「子どもが友達に暴力を振るってしまった」“キレる子ども”の暴力をやめさせる3つの方法[専門医が解説]

#2児童精神科医が説く“キレる”子どもの受け止め方~子どもの暴力・暴言~

児童精神科医:原田 謙

暴力があるのは危機的な状況

大人は、子どもの暴力に屈してはいけません。暴力があるというのは危機的な状況です。子どもの力でも、誰かを叩けば相手に怪我をさせる可能性があります。本人が怪我をすることもあるでしょう。

また、威嚇(いかく)するような暴言を繰り返していたら、周囲の人は恐怖や不安を感じます。同級生がおびえて学校に行けなくなるかもしれません。暴力や暴言を見過ごさないでください。特に暴力への対応は重要です。

ただ、マグマがたくさんたまりすぎて限界がくると噴火します。そうなると、周辺地域に被害が出ます。それと同じように、人間も怒りの感情を内にため込むと徐々に苦しくなり、やがて限界がきてキレてしまいます。そのときには、人に怪我をさせたり、物を壊したりすることもあるのです。

毅然とした態度で対応する

子どもが暴力をふるっているときには、その子を刺激しないように、おだやかな声で話しかけてください。声をかけて落ち着かせましょう。

そうすることが難しい場合には、大人が静かに体を寄せて、子どもの暴力を止めます。それも難しければ、キレている子ども以外の全員がその場所を離れて、暴力の被害を受けないようにします。

子どもは暴力や暴言によって相手を黙らせることを経験すると、次も同じ方法を取ろうとします。暴力や暴言がまだ軽い段階から、毅然とした態度で対応していきましょう。大人も気持ちが揺れることがありますから、「いつも毅然とした態度を取るのは難しい」と感じる人もいるかもしれません。

しかし、「枠付け」をすれば、子どもの言動に対してブレない姿勢を示すことができます。「枠付け」は「毅然とした態度」を貫くうえでも重要なのです。

【枠付けとは?】
家庭では家族で、学校では教師間で話し合い、「次に子どもが暴力をふるったらどう対応するか」を決めておくこと。

「枠付け」のやり方「次にキレたときの対応」の枠組みを話し合い、決めておきましょう。  『キレる子どもの気持ちと接し方がわかる本』より
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暴力を止める3つの方法

ここでは、暴力を止める方法として、「クールダウン」「タイムアウト」「タイムイン」の3つを紹介したいと思います。

暴力の止め方①クールダウン
暴力がおさまっても、子どもはまだ興奮状態にあります。そこで大人が「どうしてあんなことをしたの?」などと問いただすと、子どもは責められたと感じて、また怒り出してしまうこともあります。

子どもが興奮しているときには、大人が声のトーンを落として話しかけ、クールダウンを促しましょう。興奮している子は、自分がカーッとなっていることを自覚していない場合があります。大人が「頭にきているみたいだね」と声をかけて、子どもに自分はいま興奮しているということを意識させましょう。

「クールダウン」大人が声をかけてきっかけをつくろう。  イラスト/めやお『キレる子どもの気持ちと接し方がわかる本』より

子どもが自分の興奮状態に気づき、音楽を聴くことなどができれば、熱くなっていた気持ちはクールダウンしていきます。

・場所や活動を切り替えると、やりやすい
子どもは、怒りを感じた相手がいる部屋では、クールダウンできないものです。クールダウンをするときには「場所」や「活動」を切り替えましょう。例えば、リビングルームで家族と話しているときにキレてしまったら、子どもは自分の部屋に移動して、別の活動でクールダウンをします。「どこに移動して何をするのか」も、事前に話し合って決めておくとよいでしょう。

暴力の止め方②タイムアウト
「ちょっと部屋で落ち着いておいで」と声をかけても、子どもがひどく興奮していて反発することもあります。子どもがクールダウンできそうにないときは、大人のほうが切り替えて「タイムアウト」を行いましょう。

「タイムアウト」というのは、一時中断を意味する言葉です。スポーツで、試合を止めるために「タイム」と言うことがあります。スポーツでは試合を中断して、戦術を確認したり水分補給を行ったりするわけですが、それと同じように、子どもが興奮していて暴れ出しそうなときには、タイムアウトを取って状況を変えるのです。

「タイムアウト」大人が子どもを別の場所につれていこう。  イラスト/めやお『キレる子どもの気持ちと接し方がわかる本』より

子どもが母親と言い争いをしたときには、父親が別の場所へ連れていきます。第三者が対応したほうが、子どもも気持ちを切り替えやすくなります。学校で子どもが担任の先生にキレた場合には、他の先生が対応したほうがよいでしょう。

小学校中学年くらいまでは子どもを大人一人で他の場所へ連れていけますが、それ以上の年代では、抵抗された場合に一人では対応できないかもしれません。家庭では両親、学校では複数の先生が協力しながら対応するのが現実的です。事前に大人どうしで、そのような話し合いをしておくとよいでしょう。

大人が一緒にリラックスさせる「タイムイン」

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