2歳児が「さつまいも」で始めた驚きの遊び
西麻布保育園の2歳児クラスでの探究活動は、日常の保育にも変化をもたらしています。
日常の変化として顕著だったのが、園庭の砂場にあるおもちゃを減らしたことです。きっかけは、東大CEDEPの専門家と話し合いをしていたときに出た、「使い方が決まっているおもちゃは、子どもたちの想像力を狭めてしまう」という話でした。
探究活動で環境を整える大切さを実感した乳児クラスの先生たちは、普段の保育環境も変えてみようと話し合い、砂場のおもちゃを減らして葉や植物などの自然の素材を配置しました。
「『子どもたちはすぐに慣れますよ』と専門家の方々からもいわれていましたが、何事もなかったように自然に遊ぶ子どもたちの様子にとても驚きました。
行事(焼き芋会)で使用しなかった小さなさつまいもを使って穴を掘ったり、絵を描いたり、焼き芋ごっこをしたり。さつまいもってこんなに何にでもなるんだな、というのが新しい発見でした(笑)。
おもちゃがないことに不満をいう子はいなかったですし、『シャベルがないよ』と困る子もいませんでした」(川端先生)
少し前に見学に行った「ゴミ収集車」が印象に残っていたのか、「いも収集車」といいながらさつまいもを集めるなど、ユニークな遊びが展開される様子を見た川端先生は、「子どもたちは自分で考えて遊びを見つけることができる」と強く感じたといいます。
「遊びを見つける過程で興味や好奇心が搔き立てられ、次々に新しい遊びが生み出されていくんですよね。おもちゃがないからこそ、そういう楽しみを発見することができる。こうした環境を子どもたちに用意することの重要性を、改めて感じています」(川端先生)
川端先生個人も、探究活動での学びを普段の保育活動にいかそうと考えています。
「自然のなかでたくさんのことを感じてほしいと思っていながら、安全面から『できない』と諦めていた活動がたくさんありました。木の枝で遊ぼうとした子に『目に刺さるから』と注意したり、景色を見たくて高い場所に登る子を制止したり。
そのままでは危険でも、視点を変えて工夫すればできることもあります。枝は短くすればいいでしょうし、どこか別の場所で安全に景色を見る方法を考えてみることもできる。
すぐに思考を停止してしまうのではなく、できる方法、子どもと一緒に安全に楽しめる方法を探していきたいです」(川端先生)
「子どもはいつでも遊びに真面目だから、自分も真剣に楽しみたい」と語る川端先生。探究活動で見えた子どもたちの姿が先生たちの気づきを生み、さまざまな工夫が始まっている西麻布保育園の今後の展開から、目が離せません。
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シリーズ「乳幼児からの探究」では、東京都が推進する「とうきょう すくわくプログラム」の支援を受けて探究活動に取り組む乳幼児施設を紹介しました。都内では、2025年度中に約3300の幼稚園、保育園、こども園等で実施見込みとなっています。
西麻布保育園では、子どもたち一人ひとりの興味が深まる環境や接し方を重視した探究活動に取り組んでいました。
先入観や固定観念を持たずに子どもと関わり、子どもの興味や好奇心に寄り添うこと。一緒に「発見」を楽しむこと。探究活動で先生たちが感じたことは、保育者だけでなく、子どもと接するすべての大人に大切なことを教えてくれています。
「ただ遊んでいるだけ」「まだ2歳だから」と子どもの興味や関心を軽んじることなく、その子独自の視点や発想を家庭でも尊重しながら、保護者も一緒に楽しむ。こうした姿勢が、子どもの「創造力」を育むことにつながるのではないでしょうか。
取材・文 川崎ちづる
【乳幼児からの探究 西麻布保育園の挑戦 後編】の連載は、全2回。
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川崎 ちづる
ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。
ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。