【子どものケガ】ホームケアの新常識 「絆創膏を貼らないほうが早く治る」は間違い! 「令和の正しい処置」を専門家が解説
令和の「子どもホームケア」#1~絆創膏による傷のケア~
2024.11.05
小児科専門医:森戸 やすみ
子どもは転んだり切ったりと、体のあちこちにしょっちゅう傷ができてしまうもの。今の親世代が子どものころは「傷は絆創膏を貼らないほうが早く治る」と言われていましたが、令和の現在、どのような処置が正しいとされているのでしょうか。小児科医の森戸やすみ先生に聞きました。
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以前は「傷は乾かすもの」という知識が一般的で、乾かしてかさぶたを作ることが傷の治療であるとされていました。
ただ、子育て中のママパパならよくご存知かと思いますが、子どもにとって絆創膏は特別な存在。絆創膏を貼ってあげると、お子さんって喜びますよね。子どもを落ちつかせるために、絆創膏を貼ったこともよくあったでしょう。
でも、ずっと貼ったままにしておくと、傷口や皮膚がふやけたりかぶれたり、場合によっては絆創膏を口に入れてしまったり、トラブルの原因になることも。
そんな面もあって「傷は、絆創膏を貼らないほうが早く治る」とより広まったのだと思います。
今の主流は「傷は湿らせて治す」湿潤療法
救急絆創膏を貼らずに乾かすケアより、傷を湿らせて治す「湿潤(しつじゅん)療法」がより良いと医療関係者の間で言われ始めたのが、1990年代後半のこと。今、傷ケアの常識は、この湿潤療法です。
傷を乾かすのとは真逆の考え方で、被覆材(ひふくざい/ドレッシング材)と呼ばれる医療材料で傷口をおおって密閉し、かさぶたを作らずに治します。
被覆材には、水分を吸収する高分子のハイドロコロイドが含まれています。市販品で有名なのが「バンドエイド® キズパワーパッドTM」。2004年に湿潤療法ができる治癒タイプの絆創膏として発売され、一般にも湿潤療法が広く知られるようになりました。今はいろいろなメーカーから類似の絆創膏がたくさん出ていますね。
湿潤療法は、痛みをやわらげ、早くきれいに傷を治す方法です。傷ができると傷口からジクジクした滲出液(しんしゅつえき)が出てきます。透明からやや黄色っぽい体液で、この滲出液には傷を治そうとする成分が含まれています。
被覆材で傷口をおおうと余分な滲出液を吸収し、さらに空気に触れずにしっかりと密閉できるので、滲出液の自然治癒力が十分に発揮されて傷が早く治るのです。
また、傷の表面が空気に触れていると刺激を受けて痛みますが、傷口をおおう湿潤療法なら痛みがやわらぐのもメリットです。
湿潤療法はすり傷のほか、切り傷ややけどなどにも有効です。ただし、樹木のささくれや植物のとげ、さびた金属が刺さって取りきれずにできた傷など、傷口をおおう湿潤療法が向いていないものも。動物や人に嚙まれてできた傷、出血が止まらない場合など、受診が必要なケースもあります。