小児がんの子が5歳で結婚式 「こどもホスピス」で実現した「人生最良の1日」

「こどもホスピス」#3 ~5歳児の結婚式と七五三~

フリーライター:浜田 奈美

昨年(2024)9月23日、Facebookの「横浜こどもホスピス うみとそらのおうち」のアカウントから、可愛らしい写真が投稿されました。

幼い男の子と女の子が、ドナルドダックふうの衣装をまとい、ガラス窓の外を見ながら仲むつまじく身を寄せ合っている様子をとらえた写真が1枚。

そして、女の子は「ラプンツェル」のプリンスのようなウェディングドレスを、男の子は、「美女と野獣」に出てくる野獣の王子様のジャケットを着て、ウェディングケーキを分け合う写真が1枚。

どちらの写真も、温かい光に包まれて祝福を受けている幼い二人の、歓声が聞こえてきそうなほどの幸福感に満ちています。

東京ディズニーランドが大好きな二人らしい衣装で挙式。両親は、玲花ちゃんが天国へと向かう旅路に、大好きだった「アナ雪」のドレスをプレゼントした。  写真提供:高松愛美さん
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おそろいのドナルドダックの衣装で「お色直し」。はるぽんのママが、二人のために手作りしたという。  写真提供:高松愛美さん

投稿の説明は、こんな感じでした。

「横浜こどもホスピスには、ご家族から『七五三などの節目にプロが撮った写真を残したい』というリクエストが寄せられることがありますが、この日はなんと同じ病院で治療を頑張った大切なお友達同士の結婚式のリクエスト。

一部の衣装はママたちの手作り、ウエディングケーキのデコレーションはお子さん自身が挑戦、ゲストに病院スタッフも駆けつけてくださり、オリジナリティあふれる素敵な結婚式となりました」

一緒に退院 そしてプロポーズ

女の子は、高松玲花(れいか)ちゃん。男の子は、玲花ちゃんのことが好きで好きでたまらない「はるぽん」。二人は2歳のころにそれぞれ重い病であることが判明し、順天堂大学病院の小児病棟で知り合った「闘病仲間」です。

玲花ちゃんの病は小児がんのひとつである神経芽腫、はるぽんの病は白血病でした。

入院生活は決してラクではなかったはずですが、玲花ちゃんもはるぽんも、子どもらしさを決して失わず、体調の良いときには病室や廊下でかくれんぼや「アンパンマンカー」に乗るなどして、遊びました。

玲花ちゃんとはるぽんは寛解し、偶然にも同じ2021年の12月4日に退院しました。退院すれば、二人は離れ離れになってしまいます。するとはるぽんから、思いがけない言葉が飛び出しました。

「玲花ちゃん。ぼくたち、けっこんしようね」

はるぽんのことが大好きだった玲花ちゃんも、少し照れながらも、うなずいて答えました。

そして昨年(2024)の3月、幼い二人と家族で東京ディズニーランドへ遊びに行き、はるぽんはシンデレラ城の前で、玲花ちゃんに正式にプロポーズしました。小さな指輪も用意して、王子様のようにひざまずいて、はきはきと言いました。

「ぼくと、けっこんしてください」
玲花ちゃんも、しっかりと答えました。
「はい!」

5歳の二人が「永遠の愛」を誓い合った瞬間です。はるぽんは喜びがあふれ、玲花ちゃんをぎゅーと抱きしめました。見守っていたお互いの家族にも、笑顔が広がりました。

実はこのとき、玲花ちゃんの病気は、とても難しい状態にありました。

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