子どもの探究心や学習意欲を引き出す「ナビゲーション」 親の人生観も変えるスゴい効果とは

【今こそ学力観のアップデートをするとき】子どもの好奇心が爆発する親の接し方#4 大人も子どもも変えるナビゲーション

探究ナビ講座の様子。  写真提供:ラーンネット・グローバルスクール
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「子どもではなく、自分が変わらなければ」

子どもの意欲や探究心を引き出す接し方を学ぶ「探究ナビ講座(基礎編)」を受講した人は、こう実感し、子どもへの態度や接し方が変わっていきます。

その中には、自分自身の人生を見つめ直して転職したり、新しいことにチャレンジする人も少なくありません。

子どもだけでなく、大人をも変える「ナビゲーション」。第4回は、ナビゲーションを学んだ講座受講者に起こった具体的な変化、ナビゲーションを受けて育った子どもの進路などについてうかがいました。

※全4回の第4回

【炭谷俊樹 プロフィール】
ラーンネット・グローバルスクール代表。神戸情報大学院大学学長。マッキンゼーにて10年間日本及び北欧企業のコンサルティングに携わる。デンマークの社会や教育に感銘したことがきっかけとなり、1996年に神戸で子どもの個性を活かす「ラーンネット・グローバルスクール」を開校。3歳の幼児から企業のエグゼクティブまで幅広い年齢対象で、探究型の教育を実践している。

◆探究ナビ講座(基礎編)とは
ラーンネット・グローバルスクールが主催する、子どもの探究心や学習意欲をより高めて行く接し方や方法論について学ぶプログラム。全4日間の日程で、座学(オンライン開催)に加え、参加型のワークショップ(リアル開催)などを交えて、体系的・体験的に学びを深める。現場で探究プログラムを行う人向けの教育実践編もある。
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【子どもの好奇心が爆発する親の接し方:第1回 第2回 第3回を読む】

大人の変化で子どもも変わった!

──以前より子どもをしっかり観察し、じっくり話を聞くように心がけたことで、子どもの学びへの意欲が上がった
──自分の心持ちが変わり、子どもの反応も変わった

これは、第3回(#3を読む)で紹介した探究ナビ講座の受講者が、ロールプレイングやディスカッションを経験した1週間後の後日談です。

探究ナビ講座では、リアルでワークショップを行った次の週に、オンラインでの振り返りを行います。その中で、受講者がそれぞれ、講座の内容を日常生活で意識して過ごしてみた感想をシェアします。

ライターが取材した講座では、子どもを持つ親や教育関係者など8名が参加していました。みなさん「ナビゲーション」をすぐに使いこなせるようになるわけではありませんが、第1ステップの「知る・感じる」の大切さを実感したことで、わずか1週間で子どもに対する意識が変わり、人によっては関係性の変化まで感じていました。

教育関係者のAさんは、算数の学習にあまり積極的ではなかった子をよく観察したことで、「算数が嫌いなのではなく、学習方法が合わないのかもしれない」と思うようになったそう。そして、別の学習方法を提示してみたところ、自分からプリントの問題に取り組むようになったといいます。

自分の子どもへの接し方が気になり講座に参加したBさんは、「これまで子どものやりたいことを一緒に探していたつもりだったけれど、ついつい自分が誘導していた」ことに気づきました。ワークショップ後は誘導しそうになったら「知る・感じる」に戻るようになり、子ども自身とより深く向き合えるようになったと感じています。

講座を経験すると、子どもへの考え方や接し方が変わっていきます。  写真提供:ラーンネット・グローバルスクール

炭谷さんは、これまで22年間講座を開催する中で、受講者の子どもへの態度、接し方が変わっていく様子を繰り返し見てきました。

「探究ナビ講座が、ひとつの『きっかけ』になるんだと思うんです。もちろん、すぐにすべては変わりません。人への接し方は癖になっている部分もあるので、変えたほうがいいと思って意識していても、時には慣れ親しんだやり方に戻ってしまうこともあります。

でも、実感を伴って気づいたことで、少しずつでも確実に変化していきます。これまで無意識にやってしまっていた否定や強制が減り、子どものやりたいことや好きなことを認め、理解しようという気持ちで接していくと、そこにいる子どもが変わります。イキイキしてくるんです」(炭谷氏)

さらに、講座を開始したころは思いもしなかった効果も出始めました。

大人の人生観も変える「ナビゲーション」

講座に参加したあと、「観察や対話のベクトルが自分自身に向かっていく人も多い」と炭谷さんは話します。

「子どもの好きなこと、やりたいことを知ってありのままを認めよう、と接していくうちに、『自分自身はどうなんだろう』と考えるんでしょうね。また、講座では、対話のワークを通して自分の話を否定せずに聞いてもらう経験もします。そうしたことがきっかけで、ずっと無自覚だったご自身のやってみたいことに気づき、結果的に転職をされる方も結構多くいらっしゃいます。

講座でのディスカッションの様子。  写真:川崎ちづる

日本では、子どもだけでなく、大人も自分の好きなこと、やりたいことを抑え込んで我慢して生きている方がたくさんいますよね。だから、『そうじゃない生き方がある』と知ったときに、自分は本当にやりたいことをやってるのかな、本音で生きてるのかな、と考え始めて、新しいことにチャレンジしていくんだと思います」(炭谷氏)

これまでの受講者は、教育分野に転職された方、新たに自分で学校を創った方など、さまざまな場所で活躍しています。22年前に初めて探究ナビ講座を開催したときの受講者は、当時、金融機関に勤めていましたが、受講して数年後に転職して学校の先生になり、さらには現在、校長先生になっているといいます。

「ナビゲーション」は、大人にも大きな影響を与え、人生を変える力を秘めているのです。

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