難病を抱えた“小さな哲学者”が放つ今を生きるための言葉とは
#2 子どもの強さを理解するために大人が観たい映画 病気の子どもたちを追ったドキュメンタリー『子どもが教えてくれたこと』
2021.07.22
映画評論家:前田 有一
ポイント3 不条理を受け入れる子どもならではのしなやかさ
「人生なんて平等ではないし、運の強さだって人それぞれ。本当に理不尽なものですよね。生まれながらにして病気と闘うことを運命づけられた子どもたちの姿を見ていると、つくづく不条理だなと思ってしまいます。でも子どもたちは、それを“人生なんてそんなもの”と受け入れています。
例えばテュデュアルとは別に、神経芽腫を患うカミーユという子どもが登場するのですが、『僕はママのお腹にいるときから病気。赤ちゃんのときにママが全部説明してくれた。死んじゃったらそのときはもう病気じゃない』と微笑みながら語るんです。
カミーユはわずか5歳ですが、すべてを悟っているような言葉を私たちに投げかけます。病気を抱えている、抱えていないに関わらず、子育てをしていると、つい“普通の子”とくらべてしまったり、“理想の子”に近づけたいと思ってしまったりしますよね。
でも子どもはどんな不条理な境遇に置かれても、意外と強く生きようとするもの。それをわかっているだけでも、親は肩の力が抜けるはず。子どもが心配でアレコレ口を出してしまうという親御さんは、この映画を観ると子どもとの距離の取り方のヒントを得られるのではないかと思います」
難病という現実を前に、落ち込むことはあっても、打ちひしがれることなく、笑顔を絶やさない子どもたち。親からすると助けたい一心で、いろいろしてあげたくなってしまうものです。
しかし、子どもは子どもなりに自分の境遇を受け入れ、自分なりに楽しく生きようとする……。これは病気を抱えている子どもに限らず、すべての子どもに共通している強さなのかもしれません。
取材・文 末吉陽子
前田 有一
映画評論家。東京都生まれ。紙媒体のコラムやTV番組で、新作から旧作まで、幅広いジャンルの映画の分析や解説を行っている。「ごく普通の人々のための、週末の映画選び」をコンセプトにしたWEBサイト「超映画批評」を運営。 【主な著書】 『それが映画をダメにする』/『どうしてそれではダメなのか。~日米中の映画と映画ビジネス分析で、見える世界が変わる』/共に玄光社
映画評論家。東京都生まれ。紙媒体のコラムやTV番組で、新作から旧作まで、幅広いジャンルの映画の分析や解説を行っている。「ごく普通の人々のための、週末の映画選び」をコンセプトにしたWEBサイト「超映画批評」を運営。 【主な著書】 『それが映画をダメにする』/『どうしてそれではダメなのか。~日米中の映画と映画ビジネス分析で、見える世界が変わる』/共に玄光社