小学校お受験の模擬試験「面接」対策とは?

庶民嫁が見た! 受験本ではわからないTOKYOお受験の裏側⑤

ライター:華子

写真:maroke/イメージマート

中流家庭からプチセレブ一家へ嫁いだライター・華子。愛娘は自分と同じ普通コースで育てようと思っていたものの、義母の一言から、小学校受験への道が始まりました。
まったく未知だった東京のお受験は、庶民にはわからないことだらけ! 受験マニュアルには決して書かれていない(書けない)、お受験の赤裸々な裏話をお伝えします。

第5回は「小学校お受験の模擬試験:面接編」です。

超王道質問「好きな料理は?」の落とし穴

お受験の模擬試験科目の中で、家族3人そろってまいったのは「面接」でした。これは、受験生である子ども、父親、母親、と3者がそれぞれ完璧に役割を担い、一つのチームとして家族が一丸となって挑まなければ合格点は取れない。子どもだけではなく、自分、さらには夫まで仕上げなければならないのです。

「私立小学校の受験は子どもと親の両輪でがんばるもの」とはよく聞くセリフですが、まさにその通り。本当に3者がきちんと同じ方向を見て足並みを揃えて稼働していかないと、前に進まないのです。

例えばこんな質問がありました。

――お母さんの作るお料理で一番好きなものは何ですか?

きたきた! まさにド定番の質問です。一見、簡単に答えられそうですが、私立小学校を目指すママたちはこの質問のために1年365日毎日3食手を抜かず、何年もがんばってきているのです。もちろん私も事前にバッチリ答えられるように対策をしていました。

特に模擬の数日前からは「竹の子のお吸い物」や「菜の花のおひたし」など「季節を感じさせつつもヘルシーな和食」を中心に作り、娘にも「美味しいねぇ、この“竹の子のお吸い物”」などと、献立が記憶に残るよう、料理名を強調して言ったりもしていました。ですから、当然この質問を受けたときは、余裕の微笑みを浮かべ、「さあ、どれでも大丈夫よ! 自信を持って大きな声で答えて!」とあたたかく娘の背中を見つめていました。娘もそんな私の心の声に応えるかのように、自信たっぷりに大きな声で「ハイッ」と元気よくお返事。

「サイゼリアのパルマ風スパゲッティです」

エッ!?
いま、なんて?

……もうツッコミどころがありすぎて、どこから触れていいのかすらわかりません。
まず「お母さんの作るお料理」ではない。そしてなぜかファミレス。しかもわりと簡単なメニュー。
私がこれまで何年間も毎日毎日がんばって作ってきたお料理はなんだったんだろう……。あの季節感を意識したメニューは?
でもそれはお受験対策ばかりにとらわれた親の私が、子どもの気持ちを考えなかったゆえに起きた落とし穴だったのです。

まず、子どもはカレーライス、ハンバーグ、パスタなど、わかりやすい料理が好き。和食より洋食の方が濃くて記憶に残る味だし、毎日食べるものではないので特別感がある。そして何より、緊張する場でもパッと思いつくネーミング。
さすが、ファミリーが愛する国民的レストランです。お受験キッズの心もしっかりつかんでいます。

少なくとも、私の娘は一瞬にして虜になったようでした。私の作る季節感を意識した淡白な料理が続いていた模擬面接の数日前、夫と一緒にお散歩に行き、偶然ふらりと寄ったファミレスのスパゲティ。よっぽどおいしかったのか、このうえなく感動したらしく、思わず夫にレストラン名とメニュー名を何度もたずねたそうです。受験勉強で「お話の記憶」が一番得意になった娘は、ここでもしっかりと聞いたことを頭に記憶したのでした。

もちろん、自分の料理の腕を棚に上げ、あとで夫を叱った(八つ当たり)したことは、言うまでもありません。……でも、今思えば、夫も味に飽きていたのかもしれませんね。だって私も好きだもん、サイゼリアのピザ。世間で推奨されてきた「愛情たっぷりの母親の手料理」が、「ファミリーのためのレストランの家族ウケする料理」にあっけなく敗北した瞬間でした。トホホ…

子どもは親が望む答えは言わない

また、こんな質問もありました。

――長いお休みの間、何をしましたか?

もちろん、この質問も想定内なので、子どもの記憶に留まるよう、長いお休みの最後になると家族で山登りをしていました。夜明け前の早朝からせっせとお弁当を作り、全員分の荷物を用意して日の出とともに出発! 午前中に頂上にたどり着き、家族仲良くお弁当を食べて、午後は下山。山自体は幼児でも登れるレベルのものでしたが、それ以前の準備が大変だった私は、下山後にはもう口もきけないほどクタクタに……。

そこまでがんばったのも、全てはこの質問のため。さあ、山でのお話をたっぷりと聞かせてあげて〜!

しかし、娘が答えたのはその山登りのストーリーではなく、下山後のことでした。

「お母さんが『今日は疲れたからご飯を作りたくない』と言ったので、大きなスーパーマーケットでお弁当を買って、みんなでレンジでチンして食べました」

ソコーッ!?
それ言う!? いま言う!? この場所で!?

そう、疲れきってヨロヨロした足取りでようやく山の麓まで降りてきたときのこと。当然、帰っても夕食を作る気力などありません。そんなとき、前方に都心では滅多ないスケールの巨大スーパーマーケットが。まさに救世主! 娘はその広さと品数の多さに大興奮。まるでディズニーランドに来たかのようにはしゃいでいました。

思えば、家に帰ってからレンチンをしたのも初めてだったし、温めたおかずをお皿に盛り付けたりするのもママゴトをしているようで楽しかったのかもしれない。全てが新鮮で、山登りがかすんでしまったのかもしれません。それにしても、それにしてもですよ、あんなにがんばって登った山の話を一切触れず、そこ言いますか? しかも、そのときの会話までしっかり覚えていて、具体的に完璧に、質問の返答としては「満点」な答え方で返してくるとは……完全にお手上げです。

そう、ここまででおわかりのとおり、大人が考える“特別な出来事”と、子どもが感じる“特別”はまったく違うのです。

娘の場合は、和食という淡白な味が日常だったからこそ、洋食が輝かしく感じたし、お行儀を気にしなくてもいいファミレスがとても居心地の良い“スペシャル”だった。

登山後に寄ったスーパーも、広々とした空間で、子どもにとってはお城のように見えたと思います。あらゆる品揃えの中で「好きなものを買っていいよ」と自分で選んだお弁当も、まるで宝の山から一番気に入ったものをプレゼントしてもらえるような、がんばって登った山の“スペシャルなご褒美”のように感じたのかもしれません。

前述した「子どもと親の両輪」はこういった面からも言えることです。
子どもの返答は、親がしたことの結果。決して子どもの責任ではありません。やるなら徹底的に、隙なく行うべきなのでしょう。いや、もしかすると、私のようにがんばって季節のお料理を作ったり山登りをしたりするのではなく、ごくナチュラルにそれが存在するような家庭だとこんな辱めを受けることはないのもしれません。でも、もはやそんなことは言っていられません。

なので、これ以降は無理やり背伸びをするのはやめて、逆に「特別感」の方を薄めるべく、いろんなジャンルの食べ物を与え、イベントも自然体験にこだわることなく、さまざまな経験をさせていくことにしたのです。

何事も「ほどほどが一番」と良い教訓になった出来事でした。
お受験では多くの親が「特別な子にしなければ!」と力みがちになると思います。でも、自分や家族にないものを無理強いしてもやはりボロが出ます。

それよりも各子ども・家族が持っている良い点や得意な面を最大限にのばす、これがお受験をしながらも幸せでいるための秘訣なのかもしれません。

〜華子が考えるお受験の模擬試験対策法〜

①    結果に一喜一憂するのではなく、子どもが犯しがちな失敗を知るために受けること

②    開催者が同じ模試ではなく、いろんなところの模試を受け、幅広く客観的なデータを収集する

③    通っているお教室の模試は、先生・子どもともに知っているため本番より好条件になることを理解した上で活用する。アウェイの状況にも慣らした方がよい

④    子どもの結果は親がしてきたことの結果ととらえ、子どものマイナス点を正すのではなく、大人が工夫して欠点を美点にすり替えるように導いていく

⑤    模試は模試。本番は長年の蓄積で結果が出るので、あくまでも参考程度にしかならないと心得ること

【1回目】小学校合格の下準備「お教室面接」には高級果物と身上書!
【2回目】小学校合格を握る「生まれ月」と「紺スーツ」とは!?
【3回目】小学校お受験で身につく“子どもの品格”とは?
【4回目】小学校お受験の模擬試験:行動観察編

※この記事は、ライター華子の個人的体験及び感想に基づくものです。私見のため、一般的な見解とは異なる場合があります。また、一部については創作的表現が含まれております。

はなこ

華子

ライター

ライター。一般的なサラリーマン家庭で育ち、公立で小・中・高を過ごす。都内の大学卒業後、プチセレブな夫と出会い、結婚。女児の母。庶民との差に日々驚きつつも、平然なふりを装ってアセアセと暮らしている。 TOKYOお受験の裏側

ライター。一般的なサラリーマン家庭で育ち、公立で小・中・高を過ごす。都内の大学卒業後、プチセレブな夫と出会い、結婚。女児の母。庶民との差に日々驚きつつも、平然なふりを装ってアセアセと暮らしている。 TOKYOお受験の裏側