ランドセルの子は乗せちゃダメ? ママチャリ「2人乗り」に潜む「青切符」と「事故」のリスク

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そのベル、本当に使っていい? “あるある”に潜む違反

提供:papico/イメージマート
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自転車で歩道を進んでいたら、途中でママ友に会い、そのまま横並びでペダルをこぎながらおしゃべりに花を咲かせて……。それにしても、横2列でゆっくり歩く歩行者がもどかしい。チリンチリンとベルを鳴らして、先へ先へ──。

こんなシチュエーションも“ママチャリあるある”ですが、ここにも違反行為が2つ潜んでいます。

「自転車で横並びになって進むことは、原則として禁止されています。『並進可』の標識がある道路では認められる場合もありますが、普段の生活道路や歩道では避けるべき。並進の相手がお子さんでも同様です。縦1列になって進みましょう」

いわゆる“並走”は、並進禁止違反に当たり、反則金は3,000円。

そしてもうひとつは、多くの人が意外に思う行為です。

「自転車についている警音器、つまりベルは、何のためのものかご存じでしょうか。勘違いしている人がとても多いのですが、これは見通しの悪い交差点などで、自分の存在を周囲に知らせるためのものです。ですから、前に人がいて危ないからといって、“どいてもらうため”にチリンチリンと鳴らすのは基本的にNGなんです」

歩行者に向かってベルを鳴らす行為は、警音器使用制限違反にあたり、これも反則金は3,000円。ベルは、「自転車が来たので道をあけてください」という合図ではありません。歩道では歩行者が優先されるため、自転車の側が速度を落として進む。あるいは、必要なら止まって待つのが基本です。

「どうしても、というときは、ベルを鳴らすのではなく、『ちょっと通してください』などと声をかけるほうがいいでしょう」

「ベルまでダメなの?」とギョッとした人もいるかもしれません。けれども、歩道はあくまで歩行者のための場所。そう考えると、「ベルを鳴らして、歩行者に道をあけさせる」のはルール違反であることも、納得がいくのではないでしょうか。

“ただのママチャリ”では済まない! 事故と備えのこと

またひとつ、クイズです。

自転車で歩道を走っていて、歩行者の脇をすり抜けたその瞬間、歩行者が驚いたのか、よろけて転んでしまいました。自転車は、歩行者にぶつかったわけでも、かすったわけでもありません。

この場合、自転車に責任はあるのでしょうか?

「直接、歩行者の身体に触れていないからセーフ、というわけではありません。警察庁交通局が発行している自転車ルールブックには、歩道をスピードを出して通行し、歩行者を驚かせて立ち止まらせた場合なども、取り締まり(青切符)の対象になる場合があると明記されています」

山口さんは、ぶつかっていなくても、歩行者が転倒した理由が、徐行せずに走る自転車に驚いたことにあるなら、自転車側の責任が問われても不思議ではないと話します。

「今、お母さんたちがよく乗っている電動アシスト自転車は、車体だけで40キロくらいあります。乗る人の体重が40キロくらいだとすると、それだけで80キロ。お子さんを乗せて、荷物も積めば、100キロくらいにもなるんです」

▲子ども乗せシート付きの電動アシスト自転車
▲子ども乗せシート付きの電動アシスト自転車

「そのママチャリが、歩行者の間を縫うように進み、杖をついた高齢者や、よちよち歩きの乳幼児のすぐ脇を、かなりのスピードで通り抜けていくのを見かけることも少なくありません。ひやりとしますよね」

重いママチャリがすぐ脇を通るだけで、歩く側には大きな恐怖です。ほんのわずかな接触でも事故につながりかねず、車体が触れていなくても、ハンドルに下げた荷物が当たっただけで事故になることもあります。

たかが自転車と思うかもしれませんが、事故が起きた場合、高額賠償の発生も否定できません。実際、2013年には、男子小学生が起こした事故をめぐり、保護者に約9,500万円の賠償が言い渡された判決もあるほどです。

「だからこそ、ルールを守って事故を起こさないことが一番ですが、万が一ということも考えられますから、自転車保険への加入も大事です」

「東京都をはじめ、自転車利用者に保険加入を義務づけている自治体もあります。火災保険や自動車保険、個人賠償責任保険などで補償されているケースもあるため、自分や家族がどんな補償に入っているのか、一度確認しておくと安心です。そして、必要に応じて、補償内容や補償額の見直しも考えたいところです」

2026年4月から始まる青切符制度の目的は、自転車をことさらに取り締まることではなく、事故を防ぐことにあります。「見つからなければラッキー」という話ではないのです。

忙しい毎日の中で、つい急いでしまう。そんな“いつもの運転”が、歩行者を危険にさらし、自分自身の事故にもつながりかねません。子どもの送迎も買い物も、安心して続けていくために、ルールを知り、歩行者にも自分にも安全な乗り方を心がけたいものですね。

取材・執筆/佐藤美由紀
撮影/柏原力

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佐藤 美由紀
さとう みゆき

佐藤 美由紀

Miyuki Satou
ノンフィクション作家・ライター

広島県福山市出身。ノンフィクション作家、ライター。著書に、ベストセラーになった『世界でもっとも貧しい大統領 ホセ・ムヒカの言葉』のほか、『ゲバラのHIROSHIMA』、『信念の女 ルシア・トポランスキー』など。また、佐藤真澄(さとう ますみ)名義で児童向けのノンフィクション作品も手がける。主な児童書作品に『ヒロシマをのこす 平和記念資料館をつくった人・長岡省吾』(令和2年度「児童福祉文化賞」受賞)、『ボニンアイランドの夏:ふたつの国の間でゆれた小笠原』(第46回緑陰図書)、『小惑星探査機「はやぶさ」宇宙の旅』(第44回緑陰図書)、『立てないキリンの赤ちゃんをすくえ 安佐動物公園の挑戦』、『たとえ悪者になっても ある犬の訓練士のはなし』などがある。近著は『生まれかわるヒロシマの折り鶴』。

広島県福山市出身。ノンフィクション作家、ライター。著書に、ベストセラーになった『世界でもっとも貧しい大統領 ホセ・ムヒカの言葉』のほか、『ゲバラのHIROSHIMA』、『信念の女 ルシア・トポランスキー』など。また、佐藤真澄(さとう ますみ)名義で児童向けのノンフィクション作品も手がける。主な児童書作品に『ヒロシマをのこす 平和記念資料館をつくった人・長岡省吾』(令和2年度「児童福祉文化賞」受賞)、『ボニンアイランドの夏:ふたつの国の間でゆれた小笠原』(第46回緑陰図書)、『小惑星探査機「はやぶさ」宇宙の旅』(第44回緑陰図書)、『立てないキリンの赤ちゃんをすくえ 安佐動物公園の挑戦』、『たとえ悪者になっても ある犬の訓練士のはなし』などがある。近著は『生まれかわるヒロシマの折り鶴』。