子どもの「低位舌」 歯並び悪化・虫歯の原因になる「舌の位置の悪さ」がコロナ禍で増加!〔専門医が警鐘〕

低位舌ってナニ? 舌が下がることの危険性と生活習慣 #1

低位舌によって起こる症状と健康への弊害

舌が下がっていることで起こる症状には、見た目にわかるもの以外にも、親御さんが注意していないと気づきにくいものもあります。

「まず、顕著な症状としては、舌に歯型がついてしまうことですね。圧痕(あっこん)とも呼びますが、ビール瓶の栓のように舌の縁がギザギザになってしまいます。舌が下がっていると、頻繁に舌をかんでしまう恐れがあるのですが、舌の側縁部は舌先ほど敏感ではないので、傷がついても気がつかないことがあります。

お口の中は、唾液が細菌から守ってくれる役割があるので、かんだ傷が化膿するなどして、そこから病気を引き起こすことはほぼありませんが、そのままにしておくと血腫ができてしまうこともあります。

次に、飲み込みの悪さが症状としてあります。舌がうまく使えないので、咀嚼が十分にできず、飲み込みがうまくできません。喉に詰まらせる原因にもなりますし、丸飲みしてしまうお子さんは、胃腸の消化にも負担がかかります。実は、子どもの便秘も最近多いんですよ」(石塚先生)

舌が下がっていると、直接、病気につながるようなものでなくても、日常生活においてストレスになりうる症状もあるといいます。

「一番は歯並びが悪くなることです。歯並びは、舌の位置と唇とほっぺのバランスで決まります。舌が下がっていると、あごが発達せずに狭くなってしまうので、歯が真っすぐ生えることができず、ガタガタになってしまいます。ほかに、舌先で前歯を押してしまうのも歯並びが悪くなる原因の一つです。

また、滑舌の悪さも低位舌と関係しています。舌をうまく動かすことができないので、いわゆる『舌足らず』のような話し方になってしまいます。

小さいうちはかわいらしく感じるかもしれませんが、そのままにしておくのは考えものです。というのも、滑舌の悪さはいじめの原因になりかねないからです。

現在は小学校から英語教育が始まっていますので、英語の発音がうまくできずに、そこで勉強がつまずいてしまう可能性もあります」(石塚先生)

食いしばりやカラダの健康状態は舌を見ればわかる! 写真:アフロ

なぜ舌が下がってしまうの? 低位舌になる原因と生活習慣

ここまで低位舌について詳しくお聞きしましたが、では、なぜ舌が下がってしまうのでしょうか。低位舌になる原因は大きく2つあるといいます。

「舌だけでなく、お口周り全体の筋力低下が一番の原因です。食いしばりのせいでお口周りの筋肉が硬くなってしまい、うまく動かせないので使わなくなり、さらに筋力が低下してしまいます。

唇、ほっぺ、舌はそれぞれが独立して動き、かつ協調する動きが理想です。口周りの筋肉が柔軟であれば、それぞれの器官が協調性を持ち、正しい嚥下や正しい成長に結びつきます。

もう一つの大きな原因は姿勢です。丸まって首を潰すような姿勢は絶対にいけません。姿勢が悪くなると、舌以外に足腰にも影響を及ぼしますので、うまく走れないなどの弊害が起こる可能性があります。

また、丸まった姿勢は内臓を圧迫するので、消化器官への悪影響も懸念されます」(石塚先生)

舌は姿勢の維持に欠かせない筋肉だと話す石塚先生。特に座り姿勢について普段から気をつけてほしいことがあるといいます。

「ソファや柔らかいクッションだと腰が埋もれてしまい、背中が丸まってあごが出やすくなってしまいます。できれば、足がしっかり床につき、膝が垂直になる高さの椅子に座って、あごを出さずにうなじを伸ばすようにして座るといいですね。

床に座る場合は、片方だけに偏らないように気をつけてください。

親御さんは、お子さんがテレビを観たり本を読んだりしているときに、お口がぽかんと開いていないか、横から見たときに首の後ろ側(うなじ)がつぶれていないかをチェックしてあげてほしいです」(石塚先生)

こんな姿勢でテレビを見たりしていませんか? 顎が上がって首が前に出ていたら要注意! 提供:オウル歯科

また、コロナ禍においてマスク生活を強いられたことも低位舌の原因になっていると話します。

「マスク生活においては、子どもの成長の妨げになる悪いことが増えました。顕著なのは口呼吸です。マスクをつけていると息苦しいのでどうしても口呼吸になってしまいます。

常に口を開けているのであごが発達せず、顔の筋肉が下に引っ張られて下がってしまい、表情がなく、目もうつろになっている子どもが多くなりました。

人は本来、鼻呼吸であり、鼻呼吸がフィルターの役割をしています。それが口呼吸のせいで上咽頭(じょういんとう)が目詰まりして免疫力が低下し、鼻づまりやアレルギーの原因になってしまうのです。

また、過去の黙食で会話が減ったことももちろんですが、顔や口を使った遊びをしなくなったこともお口周りの筋力が低下した原因のひとつです。

〈にらめっこ〉や〈あっぷっぷ〉などの変顔遊びや、風船、吹き戻しなどの吹いて遊ぶおもちゃなど、マスク生活によって子どもの成長を促すのに役立つ楽しい遊びが奪われたことが残念でなりません」(石塚先生)

口周りの筋力の低下は歯並びや飲み込みの悪さだけでなく、子どもの成長にさまざまな悪影響を及ぼしていることに驚きを隠せません。そのなかでも、特に舌が重要な役割を果たしていると知り、舌への興味は深まるばかりです。

次回は「舌の役割」についてさらに詳しく解説し、舌が正しい位置にあることで期待できる効果や、舌の位置の確認方法を紹介します。

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石塚 ひろみ(いしづか ひろみ)
歯科医師。オウル歯科院長。オンラインサロン『舌の学校』主催。日本大学歯学部卒業後、都内のクリニック勤務を経て、田中歯科を継承。2015年、名称をオウル歯科に変更し移転開業。一番身近な歯科医院として歯科治療に邁進し、地元住民から親しまれている。近年は、舌の機能の重要性を広める活動も精力的に行っており、歯科関係者以外からも多数の相談や要望を受けている。

【書籍】
『なんとなく不調がスッキリする~舌はがし健康法(晶文社)』
【執筆協力】
『病気をもつ子供と家族のための「おうちで暮らす」ガイドブックQ&A』
その他、雑誌・新聞等多数掲載


取材・文/伊藤千鶴

『舌が下がることの危険性と生活習慣』の連載は、全3回。
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