子どもごはんの悩み 「好き嫌いを克服」する食習慣 ヒント&レシピ
人気料理研究家・浜内千波の「子どもを育てるごはんレッスン!」(第4回 好き嫌い克服編①)
2022.01.06
料理研究家・栄養士:浜内 千波
幼児期の食事は、食生活の基礎を作るとても重要な期間です。けれど、好き嫌いがあったり、食べる量に個人差があったりと大変な時期でもあります。
また、子どもの肥満も心配。ほうっておくと大人になって生活習慣病になるリスクが高くなる可能性も指摘されています。
幼児期に必要な栄養素とそのレシピ、苦手なものへの対応、そして大人になっても生活習慣病にならないための方法などを料理研究家の浜内千波さんに6回に渡って伝授していただきます。
第4回目のレシピはにんじんを使ったメニューの紹介です。
子どもは大人よりも味覚が敏感
「子どもが野菜を食べてくれない」という悩みをもつ親は多いと思いますが、どうして食べてくれないのか、苦手なのかをまず知ることが野菜嫌いを克服する第一歩です」(浜内千波さん)
舌の表面には味蕾(みらい)という味を感じるセンサーがあります。味蕾で感じた味の情報が脳に伝達され、記憶されます。味蕾は赤ちゃんの時には1万個ほど、大人になり年齢を重ねていくと減っていきます。
子どもの頃には苦手で食べられなかったものが、大人になると食べられるようになるのは、味蕾の数が減り、子どもの頃に比べ、味覚が鈍感になるからだと言われています。
2020年のタキイ種苗の調査によると、子どもが嫌いな野菜ワースト3は、1位ゴーヤー、2位とうがらし、3位ピーマン。一方、好きな野菜の1位はトマト、2位じゃがいも、3位とうもろこしとなっています。この結果からも、苦味のある野菜が敬遠され、甘味を感じるものが好きな傾向にあるのがわかります。
苦手な野菜を無理強いするのはNG
「味覚にはうま味、甘味、塩味、酸味、苦味の5つがありますが、幼児期は特に苦味と酸味が苦手です。ゴーヤーやピーマンは苦味があり、独特のにおいがありますから、敬遠するのは当たり前なんですね。
大人が思うよりも、子どもは苦味を強く感じているんです。それを無理に食べさせたり、怒るとますます拒否反応を示し、逆効果ですね。トラウマになる場合もあるので気をつけましょう」(浜内さん)
さらには食材がもっている本来の味を教えることが大切だと言います。
「生で食べられる野菜や果物は、まずは生で食べさせてみて食材本来の味を覚えさせることが大切です。たとえば、りんごは種類によっても味が違いますから、その味を覚えるように導いてくださいね。野菜でも同じです。
本来の味がわかったら、次は調味料を使わず、ただ焼いてみる、煮てみる、蒸してみる、揚げてみるなど調理法によって同じ食材でも味が違うこと、変化することを覚えさせてほしいんです。途中での味見もじつは大事なんですね。本来の味を知らないまま味つけしてしまうと、なんのために食べているのかわからなくなってしまいますから」(浜内さん)
調味料は諸刃の剣 賢く使うことが大事
もちろん、味つけしなければおいしくなりませんが、 濃い味は舌の感覚を麻痺させることがあります。調味料は「おいしさを引き出すもの」と心得て、特に味蕾が敏感な幼児期には使いすぎに気をつけましょう。
「最近はいろんなだしの素があって、それだけで味つけがすみますし、ほとんど失敗しませんから便利です。でも、これらの調味料の中には塩分が多いものが結構あるので、幼児期の味覚や健康面を考えたうえで上手に使ってくださいね。基本的には砂糖や塩、しょうゆなど従来の調味料をきちんと計量して味つけしてほしいんです。子どもの味覚を育てることは家庭料理の基本のひとつですし、それが家庭の役割でもあります。そして工夫できるのが家庭料理のよさでもありますよね」(浜内さん)
子どもが食べ物を残すということは、何かがアウトなわけなので、その原因を探らなければ好き嫌いの克服はなかなか困難かもしれません。
「幼児期の味覚、感情は気まぐれなところがありますから、本当に嫌いなのか、おなかがいっぱいなのか、それ以外に理由があるのかを親が見定めないとダメですよね。それは親にしかできないことですから、日頃から家族みんなで食卓を囲み、子どもとコミュニケーションを取ることがとても大切ですね」(浜内さん)
にんじんのふりかけ炒め
【材料】(作りやすい分量)
にんじん…大2本(400g)
ふりかけ(好みのもの)…2袋(5g)
オリーブ油…大さじ1
塩…小さじ1/2
こしょう…適量
ごま(白)…適量
作り方
1 にんじん1本は2~3㎜厚さの半月切りにし、もう1本は2~3㎜厚さの輪切りにする。
2 フライパンにオリーブ油を中火弱で温め、1のにんじんを入れ、ふたをし、焼き目がつくまでじっくりと蒸し炒めする。ときどき、ふたをあけて混ぜ合わせ、塩少々(分量内)をふり、ざっくり混ぜる。
3 ふりかけと残りの塩、こしょうで調味し、ざっくり混ぜる。
4 器に盛り、ごまを散らす。
取材・文:須藤桃子 撮影:松本祥孝
浜内 千波
栄養士。大学卒業後、証券会社を経て岡松料理研究所へ入所。ファミリークッキングスクールを開校し、料理教室を主宰すると共に、食ビジネス全般において、メニュー開発などプロデュースを手掛ける。近年は、食育分野にも力を入れ、レシピ開発や給食従事者への指導に携わっている。 Twitterにて、毎朝のごはんをご紹介している。Twitter:
栄養士。大学卒業後、証券会社を経て岡松料理研究所へ入所。ファミリークッキングスクールを開校し、料理教室を主宰すると共に、食ビジネス全般において、メニュー開発などプロデュースを手掛ける。近年は、食育分野にも力を入れ、レシピ開発や給食従事者への指導に携わっている。 Twitterにて、毎朝のごはんをご紹介している。Twitter: