子どもの近視はタダでふせげる! 台湾で実証された“2時間の外遊び“の効果とは? 専門医が解説
子どもの近視予防 #3~近視の予防と抑制~
2024.11.07
眼科医、医学博士、窪田製薬ホールディングスCEO:窪田 良
まず、結論から言って、子どもの近視は「予防」でき、そして「進行を抑制」できます。そもそも、近視は「目が見えづらくなってしまった状態」だと軽くとらえている方が多くいますが、私は「近視は病気」だと断言します。
なぜなら網膜剝離や緑内障など、将来的に失明につながる病気を生むリスクを高めてしまう、いわば「目の病気のもと」だということが、近年の研究によりわかったからです(詳細は4回目で解説)。
そして、近視は予防・抑制が可能な病気でもあります。近視治療についてお話しする前に、まずは台湾の画期的な事例からご紹介しましょう。
前回(#2)お話ししたとおり、アジア圏において子どもの近視は深刻な社会問題となっています。そのなかでも台湾の取り組みが近年評価されているのです。
台湾では2010年から、小学校で1日2時間程度の屋外活動を義務付けています。一度に2時間ではなく、休み時間の外遊びや運動を合わせて、合計2時間以上を屋外で過ごさせるカリキュラムを組んでいるのです。
近視の発症は、6歳から12歳ごろが多いのですが、この取り組みでは少しずつ子どもの近視が減り始めているという成果が出ています。2時間の外遊びが、近視の発症を防いだり、進行を遅らせたりする効果があると証明されたのです。
これは世界で初めての発見で、大きく注目されています。中国では子どもの近視対策として2021年から塾やゲームなどの規制を導入しましたが、これは台湾の大規模臨床試験結果に影響されたものです。
2019年には、WHO(世界保健機関)も視力に関する初めての世界レポートを作成。そのなかで「最も頻度の高い眼疾患である近視と、外遊びの重要性」を指摘しています。
なぜ外遊びで近視が抑制されるのか?
なぜ屋外での活動が目にとって良い影響を与えるのか、もう少し詳しく説明しましょう。
台湾でもっとも有名な眼科医の一人であるウー・ペイチャン医師は、「2時間ほどの屋外活動に、近視抑制効果がある」と発見。もともとは動物実験で、「強い光のもとで飼育した動物のほうが、弱い光の中で飼育されていた動物よりも近視になりにくかった」という結果が出て、それを子どもたちに当てはめてみたのが、前述の大規模臨床試験です。
分子的なメカニズムは解明されていませんが、目には光の暴露量が重要だということが考えられます。この、光の暴露量にくわえて屋外での活動では自然と遠くを見ることもでき、近視を進行させる「近見(きんけん)作業」(物を近くで見る作業)も避けられるのです。
具体的にどれくらい光がある屋外活動がいいかというと、目安としては、1000ルクス程度の明るさが推奨されています。この明るさは、晴れた日の窓際と曇りの日の窓際の中間くらいです。屋外であれば日陰であっても十分だと考えます。