モデル・益若つばさ×漫画家・蒼井まもる 性教育に「早すぎる」はありえない
特別対談+漫画『あの子の子ども』無料試し読み
2022.05.13
2021年、避妊リング(ミレーナ)を入れたことを公表して話題になったモデルの益若つばささん(36)。高校生の妊娠をめぐる物語『あの子の子ども』を別冊フレンドで連載中の漫画家・蒼井まもるさん。母親でもある2人の対談から、子どもへの性教育のあり方が見えてきました。
お風呂の中でゲーム感覚で教えている
益若つばさ:私には中学生の息子がいるのですが、実はそこまで改まって性教育をしようとはしていません。親があまりかしこまって話そうとすると子どももびっくりしてしまうと思うので。
一方、私の周りにはゲイやレズビアンの友達が当たり前のようにいて、その子たちと息子と私が一緒に食事をしたりする場はよくあるんです。そんな中で、息子はLGBTQの方々について当たり前のように学んでいますし、性についてオープンに語っていいんだという雰囲気は伝わっていると思います。
蒼井まもる:私には3歳の娘がいるのですが、特に意識しているのは「性教育=人権教育」だということです。どうしても性教育というと恥ずかしいことというイメージがありますが、そうではなくて娘が自分自身の身体や心を守るために何を教えられるかという視点で考えています。
例えば最近だと、お風呂のときに「水着ゾーン」と呼ばれる他人に触らせてはいけない部分について教えています。「ここは触らせていいんだっけ?」という私の質問に娘が「だめー!」と答える、というようにゲーム感覚で楽しく覚えてもらっています。
益若:うちの息子とは、生理の話も当たり前にしています。私は今でこそ避妊リング(ミレーナ)を入れて、生理がだいぶ楽になりましたが、もともとは生理がかなり重いほうで、かつ不定期にやってきていました。
以前、六本木ヒルズを歩いていたら急に生理が始まって、量も多いのでナプキンを買いに歩いていくことすらできないことがあったのですが、そのとき、一緒にいた息子と大人の友達が「買ってくるよ」と言ってコンビニにナプキンを買いに行ってくれたんです。
私たちの世代では学校での性教育も男女別々に行われていたりして、男性が生理について知る機会も少なかったと思うのですが、これからは男性も生理について知って、いざというときに女性を助けられるようになってほしいなと思います。
親同士でも性教育の話題が出るようになった
蒼井:性教育に対する価値観は、ここ1~2年で大きくアップデートされているなと社会の動きを見ていて感じます。私も娘が1〜2歳のときにいろいろ調べて知り始めた。
実際に幼い子どもへの性教育に関する絵本も色々と出版されていますし、YouTubeでは子どもが観て性について正しく学べるアニメも配信されていたりします。
そういったコンテンツを通して、娘には「自分の身体を自分で守る」「自分の身体に対して他人からされて嫌なことには、はっきりノーと言っていいんだよ」ということを教えています。
親同士でも、「この絵本良かったよ」などと性教育についての話題が出ることもあるので、みんな関心を持ち始めているのだと感じます。
益若:たしかに昔に比べて「性教育」というワードを耳にする機会も増えました。私の息子が赤ちゃんだったときは、子育ての中で「性教育」というワード自体を聞いたことがなかった。
一方で、「臭いものには蓋をしよう」という風潮も現代の日本には根強くあると思っています。
性の話題もそういった扱いをされがちで、子どもたちに性教育を施すことは「寝た子を起こすからやめたほうがいい」と言う大人たちもいますよね。
それなのに、大人になった瞬間に「結婚はまだ? 子どもは産まないの?」と聞かれるようになる。それは矛盾しているなと感じます。セックスや避妊・妊娠などの問題はいつかほとんどの人が直面することですしね。
性教育も、それぞれの年齢に合った内容があるので、早すぎるということはないですよね。年齢によって教えられることがあるし、知っておければ避けられるいろんな危険があります。小さい子どもに教えるということは、いい流れだと思います。
性を知ることは選択肢を知ること
蒼井:『あの子の子ども』はいかがでしたか。
益若:性教育のお話しだと聞いていたので、エピソード的に硬い内容なのかなと思ってたけど、子どもが読んでもわかるし、私たち大人も知らなかったような知識も細かく書いてあって、面白かったです。セリフも素敵で、私好みでした。
これこそが子どもたちに性教育を施す意味だと印象的だったのが、宝の「選択肢をたくさん用意する。どんな選択をしても一生一緒に背負っていく」というセリフです。
益若:「これはいい」「これはだめ」とかいろんな正義があると思うんですけど、そもそも産む前に選択肢を与えられなければ福はきっと中絶していたと思うんです。でも、選択肢を提示されると「産めるかも」と思える。