子どもの「低位舌」 歯並び悪化・虫歯の原因になる「舌の位置の悪さ」がコロナ禍で増加!〔専門医が警鐘〕

低位舌ってナニ? 舌が下がることの危険性と生活習慣 #1

お口ぽかんは危険!? お口周りの筋力が低下している子どもが増えている! 写真:PIXTA

子どもの健康に気を遣い、バランスのよい食事を心がけている親御さんは多いかと思います。しかし、食事時間や食べ方に気をつけている親御さんはどのくらいいるでしょうか。

実は、食事時間や食べ方、姿勢から、子どもの口周りの成長具合をうかがい知ることができます。食事時間が長かったり短かったりする場合、口周りの筋力が低下している可能性があります。それは、どうやって見分ければいいのでしょうか。

「食いしばりと低位舌(舌が下あごにベタっとくっついている状態)がなければ歯医者はいらない」をモットーに、舌の重要性を伝えている歯科医師の石塚ひろみ先生に、「子どもの口周りの筋力が低下の原因」をおうかがいします(全3回の1回目)。

◆石塚 ひろみ(いしづか ひろみ)
歯科医師。オウル歯科院長。
「お口はカラダの玄関」を基本理念とし、訪問診療や障がい者歯科(重症障がい者を含む)にも力を入れている。また、低位舌が口腔内のみならず全身に与える影響や、舌の機能の重要性を広めるために、セミナーや講演活動も精力的に行っている。

【舌が下がることの危険性と生活習慣:第2回 第3回を読む】
※公開日までリンク無効

うちの子は大丈夫? 食事にかかる時間と口腔機能の関係性

近年、子どもの歯に関すること以外に、親御さんからこんな相談が増えていると石塚先生はいいます。

「お母さんたちからの相談で最近多いのは、『子どもの食事の時間が長い』ことです。食べるのに時間のかかるお子さんは、うまく飲み込めない場合が多いです。飲み込めないのでいつまでも口の中に食べ物を溜め込んでしまうんですね。

逆に、食べる時間が極端に短いという相談もあります。食べるのが速いお子さんは、食べ物をかまずに丸飲みしてしまっています。

子どもは気管や食道が柔らかいので、丸飲みできてしまうんです。あとは、コップで上手に飲むことができず、ストローが手放せないという相談もあります」(石塚先生)

親御さんにとって、子どもの食事に関する問題は避けては通れません。うまく食べたり飲んだりできない原因は何なのでしょうか。

「お口周りの筋肉がうまく使えていないことです。子どもの場合、嚥下(えんげ)障害とまではなりませんが、お口周りの筋肉がうまく使えずに筋力が低下してしまうと、上唇や頰、舌などがうまく動かせないため、咀嚼(そしゃく)が十分にできなくなります。

咀嚼とは、ただ食べ物を小さく切り刻む動作のことを指すだけではありません。お口の中で歯や舌を使って食べ物を砕き、唾液と混ぜ合わせて飲み込みやすい状態にすることをいいます。

飲み込みがうまくできないお子さんは、上下の歯でかむことはできるのですが、奥歯ですり潰す動作ができないんですね。

そのため、食べ物を飲み込みやすい状態にしにくいのです。こういうお子さんは、食いしばりや歯ぎしりが実はとても多いです」(石塚先生)

子どもだけじゃない、大人も舌が下がっている人が増えている!?

子どもの食いしばりや歯ぎしりが増えている原因は、舌の位置が関係していると話す石塚先生。どのような舌の位置だと食いしばりや歯ぎしりを引き起こしてしまうのでしょうか。

「舌が下あごにベタっとくっついている状態です。これを『低位舌(ていいぜつ)』といいます。

舌の裏側に、舌と下の歯茎をつないでいる『舌小帯(ぜっしょうたい)』という紐状のものがあるのですが、低位舌の人はこの舌小帯が下あごにくっついて舌がまるで板のようになってしまっていることもあります。

舌は本来、表面が口蓋(こうがい)に触れているのが正解です。口蓋とは上あごの、海苔を食べたら張りつくところといったらわかりやすいでしょうか。

舌は、食べる・しゃべる以外に、頭を支える重要な筋肉でもあります。舌が正しい位置にあることで頭を真っすぐに支えることができるのです。

ですが、現代ではスマホやゲーム、パソコンなどで、下を向いた姿勢になることが多くあります。下を向いていると、舌が下がって押し上げることが難しくなってしまい、頭を支えることができなくなるのです。

でも頭は重いので、無意識のうちに歯を食いしばって頭を支えているんですね。行き場を失くした舌は、下方に下がって前歯を押してしまうので、歯列にも影響を及ぼします」(石塚先生)

舌の裏側にある舌小帯。舌が下がってしまうと伸縮できずに硬くなってしまいます。 提供:オウル歯科

また、食いしばりが虫歯の原因になる可能性があるとの指摘もされます。

「食いしばることで、目には見えない小さなひびが歯に入ります。食いしばるたびにこの小さなひびが開いたり閉じたりを繰り返して、虫歯菌がどんどん奥へ奥へと入り込んでしまうのです。

大人でも、治療しても同じ歯の銀歯ばかりがすぐ外れる人は、いつも同じ箇所を強くかんでいる可能性があります」(石塚先生)

食いしばりや虫歯にまで舌が関係していることには驚きです。

石塚先生は「高齢者歯科や障がい児の訪問診療をするなかで、舌がうまく機能していないことがさまざまな不調と関係があるのではないか」と思い、舌について深く学んだといいます。

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