出会いや別れに忙しい春、今年(2023年)も子どものランドセル選び、通称“ラン活”の季節がやってきました。
一般社団法人日本鞄協会ランドセル工業会の調査(※1)によると、ラン活の検討開始時期は、入学1年前の4月がピーク。購入時期は5月と8月が多く、これらは年々早期化傾向です。
また、同調査によると、ここ数年の決め手として、「子ども主導のランドセル選び」が意識されています。
ジェンダーレスなカラーやデザインも多く、多様なラインナップが並ぶなか、今年のキーワードとなるのは「ますます自由な選択肢」。
素材、使い方等々、「ランドセルはこうあるべき」といったランドセル選びの常識や固定観念を超えていく、ニューフェイスをご紹介します。
第1回は、日本を代表するアウトドアブランド・mont‐bell(モンベル)と、老舗子ども服ブランド・familiar(ファミリア)が打ち出した、新しい選択肢。どちらも昨年(2022年)デビューし、瞬く間に話題となり即完。
2ブランドの新製品開発背景や、ランドセルに対する想いなどを伺いました。
※全5回の1回目
国内最軽量を実現したファミリアの新作
世代を越えて愛されるベビー・子ども関連ブランドfamiliar(ファミリア)は2022年9月、ナイロン製ランドセル「air ran.(エアラン)」(全6色、各69,300円・税込)をリリースしました。
「子どもたちが毎日荷物の重さを気にせず軽やかに、元気に学校生活を楽しめる商品を作りたいという想いで開発をスタートしました」と語るのは、株式会社ファミリア営業課の佐々木あかりさん。
創業1950年、ずいぶん昔から革製ランドセルを発売し続けてきた老舗のファミリアが、転換点となるようなナイロン製ランドセルを出したというニュースは、ランドセル業界に衝撃を与えました。
「軽いナイロン製ランドセルを求める声が増える一方で、従来品とは違う見た目を気にされる保護者も多いと聞きました。そういった不安をなるべく取りのぞけるような、ランドセル本来の見た目に近い軽量ランドセルを作りたいという思いがありました」(ファミリア・佐々木さん)
本体はナイロン製、かぶせ(ランドセル本体を覆う「ふた」の部分)に人工皮革を採用し、国内最軽量の約880gを実現。
カラーやデザインだけでなく、長年、子どもの身体や成長を見つめてきた老舗ブランドならではの知見も光っています。
「素材そのものの軽さだけではなく、“軽く感じられる工夫”も凝らしました。肩ベルトや背あての部分にクッション性を持たせることで腰や肩、背中への負担が軽減されるような仕様にしています。
また、本体のサイドのフチ部分など負荷のかかりやすい部分には丈夫な芯地を入れたり、たわみやすい底部分には底板を縫い込んでいます」(ファミリア・佐々木さん)
さらに2023年3月には2024年モデルが登場。全12色のラインナップに。昨年(2022年)のデビュー時にはなかったネームホルダーやストラップなど、付属アクセサリーも追加しました。
購入は祖父母でなく両親 30代が約6割
「昨年(2022年)、ナイロン製ランドセルを初リリースした時期は、ランドセル商戦のピークを過ぎた9月で、9~10月末だけの受注でしたが、多くのご注文をいただきました。
『もう少し早く販売されていたら、air ran.を選んでいたのに!』というお声もたくさんいただきました」(ファミリア・佐々木さん)
さらに、2023年春入学の新1年生だけでなく、現役小学生やラン活前の未就学児の保護者からも、反響が大きかったと振り返ります。
「想像を超える反響をいただき、軽量ランドセルを心待ちにされている方がたくさんいることを感じられました。
2024年モデルは、今年(2023年)2月の告知後1週間で約2000件を超えるカタログ請求をいただいております。昨年(2022年)は約1200件の配布だったので、より多くの方から関心をいただいていると捉えております」(ファミリア・佐々木さん)
さらに、「ファミリアでランドセルを買いたい!」というブランド自体のファンに加え、これまでファミリアで商品を買ったことのない新規客が、増えたといいます。
「通常のランドセルは祖父母の方のご購入が多い傾向にあるのですが、air ran.は、昨年(2022年)の受注では約58%が30代と、比較的ご両親のご購入が多い傾向がありました。幅広い世代の新しいお客様の目に止まり、選んでいただいたことを嬉しく思っています」(ファミリア・佐々木さん)
ファミリアのランドセルは牛革製が129,800円、クラリーノ製は99,000円に対し、ナイロン製は69,300円。大幅に安価なことも、親(当事者)が購入を検討できるようになった大きな要因でしょう。