【きょうだい児】 「弟の分もがんばれ」がNGな理由 親や大人が知るべき「子どもの権利」とは? 「きょうだい児の弁護士」が解説

弁護士・藤木和子先生が教える“きょうだい児”の見守り方 #2 親のNG行動&NGワード

弁護士:藤木 和子

──法律だと、きょうだい児には障がいのある兄弟姉妹に対して、世話や扶養する義務はない、ということなのでしょうか。

藤木先生 家族に関する法律は「民法」ですが、民法第877条第1項には「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養する義務がある」とあります。

ただし扶養義務には、未成年の子どもや夫婦に対して自分と同じ生活レベルをさせる「生活保持義務」と、兄弟姉妹や成人後の親子、祖父母と孫などの関係において自分に余裕がある範囲で助ける「生活扶助義務」の2種類があります。

きょうだい児の場合は後者の生活扶助義務で、世話やお金の仕送りを強制されることはなく、扶養義務は事実上ないのです。

大切なのは、親を含めた周りの大人たちが、障がいのある人も障害年金や生活保護を受給したり、福祉の支援を受けたりして、自分たちなりに自立して生活していけるのだと教えること。そのための準備を親もしているのだと、きょうだい児に見せることではないでしょうか。

障がいのあるお子さんの子育ては苦労も多いですが、親が懸命に情報を集めたり、支援を受けて助けてもらったりする姿からも子どもは多くを学びます。

きょうだい児のためにも障がいのある子のためにも、制度や支援を利用しながら親御さんの負担を軽くして、幸せな姿を見せていただきたいですね。

──周囲の大人がきょうだい児と接するときは、どのような心がけが必要でしょうか。

藤木先生 きょうだい児がさまざまなプレッシャーから解放されて、自由になれるサポートをしていただきたいです。話し相手になったり、何でもいいのでその子の好きなことを一緒にしたり。

私は父のテニス仲間の方々にかわいがってもらったのが楽しい記憶として残っていますし、知人のきょうだい児は親戚のおじさんによく野球観戦に連れていってもらったのが嬉しかったと言ってました。

親は障がいのある子のケアに時間も労力もかかってしまい、きょうだい児と一緒に過ごす時間が十分にとれていないケースがよくあります。物理的に大人の手が足りない分、それを補ってくれる周囲のサポートはとても重要です。

きょうだい児に限ったことではありませんが、ママ友でも親族でも、いろいろな大人が関わり育てることが大切ではないでしょうか。

─・─・─・─・─・─・

第3回は、きょうだい児を幸せに育てるための親の心得、著書『きょうだいの進路・結婚・親亡きあと』に込めた思いについて伺います。


取材・文/星野早百合

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きょうだい児の疑問や不安について、法律の視点から回答した国内初の本『きょうだいの進路・結婚・親亡きあと』(中央法規出版)。弁護士できょうだい児当事者の藤木先生がわかりやすく解説。迷うきょうだい児の気持ちに寄り添い、決断の背中を押してくれる一冊です。

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複数の障害をもつ弟。カルト宗教にハマってDVを繰り返すほぼ失業者の父。家出と薬物の過剰摂取を繰り返す母。凄絶すぎる家庭環境で著者は、どう自分を守ってきたのか。40年の実体験をつづった『きょうだい児 ドタバタ サバイバル戦記 カルト宗教にハマった毒親と障害を持つ弟に翻弄された私の40年にわたる闘いの記録』(著:平岡葵)
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ふじき かずこ

藤木 和子

Kazuko Fujiki
弁護士

手話通訳士。1982年生まれ。東京大学卒業。5歳のときに3歳下の弟の聴覚障害がわかり、“きょうだい児”に。きょうだい児の立場の弁護士として活動し、情報の発信や相談を行う。 「聞こえないきょうだいを持つSODAソーダの会」で代表を務めるほか、「全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会(全国きょうだいの会)」、「シブコト 障害者のきょうだいのためのサイト」などの運営に関わる。 また、ヤングケアラー経験者としても、政府や自治体、学校、団体などのヤングケアラー支援に注力している。 著書に『きょうだいの進路・結婚・親亡きあと』(中央法規出版)、『「障害」ある人の「きょうだい」としての私』(岩波書店)。 ●note 藤木和子 ●聞こえないきょうだいを持つSODAソーダの会WEBサイト  ●全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会(全国きょうだいの会)  ●シブコト 障害者のきょうだいのためのサイト 

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手話通訳士。1982年生まれ。東京大学卒業。5歳のときに3歳下の弟の聴覚障害がわかり、“きょうだい児”に。きょうだい児の立場の弁護士として活動し、情報の発信や相談を行う。 「聞こえないきょうだいを持つSODAソーダの会」で代表を務めるほか、「全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会(全国きょうだいの会)」、「シブコト 障害者のきょうだいのためのサイト」などの運営に関わる。 また、ヤングケアラー経験者としても、政府や自治体、学校、団体などのヤングケアラー支援に注力している。 著書に『きょうだいの進路・結婚・親亡きあと』(中央法規出版)、『「障害」ある人の「きょうだい」としての私』(岩波書店)。 ●note 藤木和子 ●聞こえないきょうだいを持つSODAソーダの会WEBサイト  ●全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会(全国きょうだいの会)  ●シブコト 障害者のきょうだいのためのサイト 

ほしの さゆり

星野 早百合

ライター

編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。

編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。