〔竹富島〕授業でモズク採り、遠足で隣の島へ! 地域に開かれた島の学校生活
首都圏から竹富島へ移住! 島暮らしの子育てと学び【05】
2021.09.06
東京で育ち、結婚後は子ども3人&夫の5人家族で神奈川県に暮らしていたライター・片岡由衣さん。夫の仕事都合で、2019年春に人口約300人の小さな離島・竹富島(沖縄県八重山郡)へ引っ越してきました。
島での暮らしは、驚きや学びがいっぱいだそうです。
今回は、学校生活の様子を教えてもらいました。島の学校生活は、それまで子どもたちが通っていた首都圏の小学校とは異なる点がたくさんある、と言います。いったいどのようなものなのでしょうか。
小規模校だからこそ成長がよく見える
長男と次男の通う島唯一の小学校は、小中併置校です。2019年4月に転入したとき、小中学生合わせて30名ほどの子どもたちが通っていました。
小学3年生に進級した長男は、3人の3年生と3人の4年生、合計6人のクラスに転入しました。
離島にあるような少人数の学校では、複数の学年をひとつのクラスにまとめる複式学級が一般的です。複式学級の場合、1人の担任の先生が授業を行い、教室の前で3年生が、後ろで4年生が授業を受けるケースが多いようです。
ただ、島の学校では、先生が多くいる小中併置校の利点をいかし、なるべく3・4年生それぞれで授業を分けていました。
例えば、理科の授業を4年生は担任が受け持ち、3年生は中学校の先生が見たり、算数は担任とは別の先生から教わったり、といったことがありました。小学生でも、教科によって教える先生が変わるのです。
引っ越した当初、3歳の娘と散歩に出かけ、学校の校庭に立ち寄っていました。竹富島には、一般的な遊具のある公園がないため、校庭が子どもたちの遊び場のひとつになっています。
ある日、生徒たちのジャマにならないよう、体育館の裏側で娘と過ごしていると、楽しそうに長男と友達が近づいてきました。
「何してるの?」長男が声をかけてきました。
「散歩してて学校行きたいって言うから来てみたよ。みんなは何してたの? 休み時間?」
「理科の授業中だよ! みんなで学校の生き物を探しているの!」
すると長男を教えてくれている理科の先生がやってきました。この先生は中学校の先生です。
「こんにちは。今みんなで虫眼鏡を持って、生き物を探しているんです」
「セミの抜け殻、見つけたよ!」少し離れたところから、同級生の子が言います。
「ずいぶん小さい抜け殻!」
その抜け殻は初めて見るほど小さく、小指の先ほどのサイズです。驚いていると、「イワサキクサゼミ」という日本最小のセミだと教えてもらいました。
小学3年生という学年は、2年生まで「生活科」だった授業が「理科」「社会」に分かれ、勉強がより複雑になっていきます。3年生から転入した長男の場合、引っ越す前は20人以上の生徒がいるクラスだったため、環境や友人関係までもが大きく変化しました。
授業を楽しめているかな? 学校でうまくやれているかな? と少し心配に思っていましたが、中学校の先生から少人数で教わる、和気あいあいとした様子にほっとしました。
学校行事でもずく採り 遠足は隣の島へ
ある日、帰宅した子どもたちが持ち帰ってきたのは「もずく採りのお知らせ」。学校行事でもずく採り!? 東京の小学校に通っていた私たち夫婦は驚きました。
竹富島では、3月下旬〜4月になると海で天然のもずくが採れ、年に1度、学校のみんなで採り、塩をもみ込んで保存し、給食で使います。
もずく採りの授業の日、3年生以上は自転車で、低学年は先生たちと車に乗って、学校からおよそ800m離れた西桟橋へ向かいます。様子を見にいくと、入学したばかりの1年生の次男が、中学生の子と手をつないで海の中を進んでいました。
授業参観でもないのに、日常のふとした瞬間に子どもたちの学校生活にふれる機会があり、地域に開かれている学校の良さを感じます。
2019年の遠足は、小学生全員で隣の石垣島へ行きました。2020年は小浜島(こはまじま)へ行き、島の方にお話を聞いたり馬に乗せてもらったりしたそうです。
そして今年、2021年は世界遺産認定でも話題の、西表島(いりおもてじま)へ。そこから水牛車で海を渡っていく小さな島、由布島(ゆぶじま)にも行きました。
小浜島や西表島は、竹富島の周りにある有人離島で、住所は竹富島と同じ「竹富町」になります。竹富島からは一度石垣島へ船で渡る必要があり、あまり気軽には行けません。
同じ町内で、竹富島の海の向こうにうっすらと見える場所。町内なのに海を渡るなんて! と全てが新鮮。遠足や行事のときは、同じ町内の学校と交流することもあるようです。