカル・シンキングは他人を批判することではなく、自分の頭で主体的に物事を考え、自分で考えたことを慎重に判断し、しっかりと伝える力を指します。

このように説明すると、ユニークなアイデアや意見こそがクリティカル・シンキングだと思う方もいますが、『主体的』には奇抜さや独創的という意味はありません。

また、これをいったら響きがいいとか、優等生的な意見を持つのとも違います。

周りと同じ意見であっても、違う意見であっても、クリティカル・シンキングは、誰かの受け売りではない、自分で考えた意見を持つことです。

そして、『私の考えは○○です。なぜならば……』というように、自己の結論と理由の両方を伝えられる力のことをいいます」(狩野先生)

中学受験対策として注目されているクリティカル・シンキング

クリティカル・シンキングは「考える力」と「伝える力」の総合的能力なので、子どもたちに育みたいスキルとして注目されていますが、関心が寄せられている理由はそれだけではありません。

「打算的な話をすると、クリティカル・シンキングを身につけた子は、特に個人面接や集団面接、討論、プレゼンテーションといった試験で、周囲の子よりも頭ひとつどころかふたつもみっつも抜きん出ます

それというのも、常に自分の頭で主体的に物事を考え、『私の考えは○○です。なぜならば……』という、結論と理由のプレゼンを普段から積み重ねるからです。その経験が、どんな場面でも自分の主張を余すことなく伝えられる力になります。

この力は中学受験だけではなく、その後の高校、大学受験、就職試験でも有利に働くでしょう」(狩野先生)

受験の場であるなら、緊張も相まって言葉が出てこなくなることさえありますが、クリティカル・シンキングの経験を積んでいけば、ここぞという大事な場面でも冷静に、しっかりと自分の意見を言葉にして、人の胸を打つような理由を伝えられます。

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