東京都発・約3300の保育園・幼稚園が実践 「探究活動」の驚くべき中身 「うちの子」も夢中に?

乳幼児からの探究 東京都の実践 #1 幼児の探究活動とは (2/3) 1ページ目に戻る

探究活動とは? 子どもの「知りたい」を楽しむプロセス

──まずは、東京都が「乳幼児期の探究活動」に着目した経緯を教えてください。

東京都・鳥井課長(以下鳥井):東京都は、「すべての子どもの生涯発達における土台形成を支援する」という観点から、乳幼児期の「非認知能力」の育ちを応援したいと考えてきました。専門的な知見を持つCEDEPに相談したところ、「探究活動の実践」を提案いただきました。

東大CEDEP浅井先生(以下浅井):探究とは、「なぜ」「どうして」という疑問に答えを与えるのではなく子どもも大人も一緒に問いを深め、知識を協働で構築するプロセスのことです。

定義だけでは想像しにくいかもしれませんが、子どもたちは実際に探究活動を始めると、それぞれが主人公になって好奇心をふくらませ、お互いの発見や考えを聴き合いながら、たくさんの実験や挑戦をしていきます。そうした経験をとおして、自分自身で考える力や自尊心、協同性などがトータルに育っていくのです。

左:東京都・鳥井将弘氏。 右:CEDEPセンター長・浅井幸子先生  写真:コクリコ編集部
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──探究活動が子どもの非認知能力を育む、ということですか?

浅井:そうですね。ただ、あくまで「結果として非認知能力が育つ」という意味です。子どもはまるごとの存在ですので、非認知能力だけを育もうとするのではなく、夢中になれる意味のある経験をつくることを大切に考えています。

──問いや疑問を深めていく探究活動は学校で行われるイメージですが、幼稚園や保育園ではどのように取り組んでいるのでしょうか。

鳥井:「とうきょう すくわくプログラム」における探究内容は、実践する園や子どもたちによって変わります。活動の流れとしては、次のように5つのステップに沿って行われます。

▲探究活動の流れ  図:東京都

浅井:具体例があると、想像しやすいかもしれません。ある幼稚園は、園庭の真ん中に大きな柿の木があり、子どもたちが日ごろから親しんでいました。そこで、5歳児クラスにて、①「柿の木」をテーマに探究することにしました。

活動を始める前に、子どもたちの想像や考えが広がるための②「問い」を用意します。「柿の木は生きている?」「何歳だと思う?」などです。

問いを投げかけられた子どもたちは、柿の木を触ったり、抱きついたりしながらしばらく考えたあと、「柿の木は生きているよ! 命があるから、たべもの(柿の実)ができるんだ」「ざらざらしているから、おばあちゃんかな」などと、次々に自分の考えを口にします。

子どもたちは全身で柿の木を感じ、観察しています。  写真提供:東京都

その後、各々が柿の木の絵を描きました。「木はまっすぐに見えるけど、ぐねぐねしている」と話しながら、実際に曲がった枝を描いた子、「木には赤ちゃんがいる。風が吹くと赤ちゃんは落ちるの」と、柿の実も一緒に描いた子。子どもたちの気づきや発見が、たくさん表現されていきます(ここまでの一連の活動が③の「環境をデザインする」、④の実践に該当)。

左:柿の木の地面をじっくり観察しています。右:子どもたちが描いた柿の木の根っこ。  写真提供:東京都

活動のあと、保育者は⑤振り返りを行います。それらを材料に、次の展開を考えていく。これを繰り返していくのが探究活動です。柿の木の探究では、子どもたちに根っこを描いてみることを提案しました。

鳥井:子どもたちの言葉や絵は、実際に五感でとらえたことをとても豊かに表していますよね。柿の木をよく観察していることが伝わってきます。

浅井:探究活動は、こうした「プロセスそのもの」を重視しています。活動の中で絵を描いていますが、「作品」を残すためというよりも、考えたことや感じたことを表現するための時間です。子どもたちと先生が一緒に対象に向き合い、気持ちの揺れ動きを感じたり、周囲とアイデアを交換したりすることを楽しみ、自分なりの世界を創って深めていくこと自体に意味があるのです。

探究活動を実践する園をどう支援? 「すくわくプログラム」の詳細

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