自分のためのヒント探し
2000年代からイラストレーター、コミックエッセイストとして活躍するハラユキさん。シンプルな線で表情豊かに描かれた人物や動物、美味しそうな食べ物の作品は、新聞・雑誌、広告などを数多く飾っています。
仕事も趣味も充実していたハラユキさんの生活に変化が訪れたのは、結婚そして出産がきっかけ。激務のパートナーは家事育児に加われず、ワンオペでの産後クライシスを経験します。
「夫婦がギスギスして、一緒にいると疲れてしまうようになって。家族なのにこのままじゃダメだ、なんとかしなきゃと焦る中、自分の考えや体験談を整理してエッセイにまとめようと、『ほしいのは「つかれない家族」』という連載を東洋経済オンラインでスタートしました」
その直後に、新たな変化が訪れます。夫に海外転勤の辞令が下り、2017年から2年間、幼い子を連れての駐在生活が決まりました。今度はスペイン・バルセロナで、ワンオペ育児をするようになったのです。
社会も文化も違う、知り合いもいない環境での、新たなワンオペ育児。ですが家族をめぐる連載を持っていたハラユキさんは、取材先を国外の人に広げよう! と、この機会をポジティブに捉えます。
「バルセロナに住んで、日本とは違う社会での家族を知るうちに、制度や文化の違いが家庭に与える違いに興味が出てきたんです」
社会と文化の違いが『家族』をどう変えるか
もともと人の話を聞く取材の仕事が好きだったハラユキさん。自分の体験がテーマになることの多いコミックエッセイの世界で他者の体験を取材しそれを丁寧に綴る手法で、スタイルを築いていきます。
掲載先は男性読者の多いビジネスメディアでしたが、働く人が家事育児もする、共働き家族が多数派になった時代。連載は好評を博し、順調に続いていきます。
「私が知りたい、と始めた仕事が、結果的に誰かの役に立っていくのは嬉しい。でもあくまで最初の動機は、自分のためです。それを考え方や事情の違う読者に押し付けるような『エゴ』が出てこないように気をつけています」
持ち前のリサーチ力と行動力で、ハラユキさんはSNSなどで気になる家族を見つけたら、取材をお願いして会いに行くように。ヨーロッパは国と国の距離が短く、数時間で行けてしまう地の利もありました。
「各地でさまざまな国の人々と話し、視野がぐんと拡大しました。その国の子育てについて描くときには、社会や制度についても調べるので、私の世界が広がりましたね。読者さんの反応もよかったです」
さまざまな家族を扱うコミックエッセイで、ハラユキさんが核に据えたのが、「幸せにする」ということ。
「読んだ後、読者の方々の家族が、もっと幸せになってほしい。だからこそ、取材を受けてくださる方々も不幸にしないように気をつけています。間違ったことを描かず、誤解なく正しく伝わるように」
スペインからも届け続けてきた『ほしいのは「つかれない家族」』の連載の内容は、一気にインターナショナルに。日本と諸外国の取材から単行本が生まれ、ハラユキさんの仕事には、社会派の作品が増えていきました。




















































































