名古屋発・小学1年生が劇的に変わった 「プロジェクト型学習」徹底取材

【小学校教育2.0】名古屋市立矢田小学校の挑戦#2「1年生のプロジェクト型学習」

学びの目標も自分で考える

矢田小学校では、学習で身につけたことをしっかりと意識できるよう、めあての設定やその振り返りも子ども自身で行っています。

「子どもたちは毎時間、授業の最初に『めあて』を選んでいます。1年生は、自分で考えてめあてを書くのはまだ難しいと考え、選択肢を用意しています。

上部の囲みのなかのア〜ウより、子どもたちは自分でめあてを選んで記入します。  写真提供 矢田小学校

一般的には、教員が用意しためあてを書き写していることが多いと思いますが、自分で考えて選択することで、何のために学習しているのか、自分はどんなことができるようになりたいのか(なったのか)を、しっかり意識してほしいと思っています」(中谷先生)

また、2年生同様(#1を読む)、単元の最初と最後には、「わくわくを身につける力」についても考えました。

「わくわくの力はっけん!」の部分も、自分でがんばりたいことを考え、振り返りまで記入します。  写真提供 矢田小学校

「『わくわくを計画する力っていうのは、楽しいゲームやおもちゃを作るために、自分でやることを考えられたってことだよ』といった具合に、丁寧に嚙み砕いて説明することで、1年生でも理解できるように工夫しています。

こうした地道な積み重ねからも、子どもたちの自信やさらなる学習への意欲につなげていきたいと考えています」(中谷先生)

ここにも、「言われたとおりやる」のではなく、子どもたちが自分で考え、決めることを重視している矢田小学校の姿勢が表れています。

普通の教科でもできる主体性を育む学び

1~2年生からプロジェクト型学習の要素を取り入れることにより、子どもたちが自ら学んでいく力を引き出す矢田小学校。

2年生の担任を務める中川大輔先生は、矢田小学校の低学年での特徴をこう語ります。

「何か特別な行事や授業を企画するのではなく、どこの学校でも実施している『普通の教科学習』のなかで、子どもたちが自分で選択できる機会を設け、その範囲もできる限り広げていく。

低学年からこうしたプロジェクト型学習を積み重ねることにより、6年間を通して自ら考える力や学びを掘り下げていく力を育んでいるのが、矢田小学校の取り組みです。

どんぐりでゲームを作る1年生。  写真提供 矢田小学校
まちたんけんで真剣にメモを取る2年生。  写真提供 矢田小学校

ただ、生活科の授業で子どもたちが想像以上に自主性を発揮し、創意工夫を図ることができたのは、他の授業での実践も影響していると思いますね。

矢田小学校では、2021年度から低学年でも徐々に自由進度学習を取り入れ始めていて、それぞれが相乗効果となり、子どもたちの今の姿につながっていると感じます」(中川先生)

矢田小学校では、プロジェクト型学習の要素を取り入れた学びだけでなく、「自由進度学習」も合わせて実践し、総合的に子どもたちの自主性・主体性を育んでいたのです。

第3回は、高学年から低学年に広がった自由進度学習の具体的な取り組みについてうかがいます。

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名古屋市立矢田小学校
名古屋市東区に位置する公立小学校。児童数は451名、18クラス(2022年5月1日現在)。名古屋市の2つの事業、ナゴヤ・スクール・イノベーション事業(2019年度〜)、子どもライフキャリアサポートモデル事業(2018〜2021年度)のモデル校として活動。
ナゴヤ・スクール・イノベーション事業では、子どもが自ら問いを立て、見通しをもって課題に立ち向かっていく力の育成を目指し、「プロジェクト型学習(PBL)」及び「プロジェクト型の要素を取り入れた教科学習」を実践している。

取材・文 川崎ちづる

『【小学校教育2.0】名古屋市立矢田小学校の挑戦』の連載は、全3回。
第1回を読む。
第3回を読む。
※第3回は公開日までリンク無効

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かわさき ちづる

川崎 ちづる

Chizuru Kawasaki
ライター

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。