子どもを助ける「問題と解決の三角形」 経営学者が小学生に伝授する「経営」の知恵

経営学者・岩尾俊兵先生に聞く、「6歳から学べる経営」 #2 問題解決の三角形と金融教育について

慶應義塾大学商学部准教授:岩尾 俊兵

慶應義塾大学商学部准教授の岩尾俊兵先生。著書『13歳からの経営の教科書』が話題を集めています。

慶應義塾大学商学部准教授・岩尾俊兵先生に聞く、「6歳から学べる経営」。

1回目では、なぜ経営を学ぶことが、今の子どもたちに必須なのかをお話しいただきました。

2回目では、経営の第一歩を、「三角形」を使って学ぶ方法と、最近耳にする「金融教育」についてのご意見をお聞きします。

(全4回の2回目。1回目を読む

岩尾俊兵(いわお・しゅんぺい)
慶應義塾大学商学部准教授。平成元年、佐賀県生まれ。父の事業失敗のあおりを受け高校進学を断念。中卒で単身上京。陸上自衛隊、肉体労働等に従事した後、高卒認定試験(旧・大検)を経て、慶應義塾大学商学部卒業。東京大学大学院経済学研究科マネジメント専攻博士課程修了、東京大学史上初の博士(経営学)を授与される。

「問題解決の三角形」

──1回目は、経営とは何かをお話しいただきました。2回目では、どのようにして子どもたちが「経営」を身につけられるのかお聞きしたいと思います。

岩尾俊兵先生(以下、岩尾先生):まず、こちらの図を見ていただけるとわかりやすいです。これは「問題解決の三角形」という私が作った図です。

資料提供:岩尾俊兵

岩尾先生:1回目でお話ししたように、大勢で何かをしようとすると、誰かと誰かの考えが対立したり、あるいは自分の中での2つの考えが対立したりすることがあります。ただ、そこには「共通の目的」というのが必ず存在します。

例えば、AちゃんはBちゃんと二人だけで遊びたいと思っています。でもBちゃんはみんなで遊びたい。これを先ほどの左側の「問題の三角形」に当てはめてみると、Bちゃんからの見方がわかります。

〔Bちゃんの問題の三角形〕
(抽象的な悩み)…Aちゃんとの意見の違い
(具体的な対立する考え)左…Aちゃんは自分を独り占めしたい
(具体的な対立する考え)右…みんなで遊びたい

ここで、Aちゃん、Bちゃんの共通の目的を考えてみます。少し大きく捉えると、必ず何か出てきます。ここでは「楽しい学校生活」ですね。

そしてこれを右の「解決の三角形」の頂点の(抽象的な目的・幸せ)に書いてみましょう。

左の三角形だと、悩んだり喧嘩したりで終わってしまうけれど、解決の三角形に「楽しい学校生活」という目標を設定すると、「なぜ独り占めすると、楽しくなるのか」と考えます。

Aちゃんに聞いてみると、「自分の居場所が作れる」「自分を尊重してもらえる」「もっと深くBちゃんと仲良くなれる」と答えます。そう、自分の居場所があって、尊重されて、深く仲良くなれる。だから楽しい学校生活があるんですね。

これを右の三角形の左下に書いてみます。

一方の「みんなで遊ぶ」も論理的に正しく、Bちゃんとしては、「いろんな遊びができる」「友達が増える」だから楽しい学校生活がある、となるわけなので、つまり右側の三角形は

〔Bちゃんの解決の三角形〕
(抽象的な目的・幸せ)…楽しい学校生活
(具体的な寄与・役立ち)左…自分の居場所が作れる・自分を尊重してもらえる・深く仲良くなれる
(具体的な寄与・役立ち)右…遊びの幅が広がる・友達が増える

こうすると、左の三角形には対立と悩みしかありませんが、右の三角形だったら悩んでも答えが出てきますよね。例えば、「遊びの幅が増えて、友達も増えて、かつAちゃんが尊敬される」ような遊びを考えたとき、たとえば「最初にAちゃんが主役になるような遊び」をしてもいいわけです。

解決不可能に見えるような、喧嘩をするしかないというところにも、考え方次第で別のアイディアが出せるし、そもそもやりたかったことがお互いにできるんです。

さらにAちゃんが本当に求めていたことは、私・Bちゃんと必ずしも四六時中一緒にいることではないか、と気づくこともできる。Aちゃんだって、尊重されつつ、もっと多くの友達ができれば嬉しいかもしれないですよね。みんなが幸せになれる解決策を思いつく「経営」の考え方は、みんなと仲良くする技術だと私は思っています。

「経営の考え方は、お金だけでなく仲良くする技術です」(岩尾先生)。

三角形は生活のさまざまな場で活躍する

──岩尾先生は、小学校でこうした経営の考え方を学んでほしいと望んでいらっしゃるということでしょうか。

岩尾先生:はい、この三角形は、友達関係だけでなく、学校での日常である係活動や部活動、それから受験などいろいろな場面で使うことができます。小学校ではぜひ、この考え方が身につく教育をしてほしいなと思っています。

最近は、「金融教育」という言葉をよく耳にしますが、あれは完全にお金の教育だけで、経営教育とは全く違うものなんです。そして、子どものころからお金に憧れさせると、人ではなくて、お金を集めればビジネスはうまくいくという、間違った感覚に陥ってしまいます。それは本当に根本から間違っていると思っています。

デフレ下だと、お金というものが貴重になるため、お金を集める人が脚光を浴びます。最近の経営者のイメージは特にこれですよね。

実は、お金が貴重というのは、人類史の中の、ごくごく特殊な状況だけで成り立っている現象なんです。

それとは逆に、人が集まることで会社として圧倒的な力を持っていく経営者もいます。
例えば、『Panasonic』の創業者・松下幸之助さんを例に挙げてみましょう。
松下さんの場合、松下さんのもとで働きたいから、人が集まり、会社の力も大きくなっていく。このような、どんどん人が集まって、一緒に働いて、自分の力だけではできないことを実現できる経営の教育を、先ほどの三角形の考え方を使いながら、教育の場で子どもたち全員に身につけてほしいですね。

ちなみに、私が作ったこの三角形は、イスラエルで教育されている問題解決クラウドという問題解決手法をさらにわかりやすく改良したものです。エリヤフ・ゴールドラットというユダヤ系の経営学者の一生分の研究結果のまとめとも言えます。

イスラエルでは、未就学児からこうした方法を技術として学んでいます。だから経営の考え方は、小学生や未就学児で習得できないはずのない技術だと、私は思っています。

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次回3回目では、日本でも著書が大人気となった経営学者、ピーター・ドラッカーの一生分の研究結果を岩尾先生がまとめて作った「七転八起の四角形」を使いながら、先生に6歳からの経営技術のもう一つの学び方を教えていただきます。

撮影/日下部真紀
取材・文/浅妻千映子

岩尾先生の6歳からの経営学は全4回。
1回目を読む。
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4回目を読む。
(※3回目は2023年10月22日、4回目は10月23日公開。公開日までリンク無効)

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『13歳からの経営の教科書 「ビジネス」と「生き抜く力」を学べる青春物語』(KADOKAWA)著・岩尾俊兵
いわお しゅんぺい

岩尾 俊兵

Iwao Shumpei
慶應義塾大学商学部准教授

慶應義塾大学商学部准教授。平成元年佐賀県有田町生まれ。父の事業失敗のあおりを受け高校進学を断念。中卒で単身上京。陸上自衛隊、肉体労働等...