裁縫できて料理上手で…お受験ママのトップ“聖母ママ”の正体はリサイクル&冷食?

庶民嫁が見た! 受験本ではわからないTOKYOお受験の裏側⑥

ライター:華子

例年、小学校お受験界の5〜6月は学校説明会のピーク。2021年、コロナ禍の現在はオンライン開催が増加している。
写真:アフロ

中流家庭からプチセレブ一家へ嫁いだライター・華子。愛娘は自分と同じ普通コースで育てようと思っていたものの、義母の一言から、小学校受験への道が始まりました。
まったく未知だった東京のお受験は、庶民にはわからないことだらけ! 受験マニュアルには決して書かれていない(書けない)、お受験の赤裸々な裏話をお伝えします。

第6回は「お受験ママの真の姿」編です。

お受験界が目指すママは“上級家庭科”をこなす「良妻賢母」

皆さんは「お受験ママ」と聞くと、どんな母親像を思い浮かべますか。
私は自身で経験するまで、お受験ママとは、家事・育児全てを粛々と完壁にこなす“優等生ママ”のイメージでした。

しかし、いざ自分がその立場になってみると、愛情を込めた手作り料理はファミレスに完敗し、情操教育のために行った自然体験は“一家全員インドア派”だと判明しただけ。“優等生ママ”とはほど遠い何ともお粗末なポンコツママだったのです。
 ➡︎ポンコツママだと分かった、第5回『小学校お受験の模擬試験「面接」対策とは?』を読む

そもそも私の育った世代は「男女平等」「女も働く時代」などといわれ、家庭科は授業でかじった程度。卒業後は仕事中心になり、99%外食。ほぼ働く男子と同じ道を歩んできた私にとって、家事なんて結婚してからが初めて。それも育児と同時にやってきたのだから、毎日が悪戦苦闘状態です。そんな新米ママに、身の丈以上の“上級家庭科”を求めてきたのが、「聖母」「良妻賢母」を理想の母親像と掲げる、お受験の世界でした。

家庭科以降、ろくに家事をしていないという条件は男女同じはず。なのに、なぜかお受験界では「できて当然。ママだから」という価値観で、母親にばかり過酷な試練が待っていたのです。

子どもの身だしなみは完璧に 小物は手作りが基本

まず、子どもは頭の先から足の先まで完壁が求められます。女の子の場合、長い髪の毛は乱れもなくキッチリと編み込み。衣類はシミ・ホコリが一切ないパリッとしたアイロン仕上げ。手入れの行き届いた革靴に、運動靴さえも常に真っ白な状態をキープ。まさに“家庭科の総結集”といったところですが、お受験現場で会う優等生ママ=“聖母ママ”たちは、それを難なくこなしている。

子どもが持つバッグやお弁当袋、ハンカチやティッシュケースだって、紺地に刺繍や上品なワンポイント飾りが施された素敵な手作り小物ばかり。そんなハイレベルな家庭科力の“聖母ママ”がゴロゴロいる中で、次から次へと安易に手作りグッズや完璧を求めてくる幼稚園やお教室。標準レベル以下の家庭科力の私は、平静を装いながらも、ただただ必死でした。

娘が通っていたお受験系私立幼稚園では、バザーの時期になると、これでもかというくらい大量の手作りグッズの出品ノルマが科される。1ヵ月ぐらい前から家の中は“家内制手工業”状態。家族が寝静まった後、半ベソをかきながら慣れないお針子作業をする私が、家庭科の授業をサボッてきた学生時代を後悔したのはいうまでもありません。

素敵な手作りと思いきや実は市販品だった!?

そんなある日、いつも可愛い手作りグッズを子どもに持たせている“聖母ママ”の一人が、私の作った娘のティッシュケースを見てふと言ったのです。

「これ、どちらで買ったの? 私はいつも〇〇で買っているのよ」

そう、私が手作りだと思っていたあの素敵な小物の数々は、実はハンドメイドグッズのお店で買ったものだったです。聞いたお店に行ってみると、あるわあるわ、今まで憧れていたフリルやリボン、凝った刺繍が施された多種多様な手作りグッズが、ところ狭しと陳列されているではないか。しかも、自分好みにカスタマイズしたり、お店のカタログから気に入ったデザインの物を作ってもらうことも出来るらしい。実は私のような裁縫な苦手なママたちはいっぱい存在して、皆、こういった工夫をしていたのです。

これだけでも驚きだったのに、さらにより“手作り感”を出したいママは、個人でやっているハンドメイドのプロに“一点モノ”をオーダーするというのです。

ママは十字架を背負いつつ 手作りグッズはあっちこっちを巡回

オーダーなんて、まだまだ序の口でした。もっとツワモノになると、よその幼稚園のバサーをまわって手作り出品物を買い集めたり、前年に買った品を出したりするというテクを使っていたのです。

そう、何を隠そう“母の手作り重視”の私立幼稚園が多い地域のバザーでは、どこかの裁縫上手な人の作品が、A園→B園→C園→翌年A園などと、グルグル巡回していることもあるのです。それはリサイクルしながらお金だけを落としてくという究極のエコ・ドネイション。

そんなシュールな内情でも、誰も疑問を投げかけたり、異論を唱えたりしない。黙って右から左へ受け流す。そんな地域のママたちの結束は固いのです。だって、“手作り”の十字架が重いのはみんな同じだから。

お弁当の中身まで先生がチェック

毎日作らなければならない「お弁当」だって同じです。これは、料理の腕はもちろん、配置や詰め方で作り手のセンスまで分かってしまうという究極の家庭科プロダクツ。SNSで自信満々のママたちがこぞってアップする “映え弁当”に多大な圧を感じつつ、幼稚園やお教室の先生方に応えるためにお弁当を作らなければならない。当然、お弁当の中身だって指導されます。

「子どもが心身ともに健康で育つためには食育は大切です。なるべく冷凍食品や出来合いのものは避け、ママの手作りで」
これが基本。

確かにこれは超ド正論ですが、日々精いっぱいのこちらとしては、この要求は非情・無情以外の何ものでもない。ただでさえ、お受験に向けてやることがいっぱいあるんだから「お弁当ぐらい手を抜かせて」というのが本音です。常に完璧な“聖母”を求められたら身が持ちません。朝晩の2食で充分栄養が取れているはずだから、お弁当は「楽しく、美味しく」食べられればいいんじゃない?

工夫を凝らした“手作り風弁当”で乗りきる! 

そんな私の出した結論は「バレなきゃいっか」です。先生のかかげた高いハードルは超えず、迂回することにしました。子どもが一口で食べられるサイズで、お箸で掴みやすいブロック形、そして赤、緑、黄色が入っている彩りよいお弁当を時短で簡単に作ることを目標に、冷凍や真空パックになった加工食品やお店のお惣菜を使い“手作り風の弁当”を作ることにしたのです。

まず「赤」はプチトマトを、「緑」部分は保冷剤がわりにもなる冷凍ブロッコリー。「黄色」のポジションには卵焼きかお芋を入れる。ご飯部分は、お箸初心者の幼児でも簡単に食べられるように、一口サイズの俵形に丸め海苔を巻く。その間にメインとなるおかずの冷食や真空パックをレンチン。これが定番。

しかし、そのまま使うと目ざとい先生には手作りでないことがバレるので、上手く個体をバラしたり、上に茹でておいたホウレン草や溶けるチーズを乗せて覆い隠したりするという一手間が必要です。こんな感じで、ひたすら“手を抜く”ためだけにあの手この手を使い、みごと先生の厳しいチェックもすり抜けたのでした。

「まい泉」のカツサンドはママを救うトップ人気メニュー

そんな、秘かに暗躍する“手抜き弁当同盟”のママたちの間で人気ナンバーワンなのが、「とんかつ まい泉」のカツサンドです。これが冷凍保存できるため、いざという時の強力な助っ人として何とも頼もしい存在なのです。そのまま入れて自然解凍で食べられるのだから、堂々のトップを誇っているのも納得です。

そう、お弁当ぐらい手を抜いてもいいんです。手抜き弁当になれてくると、審美眼が養われ、実はSNS上にあふれる素敵なお弁当も、有名店のテイクアウト料理や冷食、レトルトなどをアレンジして詰めているだけのものも多いと気付きます。みんながみんな朝から手の込んだお弁当を作っているわけではないし、むしろそんな人はごく一部だからこそ、SNS上の立派なお弁当が称賛を浴びているのでしょう。

憧れ夢見た“聖母ママ”は懸命に頑張る普通のママだった

全部完璧にこなせる“聖母ママ”なんて本当はいないのではないでしょうか。
ただでさえ、お受験は通常の家事・育児以上にやらなければいけないことがたくさんあるのですから、手を抜けるところは手を抜かないと、到底ゴールまで走り続けられない。

実際、合格したママたちを見てみると、家庭科力が高い聖母ママというより、何でも要領良くこなすママの方が多いように感じます。自分に不向きで手間取りそうなことはサッサと切り捨て、精神的にも時間的に負担な無駄なことは避ける。そうして限られた時間を有効に使うことが合格への近道なのではないでしょうか。

水面下で必死にもがきながらも、公の場では髪を整え、淑女の仮面を被り、紺色で統一されたお受験スーツを着る。それは、不完全で未熟な自分を隠し、高潔で慈愛に満ちた理想の聖母に近づくため。つまり、私が見た“聖母ママ”は幻想で、実際は、たくましく、懸命に生きている普通のママだったのです。

〜華子流・多忙なお受験ママの手抜きスタイル〜

1 女児の場合は髪を結わなくて良く年配者ウケもいいオカッパが便利

2 お弁当は冷凍食品やプロが作ったお惣菜の真空パックを上手く活用し時間をかけない

3 手作り裁縫グッズは得意な人に頼る。購入するか外注で良い

4 自分に無理な要望は「そうしなければいけない」ではなく「そうみえれば良い」と捉える

【1回目】小学校合格の下準備「お教室面接」には高級果物と身上書!
【2回目】小学校合格を握る「生まれ月」と「紺スーツ」とは!?
【3回目】小学校お受験で身につく“子どもの品格”とは?
【4回目】小学校お受験の模擬試験:行動観察編
【5回目】小学校お受験の模擬試験:面接編

※この記事は、ライター華子の個人的体験及び感想に基づくものです。私見のため、一般的な見解とは異なる場合があります。また、一部については創作的表現が含まれております。

はなこ

華子

ライター

ライター。一般的なサラリーマン家庭で育ち、公立で小・中・高を過ごす。都内の大学卒業後、プチセレブな夫と出会い、結婚。女児の母。庶民との差に日々驚きつつも、平然なふりを装ってアセアセと暮らしている。 TOKYOお受験の裏側

ライター。一般的なサラリーマン家庭で育ち、公立で小・中・高を過ごす。都内の大学卒業後、プチセレブな夫と出会い、結婚。女児の母。庶民との差に日々驚きつつも、平然なふりを装ってアセアセと暮らしている。 TOKYOお受験の裏側