小学生たちが「さかなクン探究隊」で【海洋プラスチックごみ問題】を研究! 「待ったなし」の実態を東京海洋大学教授が解説
海洋プラスチックごみの最前線を深掘り!『さかなクン探究隊』活動レポート第4弾
2024.12.02
内田教授
さらに、2018年には、世界の塩ブランドの9割以上のサンプルからマイクロプラスチックがみつかった、という調査結果が発表されたんだ(※)。
カタクチイワシや塩という、私たちの食卓になじみの深い食品からマイクロプラスチックが検出されたことで、この頃から、多くの人が海洋ごみやマイクロプラスチックを自分にとって本当に身近な問題だと実感するようになり、注目を集めるようになったんだ。
(※)Ji-Su Kim et al.(2018)「Global Pattern of Microplastics (MPs) in Commercial FoodGrade Salts: Sea Salt as an Indicator of Seawater MP Pollution」Environmental Science & Technology.DOI: 10.1021/acs.est.8b04180.
隊員
身のまわりにはプラスチックがあふれているから、なんかこわいね。
内田教授
本当に細かいレベルの話をすると、ペットボトルのふたをあけるだけで、プラスチックの粒子がとぶし、スナックの袋をあけるときも粒子はとんでいるんだ。でもこれはあんまり気にしなくていいよ。WHO(世界保健機関)によると、プラスチック自体の粒子はほぼ体内で吸収されることなく排出されるため、現状の検出レベルでは健康被害があるわけではないとされているので。
では、なぜ海洋プラスチックについては、こんなに注目されているんだろう?
隊員
魚が食べたものがさらに人の体に入るから?
内田教授
プラスチックはさまざまな添加剤が入っていて、そのなかには有害なものがある。海に放出されたプラスチックは、劣化してバラバラになっていくよね。そうするうちに、有害物質が凝縮したり、環境中にある汚染物質を吸着したりするんだ。プラスチックは化学物質を吸着しやすいという性質があるから。
つまり、マイクロプラスチックが汚染物質の運び屋となって海を漂うことになり、それを生きものが体内に取り込む。そうすると食物連鎖を通して生態系のより上位の生きものへ汚染物質や有害物質が濃縮され、蓄積されていく。これを“生物濃縮”というんだ。
隊員
プラスチックのせいで、魚が食べられなくなったりするの?
内田教授
現状は、そこまでプラスチックだけを敵視することはないよ。プランクトン自体が、もともと自然環境中で曝露して取り込んでいる汚染物質が、生物濃縮して私たちの体内に取り込まれているんだけど、そちらの影響のほうが、マイクロプラスチック経由で人間が汚染物質を取りこむ量や影響よりも大きい、と今のところは言われているんだ。
ただし、なんの対策もせずにマイクロプラスチックの量がどんどんふえつづけると、そのうちプランクトン経由よりも、プラスチック経由で汚染物質を取り込む量がふえてしまうということになるよね。そして、この前のビーチクリーンで実感したと思うんだけど、環境中に放出されて、マイクロ化してしまったプラスチックは、回収することはほぼ不可能だよね? だからこそ、私たちが今すぐにできることは、出るごみをふやさないことなんだ。
各国のマイクロビーズ対策、海洋ごみの種類、世界の海域のなかで漂流ごみの多い海域とその理由、海洋ごみの回収法などさまざまな角度から、内田教授の講義は続きました。海洋プラスチックごみがなぜ問題なのか、そして今自分たちができることを隊員それぞれがより深く考えるきっかけになりました。