【きょうだい児】 「弟の分もがんばれ」がNGな理由 親や大人が知るべき「子どもの権利」とは? 「きょうだい児の弁護士」が解説

弁護士・藤木和子先生が教える“きょうだい児”の見守り方 #2 親のNG行動&NGワード

弁護士:藤木 和子

“きょうだい児がいないと回らない”はNG

──ヤングケアラーが社会問題になっている一方、「障がいのある兄弟姉妹のお世話をしたい」「親のサポートをしたい」と自ら言うきょうだい児もいます。親として、どの程度なら頼っていいものでしょうか?

藤木先生 難しいところですが、基本は“きょうだい児がいないと回らない”という状況では困ります。例えば両親や祖父母、ヘルパーなど、ある程度人数がいる中のひとりとして、きょうだい児にお手伝いをしてもらうのがいいのではないでしょうか。

問題なのは、きょうだい児が「NO」と言えない状況です。自分がいないと家族が回らないとなればプレッシャーになり、友達と遊ぶ約束をしていたのに親に言い出せず、断ってしまう子もいます。中には、断る理由を友達に伝えられない子もいるのです。

一方で、「“まったく関わらなくていい”と言われて寂しかった」という声があるのも事実です。大事なのは、きょうだい児が自分で選べること。

私も弟と一緒に勉強するのは好きでしたし、子どもによってお手伝いの内容の向き・不向きも違います。本人の意思を尊重し、客観的に見て無理をしていないか、我慢していないかを配慮してもらえたらと思います。

きょうだい児が大人になって振り返ったとき、「いい経験になった」とプラスに思えるかどうかがいちばんです。

悪気がなくても傷つけるNGワード

──藤木先生も周囲からの言葉で強いプレッシャーを感じていたと前回(#1)聞きましたが、親や周りの大人がきょうだい児につい言いがちな、言ってはいけない言葉について教えてください。

「(障がいのある)◯◯の分までがんばって」

藤木先生 私もよく「弟の分もお姉ちゃんががんばってね」と言われましたが、非常に重たい言葉ですよね。悪気なく安易に言ってしまいがちですが、人間は自分ひとりの分しかがんばれません。

障がいのある兄弟姉妹からしても「自分だってがんばっているのに」と感じるでしょうし、「自分のせいで悩ませてる」と苦しむことにもなりかねません。

意外と多いのが「がんばって」と言うわりに、障がいのある子と大きな差が出てくると「◯◯がかわいそう」と言ってしまう親御さん。私もそうだったのですが、これではがんばっていいのか・いけないのかがわからずに、きょうだい児を悩ませてしまいます。

きょうだい児が自ら「◯◯の分までがんばる!」と思えたら大きな力になることもありますが、言うまでもなく障がいのある子ときょうだいは別の人間です。ひとりっ子をそれぞれ育てているような気持ちでいていただきたいです。

「いい子だね」「エライね」「しっかりしているね」

藤木先生 一見すると褒め言葉のようですが、きょうだい児の負担になる言葉です。こう言われると、悩んでいるときに「悩んでいる」と伝えられない、頼まれたことに「NO」と言えない子になってしまいます。

きょうだい児は、それでなくても障がいのある子や親からの影響を強く受け、1日の生活スケジュールひとつとっても振り回されがちです。

こうした他者からの評価を気にすることなく、きょうだい児自身はどう思っているのか、やりたいのか・やりたくないのかなど、親御さんにはしっかりと見極めていただきたいです。

「将来は、◯◯のことをよろしくね」

藤木先生 小学生以降になると多く言われるパターンです。親御さんが障がいのある子を案じる気持ちはわかるのですが、経済的な面でも進路が狭まる意味でも、きょうだい児を悩ませます。

実際、お金なら障害年金や生活保護などの制度がありますし、生活の世話や住む場所は福祉サービスを利用できます。

きょうだい児の人生は、その子のものです。そもそも法律上、親は成人になるまで子どもの世話をしなければいけませんが、兄弟姉妹は違います。

福祉サービスの手続きやお金の管理なども含め、障がいのある兄弟姉妹の世話をするかどうかは、きょうだい児自身が選べるのです。

もし、きょうだい児に障がいのある子の世話を頼みたかったとしても、きょうだい児からすると、将来の“何をよろしく”なのか、漠然としすぎていてわかりにくいのも問題です。

もっと成長してからの話かもしれませんが、きょうだい児ができる・できないの判断をしやすいように、「この手続きをお願いできるか」「住む場所や仕事、生活の状況にもよるが、大人になったら月1回、難しければ盆暮れに面会できるか」などと、きょうだい児と一緒に具体的に考えていくことが必要ではないでしょうか。

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