
子どもの「抜毛症」 ボール状に固められた毛を発見して気づくことも… 親子で取り組む治療法〔児童精神科医が解説〕
「抜毛症」 #2 ~学校生活への影響と治療編~
2025.06.06
児童精神科医:宇佐美 政英
部屋にボール状に固められた毛を発見して気が付くことも!
──ママパパが子どもの抜毛症に気づくには、どのようなきっかけがあるのでしょうか。
宇佐美政英先生(以下、宇佐美先生):もっとも多いのが、子どもの頭皮を見たときに毛がごっそりなくなっているケースです。
ほかには、保護者の方が掃除中に、ベッドやトイレなどに毛がたくさん落ちているのを見て気づくことも。ボール状に固められた毛の束を見つけたお母さんが、怖がってしまったこともありました。
抜毛症は、子どもが自身の状況をうまく伝えられなかったり、個人差があることなどから、明らかになっていないことが多くあります。
ボール状に固める理由も、毛を抜いていることを親御さんに気づかれるのが嫌で、隠しているのかもしれないですね。
抜毛症の影響で修学旅行に行けない子も
──「子どもが毛を抜いている」と気づいたとき、早めに治療に行ったほうがいいのでしょうか?
宇佐美先生:はい、早めの治療をおすすめする理由として、同じ部位の毛を長期間抜き続けると毛根が死んでしまい、新しい毛が生えてこなくなってしまう可能性があるからです。
個人差はあるものの、抜毛症の治療は年単位でかかります。
抜毛症では髪の毛のほかに、まゆ毛、まつげ、陰部の毛などを抜くことがあり、どの部位の毛を抜くかは、一人ひとり異なりますが、特に頭皮の場合、見た目の変化が現れやすいことから、社会生活や学校生活にも影響が出ることがあります。
例えば、自分の見た目を恥ずかしく思い、ウィッグをつけたり、帽子を被って頭皮を隠す子がいます。修学旅行などの宿泊を伴う学校行事では、お風呂の心配も。髪の毛が濡れて頭皮の毛がないことが友達に知られるのを気にして、行けなくなってしまう子もいるんです。
また、学校で誰かに見た目をからかわれるなど、抜毛でつらい思いをしたり、友達と会うのを避けるなど、交友関係にも支障が出ることも。本人が見た目を気にして受診をためらい、治療につながりにくいケースもあります。