子どもの「抜毛症」 ボール状に固められた毛を発見して気づくことも… 親子で取り組む治療法〔児童精神科医が解説〕

「抜毛症」 #2 ~学校生活への影響と治療編~

児童精神科医:宇佐美 政英

「抜毛症かも」と思ったら児童精神科を受診

──では、「子どもが抜毛症かもしれない」と思ったとき、何科を受診すればいいのでしょうか。

宇佐美先生:児童精神科を受診してください。近くにない場合は、かかりつけの小児科や皮膚科を受診してください。

抜毛症には、DSM-5(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)に基づく診断基準があります。下記のうち3個を満たすと抜毛症と診断されます。

・繰り返し自分の毛を抜き、脱毛が生じる

・抜毛を減らそう、または止めようとする試みをしている

・抜毛によって、臨床的に意味のある苦痛や社会的・職業的・その他の重要な機能の障害が生じる

・医学的疾患(例:皮膚疾患)による脱毛ではない

・ほかの精神疾患(例:身体醜形障害)によるものではない

宇佐美先生:抜毛症に特化した薬はなく、薬物治療は効果的とは言えません。具体的な治療法は、行動療法の『ハビット・リバーサル』を用います。本人が気づかないうちに毛を抜いてしまう習慣(ハビット)があるなら、そうならないように生活を反転(リバーサル)させる方法です。要は、『無意識の自分を邪魔する計画を立てる』ということです。

私は「抜毛症をやっつけよう!」と子どもに声をかけて、主体的に治療に取り組むよう促しています。

ポイント①抜毛行為をする状況を一緒に分析する

──治療のポイントを教えてください。

宇佐美先生:治療のポイントに、「①抜毛行為をする状況を一緒に分析する」「②代替行動の導入」「③モチベーションを維持する」の3つがあります。

「①抜毛する状況を一緒に分析する」ですが、子どもによって、毛を抜く状況や場所などはさまざまです。本人には、「いつ・どこで・どういう状況で抜いているかを一緒に調べてみよう」と伝えています。

まずは、下記の問いに答えてもらう形で『いつ・どういうシチュエーションで毛を抜いているのか』を子どもに調べてもらい、状況を一緒に分析します。

『どこで抜くことが多い?』
→『(例)自分の部屋、トイレ、ベッドの上』

『どういうときに抜いている?』
→『(例)1人の時間、寝る前、勉強中』

『どの指を使って抜いている?』
→『(例)右手の親指と人差し指』


無意識でやっているものの、毛を抜くときに使う手や指、場所など、意外とパターン化されていることが多く、実際にやってみてもらうとわかりやすいんです。特にまつげの場合は、利き手じゃないと抜きにくいですからね。

「毛を抜くこと」に代わる行動を取り入れる

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