名古屋発・小学1年生が劇的に変わった 「プロジェクト型学習」徹底取材

【小学校教育2.0】名古屋市立矢田小学校の挑戦#2「1年生のプロジェクト型学習」

こうしたポイントを押さえた授業展開により、予想よりもスムーズに学習が進んでいきました。

「始める前は、もっと個別のフォローが必要かと考えていましたが、実際にはクラスの2/3くらいの子たちは、私が手や口を出すことはほとんどなく、自分でお店の計画を立てて、友だちと相談しながらおもちゃやゲームを完成させていました。

おもちゃやゲーム作りに熱中する子どもたち。  写真提供 矢田小学校
工夫しながらゲームを作っています。  写真提供 矢田小学校

残りの1/3の子たちについても、困っているときに一緒に考えたり少しヒントを出したりすれば、その後は自分で進めていくことができました。

適切な情報と支援さえあれば、1年生でも自分で考え、見通しを持って学習を進めていくことはできるんだと実感しました」(中谷先生)

「自分で決める」から楽しい 楽しいから積極的に学ぶ

11月に幼稚園児を招いて行ったあきまつりは、大盛況でした。

あきまつりが始まりました。  写真提供 矢田小学校

「子どもたちが作ったお店は、どれもオリジナリティにあふれ、たくさんの工夫が凝らされていました。

どんぐりでマラカスのような楽器を作って売っているお店、どんぐりを投げて的に当てるゲーム『どんぐり投げ』のお店、どんぐり将棋で遊べる『将棋屋さん』など、こちらが想像もしないものも多く、とても驚きましたね。

どんぐり将棋を楽しむ幼稚園の子どもたち。  写真提供 矢田小学校
どんぐり射的のお店。ルールもしっかり書かれています。  写真提供 矢田小学校
オリジナルのボードゲームを楽しめるお店もありました。  写真提供 矢田小学校

『自分で考えて決められる』ことが、こんなにも子どもを積極的にし、学習へ駆り立てるのだなと改めて感じました。

新しいアイデアが次々生まれてきましたし、お店を考えたり、実際におもちゃを作ったりしているときの子どもたちの目は、キラキラと輝いて楽しさに満ちていました」(中谷先生)

このように、子どもたちは本来アイデアの宝庫ではありますが、それを引き出すためには「イメージを持てるようにする」ことも大切だと中谷先生は話します。

「子どもたちのアイデアのヒントになるように、お店作りの授業に入る前には、『東山の森』の職員の方を招いてどんぐりを使った遊びを教えてもらいました。

『どんぐりってあんな感じで遊べるのか』とイメージできれば、アイデア出しはもちろん、計画する段階でもスムーズに学習を進めることができます。

ちょうど学校全体で行った『矢田シティ』※というキャリア学習に関連する授業もあり、こちらで上級生たちが企画したお店にも、子どもたちはとても刺激を受け、アイデアを形にするための気づきをたくさん得たようでした。

キャリア教育として実施しているイベント「矢田シティ」。上級生と一緒にお店を企画・体験しました。  写真提供 矢田小学校

教員が細かく指導するよりも、子どもたちにどれだけヒントとなる要素を提供できるかが大切だと感じています」(中谷先生)

※『矢田シティ』とは
キャリア教育の一環で実施している授業で、全校児童が参加した。
1・6年、2・5年、3・4年のペアでお店を企画し、稼いだお金を使ってお店で遊ぶこと、自分たちが企画したお店以外で働いて収入を得ることができる仕組みとなっている。働いてお金を稼いで、使って、また違うお店で働く、といった実際の社会に近い仕組みのなかで、生産者と消費者両方の立場を体験することができる。

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