親のがん「ママ死んじゃうの?」と聞かれたら 子どもの年代別伝え方を専門家が伝授
ホープツリー代表理事・大沢かおりさんに聞いた、がんになった親が子どものためにできること#3 子どもへの伝え方~年代別編~
2023.12.13
NPO法人ホープツリー代表理事:大沢 かおり
がんになった親がしてしまうNG行動とは
──子どもにがんであることを伝えた後、注意することはありますか。
大沢さん お子さんが何歳であっても、伝えた後にどうフォローするかはとても大切です。親御さんに気を付けていただきたいことがありますので、いくつかご紹介します。
①家庭内のルールを変えない
「親ががんになって、子どもがかわいそうだから」と、つい家庭内のルールをゆるめがちです。でも、ルールを変える必要はありません。
例えば、今までゴミ出しの担当だったのに、急に「やらなくていいよ」と言われたり、ゲームを何時間しても、夜遅くまで起きていても、何も注意されない。好きなものは何でも買ってくれる……このような状況では「どこまで許されるんだろう」と、子どもはかえって不安になりますし、社会性も育ちません。
子どもは、同じような毎日が続くことで安心感を覚えます。できる限り、今までどおりの生活を続けてください。
②症状を隠さない
年代別のポイントでお話ししたストレスサインが出ていないか、その兆候があるようなら「何か心配なことある?」などと声を掛け、お子さんのタイミングで話を聞いてあげてください。
特に思春期のお子さんでコミュニケーションが減っている場合、折にふれて声を掛け、会話のラインを途切れさせないようにしましょう。スマホでのメッセージのやり取りなども有効です。
体調が悪かったり、症状が悪化したりしても、「子どもが心配するから」と、説明をごまかさないほうがいいでしょう。親が何でも話してくれるとわかれば、子どもの心配はやわらぎます。
ただし、がんのことを打ち明けたからといって、がんの話題ばかりになるのは避けたいところ。がんになる前、ご家族でどんな話をしていましたか? 普段どおりの会話が、きっとお子さんや患者さん自身の癒やしになるはずです。
③「ごめんね」より「ありがとう」を伝える
「子どもに迷惑をかけてしまう」「寂しい思いばかりさせている」と、自分ががんになったことを責める親御さんはとても多いです。
「ごめんね」「申し訳ない」という気持ちになるのは、よくわかります。でも、親ががんになっても、子どもにとってマイナスなことばかりではありません。この経験から学ぶこともたくさんあるのです。
例えば、親のお世話をするときは「思いやり」を、家事を手伝っているときは「チームワーク」を、親がぎりぎりの状態でがんばっている姿に接するときは「柔軟性」を、それぞれ子どもは学んでいます。
大事な話をした後やお子さんの優しさに触れたとき、「ごめんね」ではなく、「ありがとう」「うれしいよ」と感謝の言葉を言うと、お子さんにより気持ちが伝わると思います。
④子どもに当たってしまったら、きちんと謝る
がんや薬の副作用からくる症状、倦怠感、さまざまなストレス、イライラは、本当につらいものです。それらの影響を決して過小評価しないでください。
もし、お子さんに当たってしまったら、きちんと謝りましょう。「がんのせいなのだ、私は精いっぱいがんばっている」と、自分を責めすぎないことも大切です。
大沢さん もし、親子だけではうまくいかなかったら、がんの親子のためのサポートプログラムやイベントに参加するのもひとつです。
私たちホープツリーでも、がんの親子のためのプログラム「CLIMB®(クライム)」を提供していて、子どもは自分の感情を理解し、表現したり、周囲の人々に伝えたりすることを学びます。患者さん本人やお子さんの状況に合わせて、上手に活用するといいですね。
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第4回は、大沢さんが実施している、がんの親を持つ子どもを支援する「CLIMB®プログラム」について、また、「CLIMB®プログラム」に参加した子育て中のがん患者さんの声をお届けします。取材・文/星野早百合
取材協力
●NPO法人ホープツリー
がんになった親とその子ども、家族を支援するため、医療ソーシャルワーカーや臨床心理士、チャイルドライフスペシャリスト、医師、看護師などが集まり、2008年に設立(2015年にNPO法人化)。2010年より、日本で初めてがんになった親を持つ子どものサポートグループ「CLIMB®」を運営。2022年、公益財団法人日本対がん協会より「日本対がん協会賞」(団体の部)受賞。
【関連サイト】
NPO法人Hope Tree HP
NPO法人Hope Tree Facebook
星野 早百合
編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。
編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。
大沢 かおり
医療ソーシャルワーカー、NPO法人ホープツリー代表理事。上智大学文学部社会福祉学科を卒業後、1991年より東京共済病院(東京・目黒区)に勤務。2007年、院内のがん相談支援センター専任のソーシャルワーカーに。 2008年、がんになった親とその子ども、家族をサポートするNPO法人ホープツリーを設立。国内で初めて、がんになった親を持つ子どもをサポートする「CLIMB®プログラム」を実施するほか、ホームページ上での情報提供や研修会を行うなど、支援活動を続けている。 過去に自らも乳がんを患い、最愛の夫を自死で亡くし、その経験が現在の仕事に生きている。 著書に『がんになった親が子どもにしてあげられること』(ポプラ社)。 NPO法人Hope Tree HP NPO法人Hope Tree Facebook
医療ソーシャルワーカー、NPO法人ホープツリー代表理事。上智大学文学部社会福祉学科を卒業後、1991年より東京共済病院(東京・目黒区)に勤務。2007年、院内のがん相談支援センター専任のソーシャルワーカーに。 2008年、がんになった親とその子ども、家族をサポートするNPO法人ホープツリーを設立。国内で初めて、がんになった親を持つ子どもをサポートする「CLIMB®プログラム」を実施するほか、ホームページ上での情報提供や研修会を行うなど、支援活動を続けている。 過去に自らも乳がんを患い、最愛の夫を自死で亡くし、その経験が現在の仕事に生きている。 著書に『がんになった親が子どもにしてあげられること』(ポプラ社)。 NPO法人Hope Tree HP NPO法人Hope Tree Facebook