自分で選んだものに、繰り返し関わらせてあげることが「正常化」への鍵
第4回でお伝えしたように、子どもに対する適切な提示によって、やってみたいという動機づけとやり方を示すことも大事です。
あとは自由を保証し、自分で選んだものに、繰り返し関わらせてあげましょう。正常化への鍵である「集中現象」が子どもに見られ、達成感をもって自らやめたとき、子どもには大きな変化が見られることでしょう。
正常化とは、自由選択→繰り返し→集中→達成感の4段階を経て、初めて起こるものです。そのとき、子どもの心は穏やかになり、他人を思いやることができ、道徳的な生き方を見出す子どもになれるでしょう。
でも、まだ半信半疑とおっしゃるかもしれませんね。私のもとには、会員の方からたくさんのご報告がレポートとして届いております。非常に大きく変わった一例をご紹介しましょう。
最初の頃は、こんな様子でした。男の子のお母様です。
「歯磨きや着替えなどを嫌がり、自分の思い通りにならないと癇癪がひどく、たたいたりします。やりたがることはできるよう精一杯心がけても、あまりにも要求も不満も多く、耐え切れずに怒ってしまいます」(1歳9か月)
質問者さんと同様、毎日、怒ってばかりで自己嫌悪だったといいます。でも、モンテッソーリ教育で学んだことを実践しているうちに2歳を過ぎた頃から変化がみられました。
「配膳をよく行い、食べ終わった食器も重ねて効率よく運んでくれます。ある日、主人と息子が二人でおやつを食べていて、私は少し離れた所で作業をしていたら、食器棚から食器を出して、自分のおやつを入れて私の所に持ってきて「どうぞ」と言われ、感涙しました。この時に、自分で出来る力を育てるという事は、人に何かしてあげる力も育てているんだと思いました。」(2歳3ヵ月)
そして2年間の学びを経て、卒業されたときには、このようなレポートとなりました。
「本を読んだ時には『みんなが、こんないい子に育つなんて本当だろうか』と半信半疑だったことが、実際に自分の子にも当てはまるようになり、驚きました。
公共の場などで、行儀の良さ、利発さを頻繁に褒められる。
ルールを本当によく守り、破る子がいても自分は取り乱すこともなく遵守する。
保育園で集中力があると言われる。
物事をじっと観察して、自分で理解し、納得できるまで見ている。
人の話をよく聞いて、理解したことを自分の言葉で話せる。
以上のようなことがありました。」 (3歳7ヵ月)
いかがでしょうか。正常化への道は必ずあります。
まずは目の前のお子さんをよく観察すること、この子は必ず変わると信じることから始めましょう。新しい子どもにきっと出会えます。
もっと知りたいあなたへ
当欄に掲載されている記事、写真の著作権は、著者または撮影者、講談社に帰属します。無断転載、無断コピー、再配信等は一切お断りします。
◆関連記事◆
第8回 「子どもには競争が必要でしょうか?」子育て相談 モンテッソーリで考えよう!
田中 昌子
上智大学文学部卒。2女の母。日本航空株式会社勤務後、日本モンテッソーリ教育綜合研究所教師養成通信教育講座卒。同研究所認定資格取得。東京国際モンテッソーリ教師トレーニングセンター卒。国際モンテッソーリ教師ディプロマ取得。2003年よりIT勉強会「てんしのおうち」主宰。著書に『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』(講談社)、モンテッソーリ教育の第一人者、相良敦子氏との共著に『お母さんの工夫モンテッソーリ教育を手がかりとして』(文藝春秋)など多数。
上智大学文学部卒。2女の母。日本航空株式会社勤務後、日本モンテッソーリ教育綜合研究所教師養成通信教育講座卒。同研究所認定資格取得。東京国際モンテッソーリ教師トレーニングセンター卒。国際モンテッソーリ教師ディプロマ取得。2003年よりIT勉強会「てんしのおうち」主宰。著書に『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』(講談社)、モンテッソーリ教育の第一人者、相良敦子氏との共著に『お母さんの工夫モンテッソーリ教育を手がかりとして』(文藝春秋)など多数。