
【算数・国語/作文に学力の差】嫌いな教科を前にダラダラする子どもに親が勧めるべき勉強法〈発達行動小児科学の専門家が伝授〉
我が子の困った行動が大きく変わる 親の考え方と接し方 #3
2025.08.23

運動系は10歳以上と10歳未満で考え方や対応を変えるべき
勉強は、日常生活で苦手な教科に触れることが苦手克服のコツですが、運動系の場合はそのテクニックを当てはめることは難しく感じます。
親が勧めたスポーツ系の習い事に対して、子どもがうまくできずに何度もかんしゃくを起こしたり、イライラが見られた場合、親がとるべき対応にはどんなものがあるでしょうか。
「『10歳の壁』という言葉を聞いたことはあるでしょうか。学年でいうと10歳は小学校4年生時に迎える年齢で、一般的に周囲が見えるようになる時期を指していいます。
つまり、自分と周囲を客観的に見比べて劣等感を抱いたり、自信を失ったり、恥ずかしさを覚えるタイミングであるため、苦手なことをいつまでも無理にやらせると、自分は『できる人だ!』と思える自己有能感が落ちてしまいます。
ですから、運動系は10歳未満は挑戦や頑張る経験をさせるのもいいですが、10歳以上なら苦手なことや嫌なことを無理にさせること自体がいいのか・悪いのか、子どもの発達から対応を考える必要があります」(宮尾先生)
自己有能感が落ちない対応
それでは子どもが10歳以上の場合、運動に関して、宮尾先生ならどのような対応やアドバイスをするのでしょうか。
「たとえば、子どもが自転車に乗れない場合で話すと、子どもが10歳未満なら自転車に乗れるようにしばらくはあと押しします。
しかし、10歳を過ぎて自転車に乗れないのであれば、無理に頑張らせず、『乗り物は自転車だけじゃないよ。大人になったら、車の免許を取るという方法もあるよ』といってあげます。
自転車に乗れない恥ずかしさや劣等感を抱かないように、乗り物は他にもあることと、別の方法があることを教えてあげます」(宮尾先生)
できないことややりたくないことを無理に行うストレスがなくなれば、子どもの困った行動は次第に落ち着いてくるでしょう。
また、自分には別の方法があると子ども自身が思えれば、自己有能感は傷つきません。未来にも期待を持つことができるので、もし友だちから自転車が乗れないことを指摘されても、他の手段に転換して考えることができます。
子どもに困った行動が見られた場合、親はその場しのぎの対応を求めてしまいがちですが、大切なのは、親の手から我が子が離れて社会に出たときに、自分で対応できる、あるいは物事を考えられる力を育てることです。
さらに、子どもの社会性や情動の発達が追いついてくると、困った行動がおさまるケースもあります。子どもの成長を待ちつつ、我が子には社会生活を送る上でのコツやテクニックを伝えていきましょう。
取材・文/梶原知恵
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◆宮尾 益知(みやお ますとも)
どんぐり発達クリニック名誉院長、医学博士
徳島大学医学部卒業。東京大学医学部小児科、自治医科大学小児科学教室、ハーバード大学神経科、国立成育医療研究センターこころの診療部発達心理科などを経て、2014年にどんぐり発達クリニックを開院。専門は発達行動小児科学、小児精神神経学、神経生理学。
『発達障害・グレーゾーンのあの人の行動が変わる言い方・接し方事典』『発達障害と人間関係 カサンドラ症候群にならないために』(いずれも講談社刊)など、著書・監修書は多数。
【我が子の困った行動が大きく変わる 親の考え方と接し方】の連載は、全3回。
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梶原 知恵
大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。
大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。
宮尾 益知
徳島大学医学部卒業。東京大学医学部小児科、自治医科大学小児科学教室、ハーバード大学神経科、国立成育医療研究センターこころの診療部発達心理科などを経て、2014年にどんぐり発達クリニックを開院。専門は発達行動小児科学、小児精神神経学、神経生理学。 『発達障害・グレーゾーンのあの人の行動が変わる言い方・接し方事典』『発達障害と人間関係 カサンドラ症候群にならないために』(いずれも講談社刊)など、著書・監修書は多数。
徳島大学医学部卒業。東京大学医学部小児科、自治医科大学小児科学教室、ハーバード大学神経科、国立成育医療研究センターこころの診療部発達心理科などを経て、2014年にどんぐり発達クリニックを開院。専門は発達行動小児科学、小児精神神経学、神経生理学。 『発達障害・グレーゾーンのあの人の行動が変わる言い方・接し方事典』『発達障害と人間関係 カサンドラ症候群にならないために』(いずれも講談社刊)など、著書・監修書は多数。