【小1トイレの壁】「和式トイレの使い方」を小学校入学前に知っておくべき「これだけの理由」
小1トイレの壁#1~和式トイレ~ 洋式化率1位・富山県:86.5%〜最下位・山口県:47.2%
2024.03.28
ライター:大楽 眞衣子
4月から小学1年生になる子どもとその保護者にとって、心配事のひとつが学校のトイレではないでしょうか。「授業中にトイレへ行きたいってちゃんと言える?」「学校の和式トイレは使えるだろうか?」など、モヤモヤしていませんか。
公立小学校のトイレの洋式化が進んだとはいえ、地域差は大きく、まだ半数以上和式の学校もあります。保育所や幼稚園とのギャップに戸惑わないために、入学前に知っておきたいトイレの情報を集めました。
※1回目/全2回
「洋式化7割」は一律ではない! まだほとんど和式の小学校も
街ではほとんど見かけなくなった和式トイレ。家庭や商業施設だけでなく、駅や高速道路のSA(サービスエリア)、公園のトイレまでも照明、洗浄が自動化した洋式トイレが増えています。最近の学校トイレ事情はどうなっているのでしょうか。
文部科学省が2023年9月に発表した統計によると、公立小中学校トイレのうち洋式は68.3%となり、和式31.7%を大きく上回りました。政府は2025年度までに学校トイレの95%洋式化を目指しています。
この統計を見て「順調に洋式化が進んでいるので和式トイレの練習はしなくていいかな」と思いきや、学校によって大きな格差があると専門家は言います。
「数字だけ見ると7割は洋式になって、和式はあと3割でもうひと息という印象を受けますが、100%洋式の学校がある一方で、ほとんどが和式で洋式は1つという学校もあります。一律で7割進んでいるわけではありません。まだまだ洋式化が進んでいない学校のトイレの整備を進めてもらいたいです」
と話すのはトイレ関連企業でつくる「学校のトイレ研究会」事務局長の冨岡千花子(とみおか・ちかこ)さんです。同研究会の調べでは、トイレ内で最も汚れがひどい部分は和式便器まわりの床で、トイレの悪臭の原因となることが分かっています。
衛生面や感染予防の観点からも全国一斉に洋式化が進むことが望まれますが、トイレの改修には大規模な予算と時間がかかるため、なかなか速やかには進まず、都道府県や自治体格差があるのが実状です。
洋式化率がもっとも低い都道府県は山口県(47.2%)、次いで島根県(48%)となっていて、洋式化率1位の富山県(86.5%)、2位の東京都(82.2%)と比べると、大きな開きがあります。
これから通う小学校によっては、和式トイレを日常的に利用することになるかもしれません。校舎のトイレが洋式でも、運動場のトイレは和式という学校もまだまだ多いです。
新しい学校でもあえて和式を設置?
新設や改修する学校でも、あえて一部に和式トイレを導入する学校もあります。
同研究会はトイレの汚れや悪臭の原因は和式にあるとして洋式化を呼び掛けていますが、2023年に行った全国自治体アンケート調査によると、今後のトイレ整備は「すべて洋式化」と答えた自治体は53%に留まりました。
各階・各トイレに1ヵ所和式をつくる方針の自治体も1割はあります。これには多様性への配慮や教育的な理由があるようです。
「新しい学校や改修する学校はかなり洋式化の方針にはなっていますが、あえて和式を残す方針のところもあります。ごく少数ですが和式を好むお子さんもいるからだそうです。保護者や教職員から要望がある場合もあります。
考え方はそれぞれですが、和式の使い方だって知っておいたほうがいいという『教育的観点から和式を』といった理由なら、そのために6年間、中学校も含めると9年間毎日そういう環境にいる必要性があるのかという疑問は少し残ります。講座を開いて教える程度でも子どもは覚えてしまいますから」(冨岡さん)
和式の練習は必要! 使い方を知っておくべき理由
そもそも状況によっては和式しかない場合もあります。
「息子が1年生のとき、食べに行った蕎麦屋のトイレが和式しかなくて危うくがまんの限界に達しそうになりました」と打ち明けるのは小学生の男の子を育てる都内在住の40代男性です。
「子どもが半泣きで『もう無理』と言ってあせっていたら、店員さんのご厚意で隣接しているご自宅のトイレを借りられました。いざというときに和式でできないというのはやはり問題だなと思いました」と振り返ります。
いざというとき、和式トイレの使い方が分からないと次のような困りごとが考えられます。
・トイレをがまんして便秘、膀胱炎になる
・座る向きがわからず、反対を向いてしゃがんでしまう
・座る位置が分からなくて床を汚してしまう
・ズボン・パンツの下ろし方が分からない
・低い位置のフラッシュレバーをうまく押せず流せない
・かかとをつけてしゃがめなくてふらふらする
保健室の先生として30年以上のキャリアを持つ養護教諭の渡邊真亀子(わたなべ・まきこ)先生も、入学前の和式練習を勧めます。
「学校もそうですが、山登りをしたり、災害に遭ったりして和式しかない環境に置かれることもあるかもしれません。新1年生にはぜひ入学前に和式トイレの練習をしてほしいです」
と呼び掛けます。近所に和式トイレがない場合はどうすればよいのでしょうか。
「段ボール箱で和式トイレのような形を作って、『こうやってしゃがむんだよ』と教えてあげます。足を置く場所も作ってあげると分かりやすいです。実際に用を足す練習までできませんが、洋式とは勝手が違うのでパンツの上げ下ろしまで事前に教えてあげたほうが安心です」(渡邊先生)
洋式トイレの場合も、大人用を使い慣れていない場合は入学前に練習しておきたいところ。保育所などでは小さな便器を使っているところが多く、自宅でも補助便座を使っている子はお尻がすっぽりはまってしまう場合もあると前出の冨岡さんは指摘します。
「ほとんどの学校の便座の穴の大きさは、大人用と同じサイズです。小柄な子はお尻がはまりやすく、つま先しかつかない子もいます」(冨岡さん)
「流す」の自動化に慣れている子は手動で流す練習を
家庭用トイレの場合、暖房便座や温水洗浄便座、照明・洗浄の自動化が増えていますが、これらの機能は付いていない学校トイレが大半を占めます。
温かい便座に慣れている子は、冷たさに驚くかもしれません。特に流し忘れは多く、「授業中に校長先生がトイレを流して回る」という小学校もあるほど。流し忘れは悪臭の原因になるため、入学前からおうちのトイレの自動化スイッチを切って練習することも有効です。
「トイレは自分で流すものだよ、と教え、入学の2週間前あたりから自動洗浄のスイッチを切って練習するのもいいと思います」(渡邊先生)
とはいえ、学校トイレ環境は親世代が子どものころと比べてかなり改善されてきています。改修されたトイレは壁色や照明で明るいイメージになったり、床は水をまかない拭き掃除「乾式清掃」に切り替えたりして、臭いの問題も改善してきています。
「学校トイレを敬遠する子もいますが、ぜひ親御さんから『トイレで用を足すことは体にとって大切なこと』と教えてあげてください。そしてうまくできたら、たくさん褒めてあげてください」(冨岡さん)
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一生に関わってくるトイレ習慣。次回は入学前に整えておきたい朝の排便習慣などについてお届けします。取材・文/大楽 眞衣子
※小1トイレの壁は全2回(公開までリンク無効)
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●関連サイト
学校のトイレ研究会
大楽 眞衣子
社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーに。3人の育児で培った生活者目線を活かし、現在は雑誌やWEBで子育てや女性の生き方に関わる社会派記事を執筆している。大学で児童学を専攻中で、保育士資格を取得。2歳差3兄弟の母。昆虫好き。イラストは三男による「ママ」 ●公式HP「my luck」
社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーに。3人の育児で培った生活者目線を活かし、現在は雑誌やWEBで子育てや女性の生き方に関わる社会派記事を執筆している。大学で児童学を専攻中で、保育士資格を取得。2歳差3兄弟の母。昆虫好き。イラストは三男による「ママ」 ●公式HP「my luck」