子どもの興味が「交わる」とき
西麻布保育園では、2023年度から探究の取り組みを行ってきました。
探究活動は、子どもが抱く「なんで?」という問いや疑問を大人も一緒に楽しみ、対話をとおして深めていく「プロセス」そのものを指します。自分の興味や疑問が尊重され、自由に遊んだり観察したりできる経験をたくさんすることで、ものごとへの興味関心、自分で考える力、協同性といった「非認知能力」につながっていきます。
*乳幼児の探究活動については、こちらの記事で詳しく解説しています。
東京都は、こうした「非認知能力の育ち」を応援したいと考え、2023年度から「とうきょう すくわくプログラム」を開始。乳幼児期の発達や教育・保育実践などを研究する国内唯一の専門機関である東大CEDEP(発達保育実践政策学センター)と連携し、都内の幼稚園や保育園、こども園などにおける探究活動の実践をサポートしています。
西麻布保育園は、他園の参考になるような活動事例を生み出す園(実践協力園)としてこのプログラムに参加したことをきっかけに、探究活動をスタート。2023年度、2024年度はともに幼児(4~5歳児クラス)を対象にしてきましたが、3年目となる2025年度は初めて乳児クラスでの活動を開始しました。
東大CEDEPの専門家や研究者と相談しながら、テーマ設定や環境デザインを検討し、夏から季節ごとに数回ずつ活動を実施する計画で進めています。
取材した当日の、「秋の自然」をテーマにした探究活動では、2歳児クラスの子どもたちが各自の興味で自然素材と触れ合いながら、その子なりの「発見」や「遊び」を楽しんでいました(詳細は前編参照)。
2~3歳の子どもたちは、同じ場所にいてもそれぞれ別々の遊びをしていることが多い時期です。探究活動中も基本的には各自で楽しんでいましたが、ふとした瞬間に「世界がつながる」場面がありました。
葉っぱの上に熱心に石を並べていた子は(前編に登場)、当初は一人で楽しそうにその活動を続けていました。
しばらくすると隣に友だちが座り、同じように葉っぱの上に石を置く遊びをしたあとに、次は石を葉っぱでくるむ遊びを始めました。その子が「のりまきだよ」と先生に差し出すと、石を並べていた子も同じ遊びを始めたのです。
2歳児クラスの担任で探究活動のリーダーでもある川端翔(かわばたしょう)先生は、子どもたちの様子を次のように話します。
「自分の興味のあることに熱中し、そこを深めたいという気持ちと同時に、友だちがどんなことをしているかにもすごく関心を持っているんだと思います。だから友だちの様子もよく見ていて、『おもしろそう』とか『そういうやり方もあるんだ!』と思うと、そこに入って自分も試してみるんでしょうね」(川端先生)
探究活動は、周囲の大人や子ども同士の「関わり合い」を重視しています。発達段階ごとにその関わり方は変わりますが、一緒に活動することでお互いの行為や言葉に耳を傾け、そこからまた新しい興味が生まれて活動が広がっていきます。
西麻布保育園の2歳児クラスの子どもたちも、先生や友だちとともに探究することで好奇心が高まる、豊かな時間をすごしていました。
大人が子どもと一緒に探究する意味
2025年度、初めて探究活動に携わったという川端先生に「戸惑いはなかったですか」と尋ねると、「むしろ新しい視点をもらうことができ、非常に充実しています」と明るい声が返ってきました。
「保育者が工夫することで、子どもたちに気づきが生まれたり、興味が広がったりする場面はたくさんあるんだと実感しています。
私自身がアウトドアが好きなこともあり、これまで子どもたちに自然との出合いをとおして『体で感じる体験』や『感情が動く経験』をしてほしいと思って保育をしてきました。でも、狭い範囲でしかとらえられていなかった部分があると痛感しました。
探究の視点を学んだ今は、『こんな設定をしたら子どもたちはどんな反応をするだろう』とワクワクしているんです。これからの探究活動についても、子どもたちの興味からさらにイメージを広げる環境や問いかけをどう展開していくのか、いろいろな方向から考えている最中です」(川端先生)
そう話す川端先生の目は輝いていて、子どもと一緒に探究活動を楽しんでいることが伝わってきました。
すでに述べたように、探究活動は大人と子どもが一緒に取り組むことに意味があります。子どもの興味に真摯に耳を傾けながら、自身も同じ目線で対象を見つめ、一人の主体として活動に参加する。川端先生のこうした姿勢が、西麻布保育園の探究活動をより充実したものにしています。































