子どもの「やる気と探究心」を出す 親や教育関係者のサポート力がアップする「ナビゲーション」の仕組み

【今こそ学力観のアップデートをするとき】子どもの好奇心が爆発する親の接し方#2 ナビゲータとナビゲーション

ラーンネットでもナビゲータは常に子どもをよく観察しています。  写真提供:ラーンネット・グローバルスクール

ナビゲーションに正解はない

③ ナビゲートする

①知る・感じる、②ゴールイメージをもつ、この2つのあとに③の「ナビゲートする」に移ります。実際にどのように子どもと接すればいいのか気になるところですが、実はここに「正解」はありません。

「子どもは一人ひとり異なる存在ですので、『このやり方さえ実践すればOK!』といった決まった方法はありません。その子に合った声かけや関わり方を探りながら、トライアンドエラーを繰り返していくことしかないんです。ですが、次のような『これまで私たちが実践してきた接し方』をヒントにしてもらうことはできます」(炭谷氏)

【第3の教育的な子どもへの関わり方】
・自分でゴールイメージを設定してもらう
・良い見本を見せる
・一緒に取り組む
・興味を持つための場や人との出会いなどを用意する
・質問する
・フィードバックする(認める、ほめる)

「もちろんこれがすべてではありません。目の前の子どもがどんなタイプか、ゴールイメージがどこにあるのかによっても、接し方・関わり方は変わってきます。簡単ではないですが、いろいろ試していく中で、だんだんと見えてくることがあります」(炭谷氏)

「子どもを知る」ことが一番大切

ナビゲーションで最も重要なのは①の「知る・感じる」ですが、多くの人が「③ナビゲート」から始めようとしてしまうといいます。

「①知る・感じる、②ゴールイメージをもつ、この2つを経ることなく③のナビゲートをしてしまうと、どうしても強制や命令だったり、報酬(ご褒美)や罰だったり、第1の教育的な関わり方になってしまうんです。そうすると、子どもが自ら取り組む意欲や主体性をつぶしてしまうことになりかねません」(炭谷氏)

たとえば、宿題をしないでテレビを見ているという子どもだったら、『いいかげんテレビはやめて宿題しなさい』と命令したり、『宿題しないなら夕食抜き』など罰をちらつかせたりしてしまいます。これが、③のナビゲートから入ってしまっている状態です。

まずはなぜ子どもが宿題をしないのか、後回しにしてしまうのかをよく観察(①知る・感じる)します。その後、言われなくても宿題をするためにどうしたらいいかを子どもと話し合い(②ゴールイメージを持つ)、その上で子どもが自分でいつやるかを決めてもらう(③ナビゲートする)。こうした手順なら、子どもは自ら宿題をするタイミングを決めることができますし、自分の考えを尊重してもらったと感じます。

「もちろん、1回のナビゲートですべてがうまくいくわけではないでしょうが、まずは子どもを信じて任せること。そして、うまく進まない部分が出てきたらまた他の方法でナビゲートしてみる。これを繰り返していくことです」(炭谷氏)

これまでたくさんの親子関係を見てきた炭谷さんは、多くの親に①の「知る・感じる」の部分が圧倒的に不足していると話します。

「子どもが話し出すと、それを遮って3~4倍も話し続ける親御さんもいますよね。それでは子どもは話したくなくなってしまいます。まずは子どもの話にじっくり耳を傾け、評価せずに受け止めてあげてください。

子どもは大人の態度に非常に敏感ですから、これまでより話を聞いてくれるようになったと感じれば、それだけで変化していくことも多々あります。難しく考えすぎず、子どもの話に耳を傾け、じっくり向き合ってみてください」(炭谷氏)

第3回は、実際にナビゲーションの3つのステップを体験し、その重要性や意義を体感するワークショップの様子を紹介します。

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【炭谷俊樹 プロフィール】
ラーンネット・グローバルスクール代表。神戸情報大学院大学学長。1960年神戸市生まれ。マッキンゼーにて10年間日本及び北欧企業のコンサルティングに携わる。新人コンサルタント採用・研修の責任者も担当。デンマークの社会や教育に感銘したことがきっかけとなり、1996年に神戸で子どもの個性を活かす「ラーンネット・グローバルスクール」を開校。1997年、大前研一氏とともに企業のビジネスリーダー育成事業を創業、2005年よりビジネス・ブレークスルー大学大学院経営学研究科教授(2010年より客員教授)。2010年に神戸情報大学院大学学長に就任。3歳の幼児から企業のエグゼクティブまで幅広い年齢対象で、探究型の教育を実践している。東京大学大学院理学系研究科修士(物理学専攻)。著書に『第3の教育』(角川書店)『ゼロからはじめる社会起業』(日本能率協会マネジメントセンター)などがある。学びを探究するメディア『Q』責任編集。

取材・文 川崎ちづる

【子どもの好奇心が爆発する親の接し方】の連載は、全4回。

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※公開日までリンク無効

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かわさき ちづる

川崎 ちづる

Chizuru Kawasaki
ライター

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。