【きょうだい児】 「弟の分もがんばれ」がNGな理由 親や大人が知るべき「子どもの権利」とは? 「きょうだい児の弁護士」が解説

弁護士・藤木和子先生が教える“きょうだい児”の見守り方 #2 親のNG行動&NGワード

弁護士:藤木 和子

「兄弟姉妹の障がいが重いほど、きょうだい児が大変な思いをしているとは限りません。親の理解や受け止め方、周囲のサポートの有無によっても、きょうだい児本人の感じ方は変わってきます」と、藤木和子先生。  イメージ写真:アフロ

障がいや病気のある兄弟姉妹がいる子どもを意味する“きょうだい児”。そんなきょうだい児当事者だった弁護士の藤木和子(ふじき・かずこ)先生に聞く、“きょうだい児”を幸せに育てるために大切なこと。

前回(#1)きょうだい児の現状や特有の悩みや不安について伺いました。今回は、きょうだい児に親がしてはいけないこと・言ってはいけないことについて。

悪気はないけれど、ついしてしまったこと・言ってしまったことが、きょうだい児の心を傷つけ、追い詰めてしまうことがあります。親はもちろん、周囲の大人たちは、どのようにきょうだい児と向き合えばよいのでしょうか。藤木先生に聞きました。

※2回目/全3回(#1#3を読む)公開までリンク無効

藤木 和子(ふじき・かずこ)PROFILE
弁護士、手話通訳士。東京大学卒業。5歳のときに3歳下の弟の聴覚障害がわかり、“きょうだい児”に。きょうだい児当事者の弁護士として活動し、さまざまな情報発信や相談を行っている。2024年3月、きょうだい児の疑問に法律の視点で回答した書籍『きょうだいの進路・結婚・親亡きあと』(中央法規出版)を上梓。

「親が大変なことは、そばで見ていればわかります。どんな状況でもきょうだい児がきちんと自分の意思を伝えられるように、親御さんには配慮していただけたらいいですね」と藤木先生。  Zoom取材より

まずは否定せず気持ちを受け入れる

──きょうだい児は一般的な子どもと比べて負担が多いといわれています。子どもを追い詰めないために、親がきょうだい児にしてはいけないことについて教えてください。

藤木和子先生(以下、藤木先生) きょうだい児に限らず、すべてのお子さんにも言えることですが、きょうだい児の思いを否定したり、理不尽な対応をとったりしないように心がけていただきたいなと思います。

例えば、きょうだい児の中には「障がいのある兄弟姉妹のことを周囲に知られたくない」「兄弟姉妹のことで友達にからかわれるのが嫌だ」という子がいます。

きょうだい児が障がいのある子のことを「恥ずかしい」と言ったとき、親御さんもショックを受けて、つい「どうしてそういうことを言うの?」「人として最低よ」「お母さんは悲しい」などと責めてしまうことが少なくありません。

すると、きょうだい児は「私の気持ちはどこにいっちゃうの?」「私は愛されていないのかな」と感じてしまうのです。親御さんのつらい気持ちはもちろんわかりますが、「どうしてそう思う?」「気持ちを聞かせて」と、まずはきょうだい児の思いを受け止めていただきたいですね。

また、よくあるのが、障がいのある兄弟姉妹に大切な物を壊されてしまったとき。「壊されちゃったー!」と泣きながら伝えたのに、親に「出しっぱなしにしておくほうが悪い」「仕方ないでしょ! 我慢して」などと、まるで壊されたほうが悪いように言われること。

これは理不尽です。このような対応をされてしまうと、きょうだい児は納得できないことも我慢する“いい子”になってしまいます。こうした状況が繰り返されたら「◯◯のせいで怒られた」「◯◯には優しいのに、私には冷たい」と、親や障がいのある子に対して嫌だという感情が生まれてもおかしくないですよね。

健常者であるきょうだい児への期待値はつい上がってしまうものですが、まずは「壊されて悲しかったね」と気持ちに寄り添っていただきたいです。

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