「3歳の男の子。片付けができるようになってほしい」 子育て相談 モンテッソーリで考えよう!

第3回

モンテッソーリで子育て支援 エンジェルズハウス研究所所長:田中 昌子

「モンテッソーリで子育て支援 エンジェルズハウス研究所」所長で、たくさんのお母さま、お父さまの相談にのってこられた田中昌子先生に、日々の悩みをご相談するこの連載。今日は、片付けができるようになってほしい、という切実な悩みです。子育て中の人、必読です!

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(イメージ写真/photoAC)

※この記事は、講談社絵本通信掲載の企画を再構成したものです。

3歳4ヵ月の男の子です。どうすれば片付けができるようになりますか?

おもちゃを出しっぱなしで、部屋中に広げてしまい、足の踏み場もありません。いくら「片付けなさい!」と怒鳴っても、「片付けないなら捨てるよ!」と脅しても、まったく効き目はありません。
結局、毎晩私が一人で片付けることになり、もう限界です。
どうしたら子どもが自分で片付けられるようになるでしょうか?

日々の生活で使うものを片付けるだけでも大変なのに、子どもが出したおもちゃまで、毎晩たくさん片付けるのでは本当にイライラして、全部捨てたくなりますね。

でも、片付けは大人だって大変です。整理収納アドバイザーが職業として成り立ち、片付け本がミリオンセラーになっていることを考えれば、片付けは子どもだけの問題ではなく、簡単に解決するものではない、ということも、ご理解いただけるでしょう。

片付けられない原因として、ほとんどの片付け本に書いてあるのは、物が多すぎる、ということです。ですから、おもちゃの数を減らして、おもちゃ箱に全部まとめて戻すだけという簡単な片付けが、子どもにはよいと思われています。でも、残念ながらそれでは、子どもが自発的に片付けをするようにはなりません。子どもが片付けられるようになるためには、いくつかのポイントがあります。

取り出しやすく、元に戻しやすい環境を整える

1つめは、取り出しやすく元に戻しやすい環境を整えることです。おもちゃが深い箱にまとめて入っていては、子どもには全体が見えません。小さいものは奥底に沈んでしまいますから、それを出したいとき、ひっくり返して広げざるを得なくなります。目的のものが決まっていない場合も同様です。あれこれ出して広げてみないと、自分で選べません。

モンテッソーリ教育では、0歳児の頃から、低い棚に物を置くようにしています。低年齢ほど、間を開けて選択肢を少なくしてあります。自分で選べるように、全体がよく見え、いつも決まった場所に決まったものがある、ということが大切です。棚に整然と並べられる数は限られていますから、結果的におもちゃの数も抑えることができます。

ご家庭でしたら、大きな棚を置けないでしょうから、置けないものは押入れなど目につかないところに収納しておきます。飽きて使わなくなったものを、新しいものと入れ替えるようにするといいでしょう。モンテッソーリは、環境は教師であると述べていますが、整えられた環境は、子どもにあるべき姿を自然に教えてくれるのです。

1つの棚に1つだけ だから戻せる 2歳

知性の働きを利用する

2つめは、知性の働きを利用する、ということです。
たとえば、2歳前後になると、同じものを合わせるという知性が働くようになります。「おんなじ」とか「ぴったり」という言葉を使うようになったら、片付ける物の写真を撮って戻すべき場所に貼る、物と置く場所に同じマークを付けておく、といった工夫をしてみましょう。平らなものなら、実物をコピーして、戻す場所の目安になる台紙を作っておいたり、型を取って線を描いておいたりすると、ぴったり置けるようになります。

実物の写真を貼る
実物をカラーコピーして、貼る

3、4歳児になると、分類するという知性の働きも利用することができます。子どもは、仲間分けをすることが大好きですから、たとえば色分けが好きな子どもなら、いろいろな色のお盆(縁にビニールテープを貼っておくだけでもよい)を棚に置き、そこに戻したいものには、その色のシールを貼っておけば、言わなくとも分類し始めることでしょう。

また、どんぐりやおはじきといった細かいものを片付けることは、大人には面倒なものですが、それらの実物を瓶の蓋に貼っておく、といった方法もあります。

ブロックや積み木といった大きなおもちゃは、それぞれの箱に入れるようにしてもいいでしょう。
その場合も、そこに入れると決めたおもちゃの写真や絵を貼っておくなど、子どもが見てわかるようにしておきましょう。いちいち言わなくてすむようにすることが大切です。

実物を蓋に貼る
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