足の健康を損ない災害時は危険!? 知っておくべき「上履き」のリスク

3万人以上の足をみた専門家・伊藤笑子氏に聞く「子どもの足育」#3~上履き編~

合同会社フェルゼCEO・マスターシューアドバイザー:伊藤 笑子

「見本」に流されない適切な上履きとは?

靴を指定していない場合でも、学校側が「見本」の上履きを示してしまうと、多くの保護者は疑いを持つことなく、それが指定であると認識して購入してしまいます。

足の健康に向き合って子どもの足に合った上履きを選ぶ場合、少しの勇気が必要そうです。シューズ選びと同様に、足にフィットするストレスフリーの上履きとは? 伊藤さんがおすすめする上履きの条件は次のとおりです。

・かかと部分がしっかりしている
・留め具(面ファスナーなど)がある
・靴底がペラペラすぎず簡単にねじれない
・足のゆびの付け根だけで靴が曲がる

いち早く避難できる? 災害時を想定した上履き選び

小児靴の専門家が何より懸念するのが災害時です。

「保護者の管理下にない状況で災害が起きたとき、定番の上履きでは避難できません」と伊藤さん。

走ると脱げそうになる、階段を早く下りられない、ガラス片が刺さる、水害では靴が脱げてしまう、などたくさんのリスクが想定されるそうです。

「現在の幼稚園や学校の昇降口は靴をきちんと履き替えるには狭すぎて、災害時には靴を履き替える時間さえありません。

上履きのまま外へ避難して、そのあと安全に避難し続けられるかどうかで生死を分けることもあるでしょう。2次災害に遭わせない靴を履かせるべきだということを、25年の講演活動で伝え続けてきました。

そのためには保育・教育者側の意識改革と、“みんなと同じ靴でなくてもいい”と思える保護者が増えることが必要です。そういう保護者が増えれば増えるほど、決められた靴ではなく、個々の足に合った靴を選択して使用するということがマイノリティではなくなっていきます」(伊藤さん)

足育講演で示す上履きの啓発ページ。  写真提供:伊藤笑子

伊藤さんが所属する日本フットケア・足病医学会では、2年前から「小児靴の手引書」を作成しています。今後、国に対し子どもの適切な靴の自由化を認めるよう働きかける予定です。

「自分の足に合った適切な靴を学校生活で自由に履けるということが近代社会では不可欠であることを、地域や立場を越えて広く知っていただきたいです」

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女性のパンプスやヒールの義務化への抗議として話題になった社会運動「#KuToo(クートゥー)」。

子どもの上履きにも同じことが言えそうです。「靴が子どもの足を育てる」という保護者の意識が、社会の大きなうねりになるかもしれません。

次回は子どもに伝えたい靴の履き方についてお届けします。

伊藤笑子(いとう・えみこ)
合同会社フェルゼCEO・マスターシューアドバイザー。新潟医療福祉大学大学院 修士課程修了。学術研究と3万人以上の子どものシューフィッティングおよび販売実績を持つ、日本における子ども靴のパイオニア。2016年「日独小児靴学研究会」を樹立。2020年、日本フットケア・足病医学会学術委員会「子供の足、靴改革ワーキンググループ」サブリーダーを受任。小児靴の手引き書・指針の作成に尽力し、その中心的役割を担う。

公式HP フェルゼオンライン 
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取材・文/大楽眞衣子

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いとう えみこ

伊藤 笑子

合同会社フェルゼCEO・マスターシューアドバイザー

合同会社フェルゼCEO・マスターシューアドバイザー新潟医療福祉大学大学院 修士課程修了。学術研究と3万人以上の子どものシューフィッティング実績および販売実績を持つ、日本における子ども靴のパイオニア。 1996年、インターネット上に「子どもの足と靴の相談室」を開設、国内初の専門サイトを公開。ドイツ靴医学に基づく健康靴店「フラウ」を開業。2016年、専門者養成と知識の標準化を目指す「日独小児靴学研究会」を樹立。2019年、合同会社フェルゼを設立、CEOに就任。2020年、日本フットケア・足病医学会学術委員会「子供の足、靴改革ワーキンググループ」サブリーダーを受任。小児靴の手引き書・指針の作成に尽力し、その中心的役割を担う。 ●公式HP フェルゼオンライン  ●facebook

合同会社フェルゼCEO・マスターシューアドバイザー新潟医療福祉大学大学院 修士課程修了。学術研究と3万人以上の子どものシューフィッティング実績および販売実績を持つ、日本における子ども靴のパイオニア。 1996年、インターネット上に「子どもの足と靴の相談室」を開設、国内初の専門サイトを公開。ドイツ靴医学に基づく健康靴店「フラウ」を開業。2016年、専門者養成と知識の標準化を目指す「日独小児靴学研究会」を樹立。2019年、合同会社フェルゼを設立、CEOに就任。2020年、日本フットケア・足病医学会学術委員会「子供の足、靴改革ワーキンググループ」サブリーダーを受任。小児靴の手引き書・指針の作成に尽力し、その中心的役割を担う。 ●公式HP フェルゼオンライン  ●facebook

だいらく まいこ

大楽 眞衣子

社会派子育てライター

社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーに。3人の育児で培った生活者目線を活かし、現在は雑誌やWEBで子育てや女性の生き方に関わる社会派記事を執筆している。大学で児童学を専攻中で、保育士資格を取得。2歳差3兄弟の母。昆虫好き。イラストは三男による「ママ」 ●公式HP「my luck」

社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーに。3人の育児で培った生活者目線を活かし、現在は雑誌やWEBで子育てや女性の生き方に関わる社会派記事を執筆している。大学で児童学を専攻中で、保育士資格を取得。2歳差3兄弟の母。昆虫好き。イラストは三男による「ママ」 ●公式HP「my luck」