PTAを魔界から大人の原っぱへ!PTA会長1000日間で政治学者が見たもの
政治学者・岡田憲治さん「PTAの手引き」リアルエピソード編#6〜人が集う楽しいPTAとは〜
2022.06.17
政治学者:岡田 憲治
東京都の世田谷区立弦巻(つるまき)小学校にてPTA会長を3年務めた、政治学者で専修大学教授の岡田憲治さん。2022年2月に出版された『政治学者、PTA会長になる』(毎日新聞出版刊)では、ご自身がPTA会長として活動された3年間=約1000日を振り返っています。
「僕がやったのは派手な改革じゃないんです。みんなを信じて、いい循環になるように空気を変えて、それを回しただけです」と、謙遜する岡田さん。
「畑でいうと、土壌を掘って畝(うね)をつくり、水をあげて太陽を浴びせて風を通した。そうしたらどんな種を植えても元気に育つんですよ」と、笑います。
ポジティブなモチベーションを保ち、みんなが元気なPTAへと変貌した弦巻小学校の1000日を覗いてみましょう。
※全6回の回目(#1、#2、#3、#4、#5を読む)
「PTAってそういうもんなんだよ」からの脱却
岡田さん初めてのPTA体験は、息子さんが小学校2年のときのPTAと地域の共催イベントへの参加でした。保護者たちと楽しくわいわい終えた行事でしたが、ここがPTAについて深く考えるきっかけとなったのです。
「PTAが作ったという当日配布された見取り図に、ご丁寧に《傘置き場》まで描かれている。『……すげぇなぁ。なんか』って呆気(あっけ)にとられて」(岡田さん)
さらには、その行事のあとに保護者たちと打ち上げで呑んでいたら、一人のママからとんでもない話を聞かされることに。
「『◯◯君のママは、PTAのパン係反省会があって下の子の保育園の運動会観に行けなかったんだって。なんか泣いてた』と……。
子どもを楽しませるために頑張って、何を反省することがあるんだ、と憤(いきどお)りましたよ。それからみんな、どうして『そんなことムダなこと止めましょう』って誰も言わないのか。そんなのおかしいですよ」(岡田さん)
周囲のママたちに言わせると「でもさぁ、PTAってそういうもんなんだよ」との返事。義憤(ぎふん)に駆られた岡田さんは翌年、選考委員たちから強く推されて会長に就くこととなったのです。
大人はみんな不安と戦っていた
「意味がなくて、誰も幸せになっていないことはすべてやめようと思ったんです」と岡田さん。しかし、スリム化の目標を掲げて動き出した岡田新会長の前に置かれたのは、引き継ぎに5時間はかかるという分厚い資料でした。
「あ然としましたね。どうして『今年は自分たちで考えればいいよね!』とできないのだろう。自分の頭で考えて、声を上げることがなかなかできない。失敗も怖いし、要するにみんな《不安》なんです」(岡田さん)
みんなが抱えるキーワードが《不安》だということに気がつき、だったら徹底的にそれに寄り添ってみようと試みます。